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  • 2022/04/22 掲載

GAFAMに敗北、メタバースで日本のコンテンツ産業が直面する「致命的な」課題

連載:メタバース・ビジネス・インサイト

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中央大学国際情報学部の岡嶋裕史教授に、メタバースの現状や普及に向けた課題を聞いた前編。多くの人がメタバースに抱く理想と実情には、大きなギャップがあると岡嶋教授は指摘した。後編では覇権を狙うGAFAMの狙いや世界の勢力図を分析してもらいつつ、そのプラットフォームのうえで戦う日本のコンテンツ産業に突きつけられた課題、そして進むべき道を聞いた。

企画:林 裕人、執筆:入江大輔、構成:松尾慎司、写真:大参久人

企画:林 裕人、執筆:入江大輔、構成:松尾慎司、写真:大参久人

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中央大学 国際情報学部 教授 岡嶋 裕史 氏
中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程終了、博士(総合政策)。1999年から富士総合研究所勤務。2002年、関東学院大学経済学部専任講師・准教授・情報科学センター所長を経て、2015年に中央大学総合政策学部准教授。2019年より現職。

GAFAMそれぞれの思惑と動き

 誰がメタバースのプラットフォームの覇者になるのか? GAFAMの中では、メタが前のめりの姿勢を見せていますが、それには理由があります。

 たとえば、今回のウクライナ侵攻をきっかけに、ロシアではInstagramやFacebookが使えなくなってしまいました。

 アマゾンのように物流を握る、またはアップルやグーグル、マイクロソフトのように端末や基幹インフラを握っているのと比べると、メタのソーシャルプラットフォームは、禁止されたら終わり、排除されたら終わりという「脆弱性」を持っています。

 そのため、何か新しいビジネスを育てていかないと、先細りになってしまう。

 先日、「アクティビジョン」の買収を発表したマイクロソフトは、これまでプラットフォームとコンテンツを両輪でやってきた会社です。メタバースのブームがメタバース路線に転んでも、デジタルツイン路線に転んでも大丈夫なように布石を打ちやすいポジションにいますが、リアルワールドの勝ち組なのでデジタルツイン路線のほうが得意と言えば得意です。

 彼らが、なぜアクティビジョンを買収しようとするのか。それは技術や短期的なコンテンツではなく、アクティビジョンが抱えているゲームユーザーを買ったのだと考えます。

 将来、メタバースへと本格的に移行が進んだ場合、母集団としてのユーザー数が重要になります。アクティビジョンが持つゲームユーザーによって、マイクロソフトはここを補完したということです。


覇権を握るために必要なのは「10億ユーザー」

 マルチバースという言葉で言い表されることがありますが、メタバースに関しては、少しずつ中身の異なる「国」がいくつかできると考えています。

 多様化という言葉を簡単に使いたくありませんが、好みが多様化しているのは間違いありません。現実世界ではままならない、その欲求を満たすのが仮想空間だとすると、1個のメタバースですべてを吸収するのは難しいでしょう。少なくとも勃興期は多数のメタバースが乱立します。

 その中で覇権を握るのは、最も心地よい世界を構築した強いメタバースかもしれませんし、群雄割拠するメタバースの基盤を支える、サービス提供者であるかもしれません。ユーザーのアイデンティティ(ID)がそれぞれのメタバースに存在するのではなく、ひとつのIDを持って行き来できるようになれば、そのIDを握る企業は強い。

 エピックが展開するフォートナイトには、3億5000万人ものユーザーがいます(2021年8月発表時点)。膨大な数ですが、覇権を握るためには、それでも足りない。具体的な数字は分かりませんが、よく言われているのは10億でしょうか。その規模の潜在ユーザー数があれば、「国」や「世界」と言えるコミュニティや経済圏を作れるはずです。

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メタバースでもユーザーのアイデンティティ(ID)を持つ企業が強く、マイクロソフトによるアクティビジョン買収もそこに狙いがあると、岡嶋教授は指摘する

 さらにエピックはメタバースを動かすゲームエンジンという「器」も持っています。もちろんアプリケーションソフトウェアやコンテンツの部分も彼らは狙っていくでしょうが、そこで勝てなくても、基盤となるゲームエンジンを握っているのは大きいでしょう。

【次ページ】日本のコンテンツサービスが抱える最大の課題

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