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  • 2021/11/02 掲載

フェイスブックのメタバース、Z世代が「暇じゃないと使うのキツい」と酷評の現実

連載:メタバース・ビジネス・インサイト

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フェイスブックが仮想3次元空間「メタバース」構築に躍起だ。総額100億ドル(1兆円)を投資するとし、社名も「メタ(Meta)」へと変更。手始めとして、同社は2021年9月、バーチャルリアリティ(VR)機器「Oqulus Quest2」のビジネス会議用ソフト「Horizon Workrooms」を公開した。バーチャル会議室に参加者が分身のアバターとして集い、バーチャルなコミュニケーションを図るためのツールだ。だが、このソフトの有用性や、同社がその先に見据える「メタバース」の将来性をめぐっては賛否両論うずまいている。ミドル世代の大半にとっては、フェイスブックの打ち出す世界は、まだ異次元の遠い世界といったところ。では、将来コアユーザーになり得る若い世代には受け入れられるのか。30~40代の編集部スタッフだけでなく、Z世代の価値観を伝え続けるAMF社長の椎木里佳さんにもVRとWorkroomsに触れてもらい、実感を聞いてみた。

企画:林 裕人、執筆:漆原次郎、構成:松尾慎司、写真:大参久人

企画:林 裕人、執筆:漆原次郎、構成:松尾慎司、写真:大参久人

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椎木里佳さん。1997年東京都生まれ。 中学3年時にマーケティング企業「AMF」を創業。慶應義塾大学文学部倫理学科卒業。総勢100名の女子中高生で組成される「JCJK調査隊」を率い、10代のマーケティング調査、アドバイスなどをナショナルクライアントを中心に提供。2020年5月には、日本と台湾を基盤としたインフルエンサーマーケティングの新会社を設立。「これからは韓国や中国ともつながりをもっていきたい」

編注:フェイスブック社の社名変更に伴って、一部商品名・サービス名の変更もありますが、本稿は取材時点のもので執筆しています。

賛否うずまく「VR会議」に、Z世代の本音は……

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Oculus Quest2視点でのHorizon Workroomsの画面

 Horizon Workroomsは、フェイスブックが2021年8月にベータ版を公開したビジネス会議用VRソフト。Zoomミーティングなどのオンライン会議方式と違い、同社製ヘッド・マウント・ディスプレイ「Oculus Quest 2」を装着して、バーチャルな部屋に参加者たちが分身のアバターで集まり、会議や情報共有を行えるのを特徴としている。

 同社の最高経営責任者のマーク・ザッカーバーグ氏は7月、インターネットに構築される仮想3次元空間「メタバース」の時代が到来することを唱え、この先5年で同社が「ソーシャルネットワーキングサービスを中核とする企業からメタバース企業へ移行する」と表明した。実際、9月には今後2年で5,000万ドル(約55億円)を投資すると発表し、さらに10月には社名をメタ(Meta)に変更するとした。ほかにもクリエイター向けの基金の発足や新規雇用も発表している。

 Workroomsでは、仮想会議室に参加者の分身であるアバターたちが会し、コミュニケーションをはかれる。このサービスはビジネス向けのため、フェイスブックが掲げる最終的な理想像とはやや趣は異なるものの、同社の「本気度」を推し量ることはできる。

 Workroomsに関心をもつ人たちの間では、その将来性についてさまざま見方があるようだ。「真剣な交渉をするときに、コンピューターグラフィックスのキャラクターを相手にして、できるだろうか」と疑問を投げかける大学教授もいれば、これに対して「(現物を)試していないのでは」「エアプ(自分が体験したことのないことをあたかなも体験したようにする行為)でコタツ記事か?」と反応する経営者やVRエバンジェリストもいる。

 実際はどうなのか。ビジネス+ITでは30~40代の編集部スタッフが試用するだけでなく、ビジネス経験も豊富なZ世代の経営者に、率直に使用感や可能性を聞いてみることにした。より感度の高い若い世代は果たしてWorkroomsやメタバースを受け容れるのか。


VRの日常使いは「暇じゃないとキツい」

 取材に応じてくれたのは1997年生まれの椎木里佳さん。中学3年のときマーケティング企業AMFを設立し、以後100名程の女子中高生からなる「JCJK調査隊」を率いて、ビジネスパートナーたちとビジネス会議を含むコミュニケーションを重ねてきた。

 Oculus Quest 2のようなVRマシンに触れたのは、「前に友人の家でゲームをしたとき以来」と椎木さんは言う。もちろんそんな彼女も、ビジネス会議では、以前は直接対面やSkypeがメインだった。コロナ禍以降はZoomミーティングやGoogle Meetなどを使うことが当たり前のようになっているそうだ。


 Horizon Workroomsは取材前にあらかじめアバターをつくっておいてもらうなど、少し事前に触れてもらった。この新たなビジネス会議ツールは、日常的な仕事に取り入れられそうだろうか。

「率直な気持ちとしては、面倒かな、と。今回も、以前ゲームしたときもそうでしたが、ヘッドマウントディスプレイの装着がけっこう大変に感じます。超ヒマぐらいなときでないと、やるのはキツいかなと。仕事で日常づかいとなると、“重ため”だなって感じそうです」

 椎木さんは「そもそも軽量化や小型化がないと、外に持ち歩くのは難しい」と物理的な「重さ」も気にする。Oculus Quest 2の重量は503グラム。先代の571グラムより軽量にはなったものの、それでも500ミリリットルのペットボトル飲料を前頭部に付けているようなものだ。

 ほかにも、女性視点での使い心地の印象も話す。

「髪が乱れちゃいますよね。おでこの化粧も付いちゃう。外観やデザインが変わっていくことが重要だと思います。VR装置で“盛れる”かわいさがあればいいねってなるかもしれません」

アバターは自分と「遠い」ほどいい

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Oculus Quest 2に備わっているアバターのパターンの一部(左)と、椎木さんがつくったアバター(右)

 アバターの設定についてはどうだろう。Horizon Workroomsで会議参加者の分身となるアバターは、Oculus Quest 2で“100京”通りのカスタマイズができると謳われているがこれについても課題を指摘する。

「どうせならVRならではの強みが活かされるほうがいいかなと思いました。アバターを使うんだったら、自分とまったく違うものにしたいなと。ハロウィンみたく、萌え美少女とか、宇宙人とか、犬とかでもいいと思います。Zoomでは部屋の背景をみんながらっと変えて、それが話のネタになってツッコミ入れたりもできますよね。でも、Workroomのアバターだと、みなさん素の自分に近い格好なので、そこでツッコミを入れると傷つけちゃうこともありそうです。素の自分に近い格好をVRのアバターで見せる意味ってなんなのでしょうか」

 椎木さんが求めるのは、リアルな姿とは逆にリアルから遠ざかるほうだった。そのほうが、盛り上がるとも言う。

【次ページ】致命的な問題は「スマホを使えない」こと

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