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- 2023/08/16 掲載
的中率なんと9割の「天気予報」から学ぶ、会社に莫大利益を生む「大ヒント2つ」
【連載】現役サプライチェイナーが読み解く経済ニュース
天気予報はなんと「的中率9割」、どう進化したのか?
スーパーコンピューターを駆使する天気予報の精度が年々向上しています。2023年7月の日経新聞の記事によると、梅雨などの特殊な時期を除けば、9割の確率で雨が降るかを的中させることができるようです。気象庁は、細かく格子状にエリアを分け、各エリアにおける気圧や気温、風の変化などを計測し、天気を予測しています。エリアを細かく分けるほど地形の差なども考慮でき、予測精度を高めることができますが、予測のために必要な計算量も増えていきます。
さらに、私たちが生活する地上の観測データだけでなく、上空の情報も活用することで精度を高めてきました。雲研究者の荒木 健太郎氏の著書によると、1930年代に気球を使った上空の観測が始まったようです。今では航空機や気象衛星なども活用することで、大量の情報を集めることができています。
こうして集められたビッグデータをスーパーコンピューターによって高スピードで解析し、天気を予測します。地球全体の1日先の天気は、なんと10分で予測できるそうです。
一方、天気の因果関係は複雑であり、たとえば以下のようなさまざまな要素が互いに影響し合い、天気を左右します。
- 方程式で表現できる大気の流れや水蒸気量、気温
- 太陽光やそれによって温められる地面や雲が放つ熱
- 地表の植物や積雪、海
- 気流に影響を与える地形
関連するデータを収集するだけでも大変ですが、その因果関係をモデルで表現するのも大変で、だからこそ先進的な技術を駆使して進化してきたと言えるでしょう。
天気予報と似ている「ビジネスの需要予測」
因果関係が複雑で、高度な分析による進化が目指されているのは天気予報だけではありません。ビジネスにおける需要予測も同様です。業界や商材によって細かな要素に差はありますが、先述の天気予報に負けないくらい、多様な要素を考慮しなければなりません。たとえば以下のような要素です。- 色やサイズ、デザイン、香り、味、機能といった商品の特徴
- 原価、卸価格、小売価格
- メディア宣伝や店舗キャンペーンなどのマーケティング施策
- ウイルスの感染状況や訪日外国人数、為替、気象などの外部環境
- 競合ブランドの新商品発売やマーケティング施策
- デパート、ドラッグストア、インターネットといった販売チャネル
このように因果関係が複雑なことや、考慮すべき要素が膨大なことなど、天気予報と、ビジネス上での需要予測は似ているところが多くあります(図1)。
図1の主なツールで見てみると、天気予報がスーパーコンピューターであるのに対して、ビジネス上の需要予測ではAIが該当しそうです。しかし、需要予測にAIを活用できている企業は、筆者や周りのデータサイエンティストの感覚では1~2割といったところで、やや遅れている印象です。
大量の情報を考慮する必要性を鑑みると、ビジネスの需要予測でもAIなどの高度な分析を駆使していくのが有効になると考えられますね。そのほかにも天気予報と需要予測は、予測精度における数%改善の意義も似ていると感じます。 【次ページ】数%の精度改善がもたらす「莫大な利益」
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