- 2024/07/31 掲載
【売上解説】今でも『ドラえもん』に稼ぐ力がある理由、伸び続ける“ある国の市場”(3/3)
ドラえもん関連売上、まだまだ伸びる“ある国の市場”
ドラえもん経済圏の中心はコミックである。初版100万部も、累計2000万部も1980年初頭にマンガの黎明を切り開いたのがドラえもんだ。そのコミックスの累計売上2億5000部(2019年時点)と、「ONE PIECE」などの作品によって追い抜かれるまでは国内コミック市場の上位であり続けた(出典:ドラえもん、誕生50周年にビックリ新刊!「第0巻」27日発売.サンスポ.2019年11月27日)。その意味では1980~2000年代の30年間にわたってマンガ/アニメ/映画のメディアミックスの金字塔であり続けた作品と言えるだろう。だがそのコミックも、1969年からの連載による単独の人気というよりは、その世界観を存分に生かしたアニメ界の巨匠高畑勲氏のコンセプトメークがあり、その人気にのって1979年からのテレビアニメによって急激に「数十億円売上」という市場が生まれた。
劇場版映画としてゴールデンウィークのファミリー向けアニメが始まったのも1980年公開の『ドラえもん のび太の恐竜』からだ。その後『DRAGON BALL』が1986年、『アンパンマン』が1989年、『クレヨンしんちゃん』が1993年、『名探偵コナン』が1997年、『ONE PIECE』が2001年と毎年恒例の定番劇場版アニメというフォーマットに各作品が続々参入してくる。
テレビアニメが海外で放送されるようになった1980~1990年代、アジアを中心にドラえもんファンは少しずつ育っていた。2000年代から劇場版もスペイン、イタリア、台湾、韓国、ベトナムといった地域でそれなりの売上を出すようになったが、この長い“潜伏期間”の間に想像もしない市場が育っていた。それが中国である。
2014年にようやく日本映画が上映許諾を降りるようになったこの時期に『STAND BY MEドラえもん』と3DCG化されたドラえもん映画は、国内で79億円のところ、中国で5億元(100億円)と、母国を超える成果を出し、日本映画の中国興収(当時の)最高記録をたたき出した。
それまでコミックで毎年20億(400~500万部)、定番映画で30億円、商品で数百億円程度と言われていた国内中心の経済圏において、突然映画だけで200億円も超えるような収益を生み出してしまったのだ。
2020年の『STAND BY ME ドラえもん 2』もまた全世界で6,500万ドルという成果を挙げ、ドラえもんはアジアを中心とした世界に広がる存在であることが証明された。単に3DCGだから流行った、というわけではない。放映後に配信サイトにも掲載され、英語だけでなく中国語・韓国語など複数言語で吹き替え・字幕があるドラえもんアニメがこの『STAND BY ME ドラえもん 2』しかないのだ。
2023年12月に日本でも配信サービス『ドラえもんTV』が始まったばかり。Netflixや他の配信サイトにのっている2Dアニメは一部エピソードの抜粋かつ、英語字幕すらない状況だ。この点では海外で需要が高騰している中で、いまだドラえもんの映像がどこでも見られる状態になっていない現状は課題も多い。
こうした海外での反響を反映するように、2010年代に入るとGoogleトレンド(どれだけそのキーワードが検索されているかを分析できるツール)でも「ドラえもん」よりも「Draemon」のキーワードの方が圧倒的に検索ボリュームが大きいのだ。
1969年に始まり、1980~90年代と日本のマンガ・アニメのビジネスモデルを切り開き、2010年代から海外人気が発火した“ばかり”のドラえもんは、まさにこれからが「世界のドラえもん」になっていく新たなチャプターの始まり、と言えるだろう。
- 南博.ドラえもん研究 子どもにとってマンガとは何か.ブレーン出版,1981年
- 藤子不二雄A,藤子・F・不二雄.藤子不二雄A 藤子・F・不二雄 二人で少年漫画ばかり描いてきた.日本図書センター,2010年
- 横山泰行.ドラえもん学.PHP研究所,2005年
- 高畑勲.ドラえもん“覚書. 藤子・F・不二雄ミュージアム展示資料
- 中野晴行.マンガ産業論.筑摩書房,2004年
- 二上洋.少女まんがの系譜.ぺんぎん書房,2005年
- 渋谷直角.定本コロコロ爆伝!! 1977-2009『コロコロコミック』全史.飛鳥新社,2009年
- ドラえもん、誕生50周年にビックリ新刊!「第0巻」27日発売.サンスポ.2019年11月27日
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