• 2025/11/09 掲載

なぜiPhoneが欲しくなるのか? Appleが仕掛ける「欲望」を操る心理テクニック(2/2)

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iPhoneやMacBook Proも…マーケティング3.0の成功事例

 マーケティング3.0とは、この「葛藤の解放」というプロセスを通じて、お客さまの心の中に、自然と「欲しい」という温かい感情を生み出すこと。

 強く煽る必要も、論理で無理に説得する必要もありません。

 お客さまの感情を、心地よくあるべき方向へと動かしてあげれば、人は自ら動き出すのです。

 マーケティング3.0の成功事例をあげると、たとえばオンライン型経済メディアのNewsPicksがあるでしょう。

 NewsPicksは、単に最新のビジネスニュースを提供しているだけではありません。

 「情報収集に時間はかけたくない。でも、周りのビジネスパーソンより一歩抜きん出た、ちょっと意識の高い自分でありたい」というユーザーの葛藤を、実に巧みにくすぐります。

 彼らは、「意識高い系の人を狙っています」とは決して言いませんが、その洗練されたブランディングやUIデザイン、プロピッカーという専門家の存在、言葉選びのすべてが、その層の潜在的な優越感や自己肯定感を満たすように、緻密に設計されているのです。

 AppleのiPhoneやMacBook Proなども、その最たる例でしょう。

 もちろん、「最新のテクノロジーを使いたい」「性能が高いものが欲しい」という「陽」の欲求に応えていることは間違いありません。

 しかし、それ以上に強力なのが、内に秘めた欲望。「複雑な機械は苦手。でも、最先端のクリエイティブな人間でありたい」「スタバでMacBookを開いている自分が、かっこいい、イケてると思いたい」という表には出せない本音が満たされることで葛藤を解放しているといえます。

 Apple製品を使うことで得られる特別な自分という感覚や、「自分の人生が進化している」と感じられる体験が、お客さまを熱狂的なファンへと変えるのです。

 彼らは「あなたの手元に新しいビジョンを与えます」といった直接的な言葉で訴えかけるのではなく、「Appleデバイスがある生活そのものが、より豊かで、より創造的になる」というライフスタイルを、映像や音楽を通してイメージさせる。

 そうすることで、お客さまの深い感情に触れ、一歩進んだ自分というプライドをも満たし、高価な商品の購買へと導くのです。

マーケティング3.0を意識したビジネス展開を実践

 もちろん私自身も、マーケティング3.0を意識したビジネス展開をしています。

 実際に私のところに相談に来られるクライアントの多くは、「売り込みたくないけれど、成果はしっかりと上げたい」という、深い葛藤を抱えています。

 そして、私のInstagramの発信などを見て、「自分がやりたくないことをしなくても成功できるのかもしれない」という希望の光を感じ、すでに半分、葛藤が解放されたような状態で私の元に来るのです。

 特に女性の起業家や、子育て中の主婦の方々は、もともと営業経験が少なく、人に商品をアプローチすること自体に、強い心理的抵抗がある方が多くいらっしゃいます。

 世の中のビジネス論では、「行動量が大事だ」「セールスこそが命だ」と声高に叫ばれますが、そう言われれば言われるほど、拒否反応が出てしまう。

 そんな方々にとって、売り込む必要はないという考え方は、まさに「やりたくないことをやらなくていいんだ」という解放そのものなのです。

あなたが向き合うべき、聞き入るべきものは…

 先日相談があったある女性のクライアントは、もともとフェイシャルエステの仕事で、多くの女性を幸せにしたいという夢を持っていました。

 しかし、営業やマーケティングの能力がないために、それを諦めかけていたのです。

 1年間、高額な別の起業塾に通ってもフォロワーはまったく増えず、集客もゼロ。

「もう、私には才能がないんだ。ビジネスを辞めようか」

 そのように考えるほど追い込まれていました。

 話を聞いたところ、彼女が通っていた塾は、まさにマーケティング1.0や2.0の典型でした。

 「3カ月で月収100万円!」と快楽(成果)をちらつかせ、「やらないあなたは負け組だ」と恐怖を煽る。

 しかし彼女の潜在的な望みは、「自分らしく、お客さまと心を通わせながら、穏やかに夢を叶えたい」だったのです。

 その塾の教えは、彼女の心をただただ疲弊させるだけでした。

 そんなとき、彼女は偶然、私のInstagramアカウントを見つけました。

 他の起業塾が「もっと投稿しろ」「努力が足りない」と、発信量の多さばかりを求める中で、私が「その投稿は、お客さまの人生とどう繋がっているかを考えたことがありますか」と、根本的な視点の転換を促す発信をしていることに彼女は気づきました。

画像
売らずして売る: 「欲しい」が生まれると、人は自然に動いてしまう』をクリックすると購入ページに移動します
「もしかしたら、もっと私に合うやり方があるのかもしれない」

 そんなかすかな希望を見出し、思い切って私に連絡を取ったそうです。

 まさに彼女の長年の葛藤が解放され、新しい可能性に人生を賭けたいという、強い意志の表れでした。

 あなたが向き合うべきは、競合製品のスペック表ではありません。

 あなたが聞き入るべきは、市場調査の無機質なデータではありません。

 たった1人のお客さまの声なき声なのです。

※本記事は『売らずして売る: 「欲しい」が生まれると、人は自然に動いてしまう』を再構成したものです。

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