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- 2021/03/11 掲載
「クラウドは万能じゃない」、DMM.comが語る脱オンプレが難しい理由
構成管理が曖昧なインフラ環境、どう改善したか?
DMM.comは、オンラインゲームに動画配信、電子書籍、通販ショッピングや競輪も楽しめるサイトだ。同サイトを運営しているDMM.com(以下、DMM)は、サイト運営だけでなく、ベルギーのサッカークラブ経営、アニメ制作、さらには消防車両の開発など、その事業数は50を超える。業績も好調で、2020年度のグループ全体の売上は2340億円、会員数は3409万人を数える。同社 執行役員 兼 VPoE 大久保 寛 氏は「DMMは器のような会社です。その中でそれぞれの事業が、それぞれ独立した会社のような振る舞いをしています」と述べる。
2021年で設立から23年目を迎えるDMMだが、最も大きい変化は2018年6月の合併だったと大久保氏は述べる。もともとDMMは、DMMとDMM.comラボ(以下、ラボ)の2つに分かれていたが、2018年6月、両社が合併して現在のDMMになった。合併前の状態について、大久保氏は次のように説明する。
「ラボは旧DMM専任のSIerのような会社で、インフラチームはラボ本体とは別の場所で働いていたため、文化的にも少し距離がありました。また、旧DMMからの指示にラボ側が対応するという受発注の関係にあったため、受け身的な体質でもあったのです」(大久保氏)
一方、事業の成長に伴ってサイトのトラフィックは急増していた。2014年に121Gbpsだったアウトバウンドのトラフィックも、2018年には280Gbpsと、4年間で2倍以上に急増したのだ。「インフラの基本スタンスは、スピード最優先で、とりあえずサーバを増やして何とかしよう。設置場所に困ったらデータセンターを増やそうという考え方でした。このため、構成管理が曖昧で、変更が困難な構成になっていたのです」と大久保氏は振り返る。
同社は、このような課題に対しどのような対策を講じたのか。
合併で会社・文化を変革、その成果とは
2018年6月、DMMとラボの合併が行われた。その目的は会社、文化を変えることだった。新しいCEO、CTOが着任して体制を一新し、さまざまな改革がスタートした。最も大きい変革が、それまで受発注の関係に改めて一体感を持たせることだった。大久保氏は、「従来は、各事業にエンジニアはいませんでした。しかし、1つの事業を1つの会社ととらえるなら、それぞれにエンジニアを抱えるのが当たり前です。そこで、事業ごとにエンジニアを抱える新しい体制に変更しました」と語る。
さらに、新しいCTOが中心となって「DMM Tech Vision」がまとめられ、社内外に発信された。これは「DMMのテックカンパニー化」を実現するために掲げられたビジョンである。ところが、当初はこのビジョンがインフラチームにうまく伝わらなかったという。
「Tech Visionを受けて、すべてがパブリッククラウドに移行すると誤解して『自分たちの仕事がなくなる』と考えるメンバーがいました。『最適なものを選択する』というだけだったのですが、こうした誤解を解き、しっかりとコミュニケーションをとって正しく理解してもらうことが必要でした」(大久保氏)
なお、合併時から現在までのトラフィックの推移は次のとおりだ。
- 2018年……280Gbps
- 2019年……387Gbps
- 2020年……390Gbps
- 2021年……500Gbps
2017年から2018年は一時的に停滞したが、2018年以降、トラフィックが急進し、2021年にはついに500Gbpsを超え600Gbpsに到達した。
このため、従来はオンプレミスのみで対応していた仕組みを変更し、現在は400Gbpsをオンプレミス、それ以外をパブリッククラウドで処理する構成になっているという。
【次ページ】クラウド移行が簡単ではない理由
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