- 2025/11/19 掲載
サブスクにDP…BCGが指摘、「流行モデル」に飛びつく企業が見落とす“致命的”要素(2/2)
価格戦略に「経営陣の意思決定」が重要になるワケ
価格は単なる数字でも、商品属性やマーケティングの手段でもなく、戦略的なものだ。経営陣が価格アーキテクチャーについて意思決定しない限り、価格はないも同然だ。価格をなりゆきで決めたり、注意深く検討した上で決めても、一度決めると所与のものと捉えて─見直さなかったりすれば、必ず問題が起こる。図表1のモデルでは、プライシング・モデルの決定に必要な項目を、上から最終的な価格差が大きいものから順番に並べている。
価格アーキテクチャーの決定は、売上や利益、市場シェア、市場内のポジションとその構造が続く期間など、広範囲に影響が及ぶので、経営陣の関与が欠かせない。
しかし残念ながら、ほとんどの企業は、価格アーキテクチャーは所与のものとみなし、価格調整側の意思決定にリソースを割いている。たしかに、顧客向けプログラム、取引インセンティブ、手数料と機能割引などの意思決定をうまく行えば、市況に応じて価格を柔軟に調整できる。こうした施策も、企業業績ひいては市場ポジションにも大きく影響する可能性があるので、経営陣が意思決定に関与し、少なくとも意見を言うべきである。
オンライン広告市場全体に変化をもたらした“成功例”
価格多様化は、顧客の状況などによるWTP(支払意向額)の違いを顕在化させるのに役立つため、歓迎すべきものだ。しかし、顧客が価格の違いを、どう見ても不公平だと受け止めれば、激しい批判にさらされる。こうした価格多様化の長所と短所を価格設定の強力な武器に変えるためには、後から限界を超えて調整レバーを引く形にするのではなく、価格アーキテクチャーの意思決定をするときに、価格多様化の要素も織り込んで検討する必要がある。
たとえば、グーグルアドワーズのプラットフォームは価格多様化を活用した成功例だ。グーグルが2000年初めに広告プログラムを開始したとき、広告主はテキスト広告(スポンサーリンク)を掲載し、ユーザーの検索結果ページに広告が表示された回数に応じて料金を払っていた(注1)。しかし同年末、見込み客(リード)に対する広告主のWTPと自社サービスをもっと適合させるために、価格メカニズムを「アドワーズ」というオークション型のシステムに変更するという大胆な意思決定を行った。
これは、広告主がテキスト広告を作成し、自社広告を表示させるキーワードに対して入札を行いつつ、1日の支出予算を設定できるオンライン・セルフサービス・プログラムだった(注2)。この広告収入はすぐにグーグルの売上の多くを占めるようになり、2002年から2008年にかけて年平均94%で成長した。グーグルの価格アーキテクチャーに関する戦略的意思決定はオンライン広告市場全体を再形成した。
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