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  • 2022/09/01 掲載

大失速ネットフリックスを徹底分析、このままでHulu・アマプラ・Disney+に勝てるか?

【連載】エンタメビジネスの勝ち筋

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コロナ禍で、日本でも急速に利用が定着したビジネスの1つが動画配信サービスです。その代表格とも言えるネットフリックスは、2021年に契約会員数が世界で2億人を超え、株価も600ドル台まで上昇しました。しかし、2022年度1Qの決算説明会で会員数が10年ぶりに減少したことを受け、株価は半分以下まで暴落しました。2010年台以降、やや神話的に扱われていた「サブスクリプション」というビジネスモデルに対する不安が世界中を駆け巡るきっかけになりました。今回はそんなネットフリックスを中心にサブスクモデルの限界を探りつつ、レッドオーシャン化してしまった業界でネットフリックスが生き残る道を探りたいと思います。

執筆:京都精華大学 准教授 富樫佳織

執筆:京都精華大学 准教授 富樫佳織

学習院大学法学部卒業。早稲田大学商学研究科修了(MBA)NHK(日本放送協会)、放送作家、WOWOWでのプロデューサーを経て現職。専門は、ビジネスモデル、イノベーション・プロセス、コンテンツビジネス、マーケティング。放送番組の受賞歴として『Blueman Group Connect to Japan』(WOWOW)での第40回国際エミー賞アート番組部門ファイナリスト、第2回衛星放送協会オリジナル番組アワード中継番組部門最優秀番組、映文連アワード2013「ソーシャルコミュニケーション部門」部門優秀賞、ほか。著書に『この一冊で全部わかる ビジネスモデル』(2020年、SBクリエイティブ)『やわらかロジカルな話し方』(2017年、クロスメディア・パブリッシング)。

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サブスクモデルは成長し続けられるモデルなのか? ネットフリックスが目指すべき方向とは?
(写真:ZUMA Press/アフロ)


テレビ局とはまったく違う? ネットフリックスの立ち位置

 ネットフリックスをはじめとした、動画配信サービスが提供している価値とはどのようなものなのでしょうか。経営学者フィリップ・コトラーのマーケティング分類をもとに、放送局と動画配信サービスを比較すると、動画配信サービスの位置付けが見えてきます。

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図表1:製品中心からデジタル・プロダクト時代のマーケティングへの変化
(出典:P・コトラー、H・カルタジャヤ、I・セティアワン 『マーケティング3.0』『マーケティング4.0』(朝日新聞出版)を引用し筆者作成)

 コトラーのマーケティング分類によると、放送局はマーケティング1.0~2.0に該当し、消費者と1対多数、または1対1の関係性を前提に、自社の映像コンテンツという製品を磨き、他社との差別化を図るというマーケティングで成長してきました。

 一方、スマホの普及した現代では、企業と消費者の関係は「多数対多数」が前提となり、顧客データを収集・分析することもできるため、企業はデジタル技術を活用し、どのような価値を提供するか模索します。こうした時代に誕生したネットフリックスは、放送局と同じく映像コンテンツを扱っていますが、マーケティング3.0以降の「価値を売る」企業という位置付けとなります。ネットフリックスは、創業以来その「価値」をアジャイル的に革新させ続けてきた企業なのです。

 ここからは、ネットフリックスがどのような価値を磨いていったのか、なぜ成功していったのかをおさらいしたいと思います。

ネットフリックスの成功要因(1):SNSサービスの普及

 ネットフリックスが誕生したのは、創業者の1人であるリード・ヘイスティングス氏がDVDレンタルした「アポロ13」の返却延滞料金の高さに憤ったからというのは有名なエピソードです。ネットフリックスはレンタルDVD事業の代替としてビジネスをスタートさせると、デジタル技術を通じて、それまでのDVDレンタル事業に存在した「手間」を解消していきました(図表1)。

 注目すべきは、インターネットを通じて顧客の手間を省けば省くほど、ネットフリックスには「人気タイトル」や「顧客の選好」「顧客の共通点」などのデータが資源として蓄積していったことです。

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図表2:ネットフリックスのサービスと提供価値の変遷
(出典:筆者作成)

 ネットフリックスがインターネットによるストリーミング配信を始めた2007年前後は、YouTube(2007年)やTwitter(2006年)がサービスを開始、Facebookが学生から一般向けにサービスを拡大(2006年)するなど、ニューウェーブのメディアビジネスが誕生したエポックメイキングな時期です。

 フィリップ・コトラーの「マーケティング進化」における「マーケティング3.0」の時代、価値創出の主な資源となったのがまさに、これらSNSに代表されるプラットフォーム企業です。「マーケティング3.0」では、消費者もまたサービスを作り上げる主体になる、つまり「共創」が重要なポイントになります。

 インターネット配信を始めた初期のネットフリックスは、同時期に市場を拡大したSNSサービスと連携をしていました。その1つが、Facebookの友達が見た動画を顧客にレコメンドするというものです。このサービスは後に、独自のレコメンデーション・エンジンの開発とともに終了しましたが、SNS時代のマーケティングを反映したユニークな試みです。

ネットフリックスの成功要因(2):アルゴリズム開発

 DVDレンタルを通じてインターネットを介する顧客接点を持ったネットフリックス最大の資源は、顧客1人ひとりの選好データです。ネットフリックスが創業初期に行った大きな投資に、顧客データから「次に見るべき作品」のレコメンデーションを行うアルゴリズム開発がありました。

 配信サービスを開始する前年の2006年から「ネットフリックス Prize」という、自社のアルゴリズム・エンジンのソースや取得データを一部公開し、レコメンデーションの成果を10%向上させる賞金100万ドルのコンペティションを行って自社の価値提供の核となる技術をブラッシュアップさせるオープンイノベーションを行ったのです。

 ネットフリックスは単に「インターネット回線を介して動画を配信する」企業ではなく、顧客とつながり、サービス向上の共創を行いながら(マーケティング3.0)、機械学習とデータ・サイエンスを駆使して顧客に価値を還元する(マーケティング4.0)テクノロジー企業の先鞭でした。

 ネットフリックスがコンテンツ企業ではなく典型的なテクノロジー企業であることは、財務データを見ると明快です。成長するためにかけてきた費用がまったく違うからです。ここからは財務データから、ネットフリックスのビジネスモデルを細かく見ていきたいと思います。

【次ページ】財務データ・営業利益を分析、ネットフリックスの収益構造

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財務データを分析、ネットフリックスのビジネスモデルとは?(次のページで詳しく解説します)

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