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- 2022/10/06 掲載
プレステの父・久夛良木健氏が「Web3は虚構に過ぎない」と断言する納得理由
連載:メタバース・ビジネス・インサイト
実体のないままに進むWeb3議論
最近「Web3」が注目を集めています。2022年4月に近畿大学が新設した情報学部長に就任し「イノベーション」をテーマにしたゼミを開講していますが、ここでは「Webを現在の中央集権的な巨大プラットフォーマー中心の世界からNFTを活用して解き放ち、より民主的なものに進化させようとする動き」と伝えています。しかし、この説明は、学生たちに「いま起きていること」をシャワーのように伝え、その上で未来の在り方をそれぞれで考えてもらうためのもの。
Web3はギャビン・ウッドが分散ネットワークとして提唱したものが起点であり、WWWの生みの親であるティム・バーナーズ=リーが唱えたセマンテック・ウェブのWeb3.0とは一線を画します。
では、Web3と呼ばれているものを僕がいまどう見ているのかというと、まだ実体が伴っていないコンセプトセッティングの状況なので、現時点でWeb3は虚構に過ぎないと考えています。
プラットフォームが民主化されるという期待はあるだろうし、理想としては中央集権的な管理者に左右されない、よりオープンな環境に進化しようとする方向性には共感を覚えます。けれども、それはある意味で無法地帯と変わらない状況を生み出しかねないのではとも危惧しています。
タダ乗りしながら「Web3」を叫ぶ人々
「Web3が到来すればネット利用者はより自由になる」という論調もありますが、なぜ世界中のユーザーが現在インターネットの恩恵を受けることができているのかを踏まえた上での議論が正しく展開されているのでしょうか。インターネットが機能するには、世界中に敷設されている多数のサーバー群、それらを接続するためのネットワーク網、各種ネットワークサービスを担うデータセンターやクラウドプラットフォーム群、それらを高速に接続するための海底ケーブル網や光ケーブル、世界各地の通信基地局の整備など、巨大な投資が継続的に必要になってきます。つまり、インターネットやネットワークサービスは、膨大なインフラの上に成り立っているのです。
今後も扱われるデータ量は指数関数的に急速に増加すると予測されているので、それらに対する追加投資もますます必要になっていくでしょう。
これらを誰かが担っているということを横に置いて、「Web3が……自由が……」と言っているのが今の状況だと思っています。さまざまな便益に「タダ乗り」しておきながら、「プラットフォーマーに自分の情報を握られているのはおかしい」とか、自身の権利を中心に主張しているのは、逆におかしな話だと僕は思います。
【次ページ】ネットの民主化を否定しているわけではない
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