- 2026/07/26 07:10 掲載
日本に「優秀なマーケター」が少ないワケ…元楽天・堀内公博氏が出した結論とは(2/2)
海外では珍しい…マーケティング未経験者が責任者になる日本
日本に優れたマーケターが少ない理由は、マーケティングが専門職として位置づけられていない点にあります。専門職とは、専門的なトレーニングにより高度なスキルと経験を有する人材が担う職種です。医者、弁護士、会計士のような資格職、プログラマーのように特定のスキルが不可欠な職種、プロスポーツ選手などが該当します。
一方、日本ではマーケターはこの枠に位置づけられておらず、体系的なトレーニングが提供されていない企業がほとんどです。この環境では優れた人材の育成は難しくなります。
大手メディアの集まりなどで、CMOやマーケティング責任者と話す機会がありますが、「今年からマーケティング責任者になりました。まだ何もわからないので教えてください」と自己紹介されることがあります。
マーケティング未経験者が責任者になる。このような人事は海外ではほとんど見られません。日本では、マーケティングのキャリアを十分に積んでいない人材が責任者を担うケースが珍しくありません。
これは、マーケティングが専門職として認識されておらず、マネジメントも含めて誰でも担えると見なされているためです。
優れたマーケターを育成するには、マーケティングを専門職と位置づけ、中長期でトレーニングすることが前提となります。しかし、日本にはマーケターの育成を阻む構造的な障害があります。「ゼネラリスト志向」と「広告代理店の手厚いサービス」です。
「3年で異動」がマーケターを育てにくくしている
近年、「ジョブ型組織・採用」が注目されています。ジョブ型とは、業務や職種を定義し、必要なスキルを持つ人材を配置する考え方です。一方、日本企業の多くは、まず人を採用し仕事を割り当てるメンバーシップ型を採用してきました。この仕組みは高度経済成長期には合理的に機能してきましたが、デジタル化の進展により専門性や変化対応力が求められる現在では、課題も生じやすくなっています。
さらに、解雇のハードルが高い日本の雇用環境においては、メンバーシップ型組織は合理的な選択肢でした。ジョブローテーションによって人員を柔軟に配置し、広く対応できるゼネラリストを育てるためです。そのため、現在の管理職世代(40代~50代)の多くは、メンバーシップ型の環境でキャリアを積んできています。
メンバーシップ型の人事組織で専門職人材を育成するためにはどうすればいいのでしょうか? 結論をいうと、その専門職をジョブローテーションから外すことです。そうしないと、3~5年間1つの部署にいると、ローテーション時期となり、別の部署に異動になってしまいます。
現場で部分的なファンクションを任せられるマーケターの育成には、3年程度が必要です。戦略立案を含む総合的な判断を任せられるマーケターの育成には、少なくとも5~10年の期間は必要です。そのように考えると、ジョブローテーションをしている暇などありません。マーケティングを専門職として認識しているか、ジョブローテーションから外せないかを問い直すことが必要です。
「広告代理店に任せすぎ」が社内マーケター育成を阻む
一方で、ジョブローテーションのある日本企業でもマーケティングが回っているという反論はあるでしょう。その背景にあるのが、広告代理店の手厚いサポートです。これが、優れたマーケターの育成を阻害する2つ目の要因です。欧米ではマーケティングは基本的に自社で担いますが、日本では担当者にスキルがなくても、広告代理店が一連の業務を代行できてしまいます。たとえば、新商品を開発した企業が、発売時のプロモーションをマーケティング部門に依頼したとします。担当者は開発部からヒアリングして資料を作成し、それを広告代理店に渡して提案を受けます。複数社の提案を比較し、上司とともに選定した代理店に発注します。実施後の分析や報告も代理店が担い、その結果を基に次の施策が検討されます。
つまり、日本の広告代理店のサービスは、専門職であるマーケターが企業側で育成できない現実を前提に設計されているといえます。スキルと経験がなくても、数億円規模のキャンペーンをそれなりに実行できる手厚い支援です。問題は、それに慣れ過ぎている事業会社です。代理店に任せれば問題ないので、マーケティングをほとんどアウトソースしてしまっています。この状況で優秀なマーケターを育成できるでしょうか。
優秀なマーケターを育成するには、マーケティングをプロにしかできない専門職とみなし、育成するための仕組みやトレーニングを整える必要があるのです。
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