- 2026/02/27 掲載
月5万円で別荘が手に…なぜ「シェア別荘」が急増中? 新興・老舗に聞くブームの裏側(2/3)
連載:ヒットの現在地
分譲の“限界”から大転換──老舗が「会員権」にこだわる理由
1925年に創業、親子3代で事業を営んできたにしがきでは、1989年にリゾートマンション事業に参入した。しかし、1人がひとつのマンションを所有する分譲形式に限界を感じ、2011年から「プール付きヴィラ」をコンセプトとしたシェア別荘に方向転換した。現在、同社が主力とするのは、2012年から展開するリゾート会員権「GRANDE(グランデ)」だ(注)。最大12名で宿泊可能日数を割り振り、拠点を共同利用する。自身が購入した拠点だけでなく、全国に約20拠点・100棟以上ある拠点も相互利用できる。20年の定期借家契約で価格は380~1,026万円、年間約16~48泊の利用が可能だ。
2024年4月からは、よりハイエンドな別荘を求める人をターゲットに、共同所有型の「Residence Villa(レジデンスヴィラ)」も提供開始した。18名で所有し、1人あたり年間14泊で最大30年間利用できる。そのうち6泊は毎年固定で確約、残り8泊はグランデの拠点を利用できる。価格帯は、1,500~1,800万円がメインだ。
「グランデよりも高級なヴィラを、GWや年末年始、夏休みといったハイシーズンに固定で利用できるのが最大のメリットです。未宿泊の固定日を事務局に売却することも可能で、3日分を販売すると年間管理費(24万円)が相殺できる仕組みです」(西垣氏)
なぜ競合は消えていった? 廃業を招いた“赤字構造”の正体
SANUやNOT A HOTELなど「共同所有型」を主流とする新興プレーヤーが増える中、「会員権」を主軸とする理由を、西垣氏は「運営収支の黒字化を達成するため」だと話した。「当社では、『どれだけ販売するか』より『売却後の運営収支を黒字化できるか』を重要視しています。共同所有の場合、オーナーへの販売で建築資金を回収しようとすると売値が高額になります。すると、そのぶん利用料を安く抑えたり、宿泊可能日数を増やしたりする必要が出てきます。結果として、売却後の収支が赤字になりやすい。実際、この問題をクリアできずに廃業した競合が多くいました。
当社の場合、グランデは最大12名まで販売できますが、あえて8~9名に抑えて空白日をつくり、空白日を一般客に販売することで収益力を維持しています。レジデンスヴィラもまた、オーナーが使わない日は一般客に販売します。さらに、閑散期でも利用を促進するために、客室温泉や直営レストランにも注力しています」(西垣氏)
にしがきでは、主に関東と関西の首都圏から2時間以内でアクセスできるエリアに拠点を集中させている。車で30分の圏内に約50棟を集積させ、その近辺で直営レストランを運営。さまざまな拠点から客を呼び込むことで、客の満足度を向上させながら利益率向上にもつなげている。出張料理人や朝食を届けるサービスなどもあり、好評だという。
「こうした戦略により、1棟あたり最大で年間約4,000万円、平均で約2,000万円の売り上げがあります。これは、会員(オーナー)と一般客による利用料の合計です。近年、大手の会員制リゾートホテルでは1室あたりの口数を拡大していて、48口の施設もあります。1人当たりの価格は下がりますが、宿泊したい日に宿泊しづらくなる懸念はあるのかなと。当社では、会員やオーナーの満足度と利益をどちらも追求していきます」(西垣氏)
グランデ、およびレジデンスヴィラの利用者は、30~40代の富裕層が中心で、法人名義の契約が約8割を占める。福利厚生での利用も含め、家族での滞在が中心で、「家族との時間を確保して絆を深めたい」というニーズが見られるという。2世代、3世代での利用も増えている。同社では、2027年までに現在の約4倍となる400棟以上の建設を目指している。
どんな人が買っている?SANU CEOが語った、購入者のリアル
2019年に創業し、2021年秋に市場に参入したSANU。自然の中に「もうひとつの家」を持つ暮らしを提案し、首都圏からアクセスのいい山、湖、海などの近くに拠点を展開、2025年11月時点で35拠点231室まで増えた。手の届く価格帯でのサブスクから事業を開始した同社だが、現在は下図のとおりビジネスモデルが多角化している。売上ベースで現在の主力は、2024年2月から販売する共同所有型の「Co-Owners(コ・オーナーズ)」となる。価格は1口(年間12泊を30年間利用可能)400万円~で、国産の新車ほどの価格に設定しているそうだ。
「圧倒的に利用者数が多いのは、非会員の方に1泊単位で販売する『Stay(ステイ)』と法人向けのサブスク『for Business(フォービジネス)』、次いで個人の方へのサブスクです。これらのモデルで利用者の裾野を広げることで、『共同所有』や『1棟所有』へとステップアップする流れが起きています」(SANU CEO福島弦氏)
現状、サブスクから共同所有へ移行したのは約4割で、年代は40~50代が約65%、子育て世帯が約69%となる。サブスク・共同所有から1棟所有に移行しているのは、約6割にものぼる。SANUには、サブスク利用で支払った金額の50%が最大3年間蓄積され、Co-ownersの購入金額に充当される仕組みがあり、これも移行を後押ししているようだ。
サブスク、共同所有ともに好調で、平均7~8割の稼働率をキープしているというSANU。2025年2月から新たに都度利用のStayを開始したことで稼働率がより向上し、顧客の幅も広がったという。
「サブスクと所有だけでは直前に空いてしまう部屋があったので、そこに1泊単位のStayを導入することで、建築費用へのリターンの最大化につなげています。また、Stayは20代の利用者が約46%を占め、海外の方も多く利用されます。顧客の裾野を広げて、将来的なオーナーにつなげていきたい狙いもあります」(福島氏)
「ほかにも選択肢が多くある中で、顧客はなぜSANUを選ぶのか」という質問に対して、福島氏は3つのポイントを挙げた。
「最も大きいのは、『自然との暮らし』をど真ん中で提供していることだと思います。他社だと『会員制ホテル』に近い別荘が多いので、そこは分かりやすい差別化になっているかなと。2つ目は『拠点数』です。大手だとリゾートトラストさんのエクシブが26拠点、東急リゾーツ&ステイさんの東急ハーヴェストクラブが30拠点ありますが(2026年2月時点)、SANUは5年で35拠点まで増えました。3つ目は『個人でも手が届きやすい価格と機能』です。営業担当者いわく、この価格帯でこの体験を提供する別荘事業者はほかにいないそうです」(福島氏) 【次ページ】なぜ、ここまで急増?別荘所有率0.7%が示す“伸びしろ”
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