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  • 2022/08/04

出井氏がソニーに君臨した10年間、もたらされた光と影とは?

大関暁夫のビジネス甘辛時評

今年6月、ソニーグループ(以下ソニー)の元CEO出井伸之氏が亡くなられました。享年84歳。氏は1995年に社長に就任しCEOを退任した2005年までの10年にわたり、ソニーのトップとしてだけでなく、日本の産業界のリーダーとして「栄光の10年」をけん引しました。そしてその10年はまた、ソニーにとって成長、変革、急下降という激動を経験した10年でもあり、その後のソニーの事業軌道に良いにつけ悪いにつけ大きな影響を及ぼした10年でもあったと言えるでしょう。“出井後”のソニーの歩みも俯瞰(ふかん)しつつ経営者としての功罪を振り返ることで、今のソニーに果たした影響を検証してみます。

執筆:企業アナリスト 大関暁夫

執筆:企業アナリスト 大関暁夫

株式会社スタジオ02代表取締役。東北大学経済学部卒。 1984年横浜銀行に入り企画部門、営業部門の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時にはいわゆるMOF担を兼務し、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。2006年支店長職をひと区切りとして独立し、経営アドバイザー業務に従事。上場ベンチャー企業役員を務めるなど、多くの企業で支援実績を積み上げた。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業などのアドバイザリーをする傍ら、出身の有名進学校、大学、銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆やコメンテーターを務めている。

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10年間にわたりソニーのトップを務めた出井氏がもたらした光と影を振り返る
(出典:AFP/アフロ)

初の文系社長ならではの慧眼

 出井氏は電機メーカー「技術のソニー」にあって、初めての文系社長でした(前任の大賀典雄氏は芸大出身のため、『文系』とはまた違います)。それだけに過去のトップとは異なる発想で会社を導いた、という印象が強くあります。その影響は技術系企業ソニーにとって、良い面にも悪い面にも色濃く出たと言えるでしょう。

 良い面で真っ先に思い浮かぶのは、出井氏が先々を読み解く慧眼を持っていたということです。文系であるが故に、目の前の技術水準を基準にした先々の業務展開という視点にとらわれることなく、想像力を駆使した自由な発想で未来予想図を描くことを得意としていました。

 その最たるものがデジタル時代への視座です。氏が社長のイスに座った1990年代半ばは、Windows 95 の登場とともにパーソナル・コンピュータがまさにパーソナルな存在になった大変革期でした。同時にインターネットの世界がビジネスや一般人の生活に浸透し始め、大きく時代を動かし始めたのもこの時期です。

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大賀氏(左)の後任として、1995年に社長に就任した出井氏
(出典:AFP/アフロ)

 その折も折、大賀氏の退任を受けて社長に就任した出井氏が掲げた新生ソニーのスローガンは、「リ・ジェネレーション」と「デジタル・ドリーム・キッズ」でした。「リ・ジェネレーション」は直訳すれば「再生」であり、創業の時代から新たな時代への転換を宣言した第二創業とも受け取れ、ややこじつけ的解釈ではありますが、これを「Sustainable(継続的)」と捉えればSDGsの時代を予見した言葉であったと考えることも可能かもしれません。

 「デジタル・ドリーム・キッズ」はすでにインターネット時代の幕開け時点で、我々の生活がデジタル化されネットワークが重視されるITおよびIoT時代の到来を予見し、ものづくり一辺倒のソニーからの脱却を宣言するものでした。

 1996年の「VAIO」ブランドでのPC事業再参入、エリクソン社との合弁での携帯電話事業の本格始動、インターネット・プロバイダー事業「So-net」への着手は、まさにIT総合企業ソニーに生まれ変わるべく時代の先鞭(せんべん)をつけるものであり、ハードウエアとコンテンツの融合戦略は、現在のソニーのビジネスモデルにもつながる礎づくりだったといえるでしょう。


マネジメント面での功績

 出井氏のもう一つの功績といえるのが、マネジメント面での大改革でした。1990年代後半時点ではまだ国内で珍しかった執行役員制導入による経営と執行の分離をはじめ、委員会設置会社への移行や社外取締役の積極登用など、ガバナンス強化を通じての企業価値向上に努めました。

 こうした改革は、当時叫ばれ始めた企業経営におけるグローバル・スタンダードの実践を日本企業の先頭を切って着手したものとして高く評価され、グローバル企業としてのブランド向上に大きく寄与したと言えます。

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