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  • 2021/01/08

乳業メーカー世界ランキング:なぜバター不足に? 世界1位はネスレ、日本トップは?

牛乳や乳製品を生産する乳業は、食品産業の主なジャンルの一つである。世界中に広まったグローバルな産業だが、世界各地の食生活や農業政策と密接に関わっているため、ドメスティックな性格も強い。とはいえ、経済のグローバル化に伴う規制緩和や資本の自由化によって、世界各国の大手乳業メーカーはM&Aなどによって巨大化、国境を越えた市場争奪戦に乗り出している。これまで市場をリードしてきた日米欧勢に、中国やインドといった新興国勢も加わり、国際競争は激しさを増している。

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

野澤 正毅:1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在、ビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。

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食品産業で乳業は主要ジャンルだ
(Photo/Getty Images)


国際競争の主戦場は乳製品市場

 食生活の洋風化によって、牛乳やバター、チーズなどの乳製品は、日本人の食卓でもすっかりおなじみになった。たとえば、牛乳は、コーヒーや紅茶に入れたりするほか、グラタンやプリン、クッキーといった料理や菓子の材料としてもよく使われている。

 牛乳や乳製品は、明治維新後の文明開化によって欧米からもたらされ、戦後のパン食の定着や学校給食に伴って、急速に普及した。しかし、すでに弥生時代には、牛は中国大陸から日本に渡来し、奈良時代には蘇や酪、醍醐といった乳製品が、天皇や貴族に食されていたという。日本で牛乳や乳製品が長らく日の目を見なかったのは、仏教が広まって、肉食がタブー視され、野菜や魚などの和食が食生活の中心となった影響が大きい。

 牛乳や乳製品を生産する乳業は、実は、人類の歴史とともに歩んできたグローバル産業である。牛は、約9000年前に西アジアで家畜化され、牛乳や牛肉、牛乳から作った乳製品などが利用されるようになった。そして、牛は欧米のほか、アジア、日本と世界中に広がり、世界各地でさまざまな乳製品が誕生した。たとえば、インドやトルコの料理では、食材としてヨーグルトが欠かせない。

 そうしたわけで、世界各地には、地域に根ざした乳製品がある。乳業には、ドメスティックな産業という側面があるのだ。一方で、欧米では、乳業が一大産業として成長した。牛乳や乳製品が西洋の食生活に欠かせないだけでなく、いち早く乳製品の工業化・大量生産に成功したからである。そのため、世界の乳業は、欧米メーカーがリードしてきた。

 日本の乳業では、牛乳や加工乳、乳飲料(コーヒー牛乳やフルーツ牛乳など)、発酵乳といった「市乳」、バターやチーズ、生クリーム、練乳、脱脂粉乳、アイスクリームといった乳製品に、商品が分類されている。

 鮮度が重要な市乳は、国産乳が主な原料となるが、保存の利く乳製品は、グローバルな調達が可能で現在、日本で消費される牛乳や乳製品のうち、約4割が輸入品だ。つまり、世界の乳業メーカーの主戦場は、乳製品市場ということになるわけだ。

中国やインドの新興勢力が台頭

 オランダの農協系金融機関であるラボバンクが発表した「世界の乳業メーカー2019年売上高ランキング上位20社」によれば、上位20社の売上高(米ドル換算)は、価格の上昇がわずかだったことや主要輸出国での生乳生産が伸び悩んだこと、オーガニック市場の成長が限定的だったことなどから、前年比1.3%増に止まった。

 一方で、M&Aが活発化し、乳業メーカーの再編が進んでいる。とりわけ、2019年に実行されたM&Aの115件のうち、64件が欧州で行われたという。

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グローバルランキング乳業メーカー(2019年)

 上位20社の顔ぶれを見ると、欧米勢が圧倒的に優位だが、中国やインドといった新興国メーカーも、食い込んできているのがわかる。

 世界第1位の乳業メーカーは、世界最大級の総合食品メーカーでもあるスイスのネスレ。日本でも知らない人はいないだろう。1866年に産声を上げ、今や乳製品だけでなく、チョコレートやインスタント食品、冷凍食品、ベビーフード、ミネラルウォーター、健康食品、ペットフードなどを幅広く生産する。しかし、事業の選択と集中を進めており、米国アイスクリーム事業(年間売上高約2000億円規模)などの非主力部門を、ラクタリスといったライバルに売却した。

 第2位がネスレを猛追するフランスのラクタリスだ。1933年の創業。日本ではあまり知られていないが、チーズやバターで世界的に有名で、欧州屈指の食品メーカーでもある。2013年以降、41件のM&Aを行って、売上高を急増させた。最近では中東やアフリカ、北南米でも事業を展開している。

 第3位は、米国最大の酪農業協同組合であるデイリー・ファーマーズ・オブ・アメリカ(1998年設立)。2019年に連邦破産法適用を申請した米国のディーンフーズ(2018年には第11位)を2020年、買収した。組合員の生乳供給先を確保するとともに、売上高も前年比で47.5%も増えた。また、2020年には米国のセレクトミルク、アイルランドのグランビアと合弁で、米国での大規模なチーズ生産にも乗り出した。

 第4位はフランスのダノンで、日本での知名度も高い。実は、スペインで1919年に創業した。世界で初めてヨーグルトの工業化に成功。乳製品のほか、酒類、ミネラルウォーター、パスタ、スープなどにも手を広げ、欧州最大級の総合食品メーカーとなった。

 第5位の伊利集団は中国最大の乳業メーカー(1956年設立)で、ニュージーランドの酪農業協同組合であるウエストランドを買収したことなどから、売上高が前年から20%近く伸びた。

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