- 2026/07/26 07:10 掲載
日本に「優秀なマーケター」が少ないワケ…元楽天・堀内公博氏が出した結論とは
一橋大学院生時代の1999年にアルバイトとして当時社員20人の楽天で働き始め、その後11年半で1万人以上に拡大する超急成長を経営の中心で体験。2002年には、楽天グループ初のマーケティング組織を1人で立ち上げ、現在に至るグループのマーケティングメソッドをゼロから構築。2012年、国内大手ゲーム会社に移り、米国シリコンバレーで、海外モバイル事業の立ち上げ責任者として約3年間にわたり活動。その後2015年から5年半にわたり、グローバルのマーケティング部門責任者として、日本発のデジタル商品の世界展開に向けたマーケティングを牽引。同期間に50年以上の歴史を誇る同社の歴代最高益を複数回実現し、累計DL数7億回を越えるモバイルタイトルの創出など、マーケティングを通じた収益性改善に大きく貢献。2020年からは、医療福祉系人材紹介の最大手企業である、トライトのCMOとして、無名ながら国内有数のデジタルマーケティング予算を持つマーケティング組織の構築・改革に取り組み、同社のIPOおよび広告宣伝費比率の大幅な改善を実現。現在は、2024年に設立した、データドリブン・コンサルティングで、東証プライム上場企業からスタートアップ企業まで幅広くマーケティングおよび経営戦略のコンサルティングを行う。
前編はこちら(※この記事は中編です)
センスではない…「優れたマーケター」に必要な2つの条件
「優れたマーケター」には2つの要件が必要です。1つは、マーケティングの基本的なスキルです。「誰に、何を、いつ」伝えるかを意思決定するために、PDCAを精度高く高速回転させる能力です。
もう1つは、特定のファンクションの専門的なスキルと経験です。デジタル広告、CRM、インフルエンサーマーケティングなど専門化、高度化したマーケティングを高レベルで実行する能力です。
この2つを兼ね備えた優れたマーケターをどれだけ確保できるかで、マーケティング組織のパフォーマンスは最終的に決まります。
300人面接しても採れない…日本でマーケターが育たないワケ
優れたマーケターを確保するアプローチには、「採用」と「育成」があります。一般には、短期は「採用」、中長期は「育成」と考えられがちです。しかし、マーケティングでは、経験者の採用が必ずしも短期的な解決にはつながりません。日本には事業会社で即戦力になりうる優れたマーケターの絶対数があまりにも少ないからです。私が楽天の次に所属していた企業は、東証プライムに上場する老舗のゲーム会社でした。業界で名前を知らない人はほぼいない企業です。私はその会社のマーケティング部門責任者を5 年半務めました。慢性的なマーケター不足で、在任期間中ずっと経験者を中心に人材募集をしていました。少なくとも週1~2回のペースで面接をしていたので、300~400人程度は面接したことになります。書類選考はその数倍に上るはずです。結果、採用できたのは20人弱です(内定を出して断られた経験は数回程度)。つまり、15~20人に1人ぐらいしか内定を出せる人材に出会えなかったことになります。私の勤務していた企業の採用環境は、上場企業としては特別良くも悪くもなかったと認識しています。
これほど低い確率でしか採用できないのは、単純に良いマーケターが人材プールにいないからです。これには2つの理由があります。
1つは、多くの日本企業に専門的な人材を育成するナレッジと姿勢が足りていないからです。一般に、欧米企業に比べて日本企業は人材育成を重視する組織だと考えられています。しかし、私が見てきた多くの企業は、専門人材を本気で育成しようとはしていませんでした。専門人材を育成するには、当然教えることが必要です。しかし、日本企業の人材育成においては、「習うより、慣れろ」が主流です。
もう1つは、マーケターが高度な専門職だと認識されていないからです。マーケターは、高度なスキルを要する専門職です。しかし、多くの日本企業には、その認識がありません。ゼネラリストのスキルの一部と見なされています。人事ローテーションの過程で数年経験すればよい職種だと認識されています。しかし、現代の高度化されたマーケティングは、数年経験した程度のスキルでは対応できません。ここが、多くの企業に優れたマーケターが少ない根本的な原因です。
日本では「優れたマーケター」の人材プールが枯渇しています。そのため、経験者の採用は即効性のあるアプローチにはなりません。この前提に立つと、優れたマーケター人材はゼロから育成したほうが早い。これが私の結論です。 【次ページ】海外では珍しい…マーケティング未経験者が責任者になる日本
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