- 2026/01/14 掲載
「なんか違和感…」嫌われるAI広告、「リポビタンD」新CMはギリOK…?炎上の境界線は(2/2)
“不気味”だけではない、生理的にムリな「3つの理由」
作り手、および受け手の観点から整理すると、AIによる表現が反発を招く要因としては下記の3点が考えられる。1.AIで作られた表現の不自然さ、不完全さへの違和感専門家の見地からは、法律的な問題、倫理上の問題も指摘されているが、ひとまずは上記の3つを中心に考えたい。
2.AIに創造的な仕事が奪われる、あるいはAIによって人間の創造力が損なわれるという懸念
3.ニセモノにだまされている、あるいは踊らされているという意識
1については、AIが進化すれば解消されていくはずだが、逆に2、3の問題が大きくなっていく。
ハリウッドでは、すでにティリー・ノーウッドという「AI俳優」が登場し、物議を醸している状況だ。全米映画俳優組合は「人間の創造性を軽視している」と猛反発している。
一方で、AI活用で反発を受けないためには、現状起きている問題が解消されれば良いだろう。
【成功事例分析】シャープ・ACジャパンの「巧みな一手」
日本でもAIで制作された広告はいくつも存在するが、反発を受けたものばかりではなく、成功している事例も多数ある。そもそも、消費者に好意を抱いてもらうことを目的とする広告において、彼らから反発を招いてしまうのは本末転倒だ。AI広告の黎明期には、批判的な声は少なく、興味を持って受け入られた。
たとえば、2023年に作られた大日本除虫菊(金鳥)の殺虫剤「キンチョール」の若者向けCMは、「面白いCM」として捉えられている。もっとも、このCMはAIで生成されたというよりは、人間(クリエイター)とAIとの対話によるコラボレーションとでもいうべきもので、これまでに見たことのないような奇抜な映像表現が実現している。
現在と比べて生成AIの機能が低かったこと、人間の手が入ったことが、むしろ人々の反発心を軽減したのではないかと思う。
同じ2023年、伊藤園は「お~いお茶 カテキン緑茶」のテレビCMに生成AIで作成された「AIタレント」が出演して話題を集めている。このケースでも、大きな物議を醸すようなことはなかったと記憶している。
この段階では、AIで生成される広告は珍しいもので、「新しい挑戦」として前向きに捉えられていたように思う。
2024年に入ると、日本マクドナルドが公式X(旧Twitter)上にアップした、マックフライポテトのプロモーション動画が「気持ち悪い」と強い批判を浴びた。
一方で、同年にシャープはスマートフォン「AQUOS」のテレビCMに3D・CGやAIを用いて復元した俳優の故・松田優作氏を起用したが、こちらの好感度は高く、商品販売も好調だったようだ。
松田優作氏の復活には、妻だった松田美由紀氏が監修としてかかわっており、CMの映像は白黒で、AIのイメージとは対極的なアナログ感にあふれるものになっている。
2025年に話題になったのが、ACジャパンの「フェイクは、ホンモノみたいな顔をする」のCMだ。本CMでは、タレントの北野武氏が次のように語り掛ける。
でも、そこには、加工された真実じゃないものが含まれているかもな。
今こそ、情報の真偽を見きわめる力が必要だよな?
本CMは、AIの映像で視聴者をだますのだが、それ自体が視聴者への啓発のメッセージとなっている。上で述べた、3の問題を逆手に取ったCMだと言えるだろう。
こうした「AIであること自体をメッセージにする」ACジャパン型に対し、2026年の元日に公開された大正製薬「リポビタンD」の新CMは、別のアプローチを取っている。
本CMは、特定のタレントをAIで再現したものではなく、AIであることを強く意識させない、現実感のある映像に仕上がっている。そのため違和感は少なく、自然に受容されやすい。一方で、ACジャパンのCMのような「AIならでは」のサプライズはなく、話題性も限定的だった。
つまりリポビタンDのCMは、「炎上はしないが、強い称賛も生みにくい」という、現在のAI広告における“ギリギリの受容ライン”を示す事例だと言えるだろう。
炎上回避するには?受容されているAI広告「2つの条件」
将来どうなるかは分からないが、現時点では、人々に受容されているAI広告は、下記の条件を満たしているものだ。1.AIを活用して、これまでにない新たな表現を生み出しているこれは、広告に限らず、創造的な表現全般に当てはまるものではないかと思う。幸か不幸か、まだ「才能や努力がなくとも、AIを用いれば誰でも素晴らしい創作物を生み出すことができる」という状態にはなっていないようだ。
2.人の手が入り、丁寧に作り込まれている
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