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  • 2019/12/03 掲載

YouTubeで話題「ASMR」とは? 大企業も参入する“魅力”に迫る

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若者を中心に、主にスマホで視聴し投稿している「動画」の世界は、今後も市場規模が右肩上がりで伸びていくと予測される。中でも注目トレンドは、さまざまな音を聞いて気持ちよさを感じる「ASMR(エーエスエムアール)」だ。人気の「カリスマASMRIST(アスマーリスト)」も出現している。日本では、音フェチ・快感系のコンテンツが主流で、大企業も参入しはじめた。今後はサウンドにビジュアルを追加して、「音で気持ちよくなる」から「音と視覚で気持ちよくなる」へ向かう流れとなるか?

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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ハマる人続出、人気動画ジャンル「ASMR」って何だ? 博報堂や湖池屋も参入するASMR市場の動向を解説
(Photo/Getty Images)

動画はスマホで楽しむ「パーソナルな娯楽」

 ICTテクノロジーの発達により、今やすっかり身近な存在になったエンタテイメント「動画」。スマホがあればいつでも、どこでも好きなコンテンツを視聴できる。誰でも映像作家になってYouTubeのような動画サイトに投稿でき、再生回数を稼げば広告収入が得られる。

 サイバーエージェント・オンラインビデオ総研とデジタルインファクトが調査し2018年11月に発表した「国内動画広告の市場動向調査」によると、2018年のYouTubeなど国内動画広告市場は1,843億円と推計され、前年比で34.1%増加した。今後も、市場規模は右肩上がりの成長を続け、2024年には2018年比で2.69倍の4,957億円に達すると予測されている。

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国内動画広告の市場規模の推計・予測
(出典:サイバーエージェント・オンラインビデオ総研、デジタルインファクト「国内動画広告の市場動向調査」(2018年11月発表))

 動画最大のプロバイダー「YouTube」の主要視聴ユーザーは若者で、彼らはコンテンツの8~9割をスマホで視聴しているというデータがある。

 ニールセンが「デジタルコンテンツ視聴率」の2019年1月のデータをもとに、同年3月に発表したレポートによると、YouTubeの利用率は18-20歳が88%で最も高く、20代は85%、30代は80%、40代は75%と、年齢層が高くなるにつれて下がる。50歳以上のシニア層は37%しかいない。

 YouTube動画は、パソコンやタブレット端末、スマホでも、特定の機器をつなげばテレビでも視聴できるが、現在最も使われる視聴デバイスはスマホだ。YouTubeを「スマホのみで視聴する」回答は、年齢が若いほど高く、18-20歳は87%、20代は81%である。

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YouTubeの年齢層別の利用率
(出典:ニールセン ソースは「ニールセン デジタルコンテンツ視聴率」(2019年1月))

 若者にとってYouTube動画は、大きな画面で視聴するより、数インチのスマホ画面で楽しむもの。時間が空いたら自分だけ見て楽しむ、パーソナルな娯楽になっている。それを「食」にたとえれば、自宅や外食店での3度の食事ではなく、小腹がすいたらスナック菓子をちょっとつまむような感覚だ。



人気動画ジャンル「ASMR」とは?

 ちょっとつまんで楽しむものだから、若者の間での、YouTubeコンテンツの流行りすたりのサイクルは短い。だが、いま再生回数を大きく伸ばしているジャンルが「ASMR(エーエスエムアール)」である。YouTube上では再生回数100万回オーバーのコンテンツがいくつかある。

 ASMRは英語の「Autonomous Sensory Meridian Response」の略で、2010年2月にニューヨーク州在住のジェニファー・アレン(Jennifer Allen)という女性が名付けた。日本語では「自律感覚絶頂反応」と訳されている。「絶頂」と言っても「ちょっと気持ちよくなる」程度。聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地良くなる、脳がゾワゾワするといった反応・感覚のことをいう。

 では、どんなものを聞いたら気持ちよくなれるのだろうか?

 「氷をゴリゴリかむ音」「ポテトチップスをポリポリ食べる咀嚼音」「耳の中を耳かきや綿棒でこするコソコソ音」「炭酸水をコップに入れるシュワシュワ音」「食材を包丁で切るコトコト音」「電卓やパソコンのキーボートをたたくカタカタ音」「ポリ袋を丸めるガサガサ音」「肉を焼くジュワジュワ音」「たき火が燃えるパチパチ音」「クルマや電車や飛行機の通過音」「衣ずれの音」などなど。


 これらはYouTube上のASMR人気動画のほんの一例だ。雨、波、滝の音や小鳥のさえずりのような誰もが好感を持つ「ヒーリング音」ではなく、日常生活で聞かれる音ばかり。


 人によっては「何が気持ちいいのか?」「自分には不快だ」という感想も聞かれそうだが、コメント欄に「リラックスしてイヤなことを忘れられる」「エンドレスで聞くとゆっくり眠れる」「勉強、作業がはかどる」などと書き込む人が結構存在する。

 それはまさに、好きなものが十人十色で全く異なるパーソナルな娯楽だ。スマホにイヤホンやヘッドホンをつないだら、数分間でも自分だけの世界で気持ちよく楽しめる。これは、レポートの結果で示された若者のYouTube動画の楽しみ方にピタリと一致する。ASMRは、現代日本の若者の嗜好に合ったコンテンツと言えそうだ。

 YouTubeで「HIKAKIN」「はじめしゃちょー」のようなカリスマ・ユーチューバーが出現したように、ASMR動画でも道具を駆使してさまざまな「音」を量産する「はとむぎ」や、「萌え声」を出す“ASMRの女王”こと「まこと。」のようなカリスマ投稿者が出現。彼らのことを「ASMRIST(アスマーリスト)」と呼んでいる。

【次ページ】“一過性の人気”と侮れない、大企業も参入するASMR市場。各社の動向は?

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