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  • 2019/09/18

知らなきゃ損? 増税対策「ポイント還元」はトクできる仕組みなのか

消費増税に対応したポイント還元策の全体像が見えてきた。当初は準備期間の短さから増税のタイミングに間に合わないとの懸念もあったが、何とかスタートできそうな状況となった。ただ、ポイント還元の対象となる中小店舗のうち参加したのは約3割にとどまっており、景気対策としては不十分な結果となるかもしれない。

経済評論家 加谷珪一

経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『"投資"に踏み出せない人のための「不労所得」入門』(イースト・プレス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方』(ビジネス社)、『お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか』(朝日新聞出版)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)などがある。

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ポイント還元策とはどのような仕組みなのか。制度を正しく理解して、賢く利用したい
(Photo/Getty Images)

一石三鳥を狙った「ポイント還元」の仕組みとは?

 このところ個人消費の低迷が続いており、前回と同様、消費増税をきっかけにさらに消費が落ち込むのではないかと懸念する声は多い。

 増税で得た税収は、政府支出という形で国民の所得になるので、理屈の上では、増税によってGDP(国内総生産)が大きく落ち込むことはない。だが、消費者にとっては、自身が支払う金額が目に見えて増えるので支出を抑制する可能性があり、消費が弱い時に増税を行うと、景気が一気に冷え込むことがある。

 実際、前回の消費増税は個人消費を低迷させ、結果的に経済成長にマイナスの影響を与えたが、これは日本経済がいかに弱体化しているのかということの裏返しでもある。

 つまり消費税によって景気が冷え込むことを懸念する声が出ていること自体が、今の日本経済が力強く成長しているわけではないことを象徴している。

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いよいよ10月から増税だ
(Photo/Getty Images)

 今回の増税においても景気対策から財政出動の実施が計画されているが、具体的な手法については、従来とはまったく異なる形になった。政府が考え出した手法は、中小企業の店舗においてキャッシュレス決済を行った場合に限り、ポイント付与という形で消費者に還元するというものである。

 具体的にはクレジットカード、電子マネー(Suica、楽天Edyなど)、QRコード決済(PayPay、LINE Payなど)といったキャッシュレス決済を使って、小規模事業者の店で買い物をすると5%分がポイントとして還元される(コンビニなど大手チェーンに加盟している中小零細店舗の場合には5%ではなく2%となる)。

 政府はこれまでキャッシュレス決済の普及に力を入れてきたが、あまり成果が出ているとはいえず、予算不足から中小企業対策も十分に行われているとは言いにくい状況だった。

 もし消費者がポイント還元を受けたいと考えた場合、キャッシュレス決済をしていなかった人もキャッシュレスに移行し、しかも大手ではなく中小のお店で購入することになる。景気対策に加え、キャッシュレスへの移行と中小事業者支援を同時に行うという、一石二鳥ならぬ、一石三鳥を狙った施策といって良い。


9月中に対象店舗を示したサイトが公開される予定

 単純に公共事業を増やしたり、補助金をばらまいたりする従来のやり方と比べれば、知恵を絞った施策といえなくもない。ただ、仕組みが複雑になるのはほぼ確実であり、実施までの期間が短いこともあって、予定通りにシステムが実装できるのか不安視する声も多かった。

 2019年9月5日時点において、ポイント還元策への参加申請を行った中小事業者の数は約58万となっている。全国には今回の施策の対象となる店舗が200万店あるので、全体の約3割が申請した計算だ。

 ポイント還元の対象となる決済事業者の数は8月30日時点で887社となっており、たいていの決済サービスはポイント還元の対象に含まれている。

 実際にスタートした後にトラブルが発生するリスクもあるが、準備期間の短さを考えると、まずまずの状況といって良いだろう。しかしながら、消費者にとってどれほどのメリットがあるのか、景気対策として効果があるのか、という点については微妙な状況といって良い。

 まず消費者の利便性についてだが、現時点ではポイント還元の対象となる店舗がどこにあるのかが分かりにくいという問題がある。経産省は、登録申請した店舗を一覧できるPDFをネット上で公開したが、何と6300ページもあり、閲覧するだけでも一苦労だ。しかもPDFのリストに記載されている情報は、都道府県と市区町村名、店名、業種しかない。

 たとえば東京都の場合、世田谷区だけでも2000店以上の店があるが、最寄り駅や詳細な住所が分からないので、店名からしか自分の近くにある店を探せない。たとえば、「ヘア」や「Hair」から始まる店だけでも無数にあるので、目当ての美容院を探し出すのは容易ではないだろう。

 一部のITベンチャー企業は、PDFファイルの情報を解析した上でデータベースを構築し、Webサイト上で検索できるサービスを提供しているが、もともとの情報が少ないので、検索には限度がある。PDFには市区町村名だけでなく、町名もあった方が、圧倒的に調べやすかっただろう。

 政府は9月中には地図上で店舗を表示するWebサイトをオープンするとしているが、10月に増税は始まるので、できるだけ早くサービスを開始することが望まれる。

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