• 2025/11/26 掲載

【単独】ビール大手がなぜミルク…? アサヒが「基礎科学者5人」と異色協業のワケ(2/3)

連載:基礎科学者に聞く、研究の本質とイノベーション

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AQI全社員が参加した「刺激的なイベント」

 オープンイノベーションの取り組みは、AQIが議論したいテーマを財団に提示し、財団がそれにふさわしい日本最先端の知識・業績を持つ5人の生物学の基礎科学者を紹介するところから始まった。その後、AQIの経営層、研究者と基礎科学者が一堂に会した会議を2回実施した。

「1回目の会議では、まずは基礎科学者の皆さんに自分の研究を紹介していただきました。その後、我々に関連が深い社会課題や将来の社会像を明確化してお伝えし、それを基に基礎科学者の皆さんに研究提案を準備していただきました。同時に、社内有志でご紹介を受けた研究内容を基に、我々側でも研究アイデアを用意しました。2回目の会議では、両者の提案を議論しました」(永富氏)

 1回目の会議で特徴的だったのは、5名の基礎科学者に自らの研究について自由に制限なく語ってもらったことだ。その狙いについて、永富氏は次のように説明する。

「『アサヒグループ=ビール』というイメージやビジネス的なことで先生方の視野を狭めたくなかったのが最大の理由です。まずは研究について自由に語っていただき、それが我々にどう響いたのかも含めて議論をさせいただきながら、徐々にテーマを詰めていきました」(永富氏)

 ちなみに1回目の会議は、事務方を含めてAQIのほぼ全社員が参加する盛況ぶりだったという。最先端の研究が研究者本人によって語られるという会議は、研究職ではない同社のスタッフにとっても"刺激的なイベント"となったようだ。

 そして2回目の会議では、各テーマに興味・関心を持つスタッフが10~20名参加して議論が進められた。

なぜ「基礎科学者との議論・協業」が必要なのか?

 しかし、AQIはなぜ大隅財団が提供するオープンイノベーション支援を活用し、基礎科学者の紹介を受けようと考えたのだろうか。永富氏は、その狙いを次のように説明する。 「社会課題に取り組むと、企業目線だけ、もしくは企業単独では解けないことが出てきます。そこを超えるためには、新しい気づき、ナレッジ、テクノロジーを我々の中に積み上げていくことが重要です。そのために、基礎科学の視点も取り入れることが大切だと考えて、財団にお声がけさせていただきました。少し大仰かもしれませんが、我々はご紹介いただいた研究者の皆さんを『未来をともに構想する知識のパートナー』ととらえています」(永富氏)

 もちろん、AQIは自社の事業であるビールや酵母などに関わる専門家とのネットワークはすでに持っている。しかし、それ以外の分野では、最先端の研究者と接点を持つことは容易ではないと、永富氏は次のように述べる。

「分野が異なると、何がどうすごいのかを理解するのも難しいです。しかし、大隅財団からご紹介いただいた研究者の方々であればまず間違いありませんから、スタートとしても安心ですし、かなり"突っ込んだ"お話も持ちかけられるのではないか、という期待もありました」(永富氏)

 実際に5名の研究者との議論は、AQIの研究者にとっても刺激に満ちたものだったようだ。

「具体的には申し上げられないのですが、たとえば食品の保存性や風味の向上について、我々が思いつかなかった視点を得ることができました。また、ビジネスとは無関係の話、たとえば生命の起源についての話も、非常に興味深かったですね。やはり、レベルの高い研究をされている研究者は、新しいこと、イノベーティブなことへの感度が高く、とてもアクティブかつ人としても魅力的であり、ぜひ仕事をご一緒したいと改めて思いました」(永富氏) 【次ページ】基礎科学者と企業研究者「立場も考えも全然違う」のだが…
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