- 2026/08/20 07:00 掲載
ASI「人間の1万倍」は本当か…孫正義・アルトマンが語らない、AI進化“締切2030年”(2/3)
“限界”の正体「自己言及」とは何か
ロボットやAIは、決められた動きの再現は得意でも、自分の失敗に気付くことが非常に苦手です。実世界では小石も飛べば、ゴミの重さも詰まり方も毎回違う。あらゆる変化を予測して「こうなったら、こうしなさい」と与え続けるのは、考えない部下への場合分け指示と同じです。指示が増えればできることは増えますが、指示にない事態が起きれば、ロボットは「我関せず」と同じ動作を続けます。
一方、私たち生き物は、細胞1つをとっても、自分自身に「気付く」能力を備えています。自分について語り、自らを問い直すこの働きが「自己言及」です。人間の身体は、自己言及する数十兆もの細胞によって、高度に自分自身に気付くことを実現しています。
自己言及を身につけつつあるAI、それでも限界は2030年に
より鮮明になるのが、AIエージェントです。目標を与えれば、資料作成から日程調整までを自ら段取りして実行します。ところが多くの企業は、「下書きまではAIに、送信は人間が」と、最終承認だけは人間が握る必要があります(注7)。
なぜ越えられないのか。想定外の事態に気付き、前提そのものから問い直して設計し直すことが、原理的にできないからです──ゴミ収集ロボットと全く同じです。だから私たちは、最後の判断を手放せません。これこそが「自己言及」の欠如です。
あらかじめ正解を決めておけない環境を、無限定環境と呼びます。前例のない商談、定義のあいまいな新規事業、紛糾した会議──ビジネスの現場は無限定環境そのものです。マニュアルも過去の正解も効かない場でこそ、肌感覚と照らして判断を修正し続ける力=自己言及が、ものを言うのです。
AI業界も手をこまねいてはいません。ですが最新の主要アプローチを並べると、事情は驚くほど同じです。
[表2]AIを賢くする最新の四手法──そのすべてが「外から」の側にある
| 手法の名称 | 概要 | 問題点 |
| self-correction(自己修正)(注7) | 自分の答えを見直す | 「何を誤りとするか」の基準は外から与える |
| AIエージェント(注7) | 目標へ自ら段取りし実行 | 目標そのものは外から与えられる |
| world model(世界モデル)(注9) | 世界の構造を内部に持つ | 「何を写すべき世界か」は外から与える |
| long-term memory(長期記憶)(注3) | 記憶を保持し参照 | 「何を覚え何を忘れるか」の基準は外から |
いずれも「自己言及」を思わせる高度な手法ですが、すべて「前提を外から与える」という共通点を持ちます。前提そのものを内側から作り替える技術は、まだ生まれていません。実際、表1の2025年の物差しでは、最新モデルでも「長期記憶の保存」は0%です(注3)。
もちろん「今はできなくても時間の問題では」と感じる読者も多いでしょう。実際、2019年に定義された、AIが苦手とする「初めて見るパズルを解く」課題・ARCでさえ、2026年の最新AIモデルは高得点を取りました。ところが2026年3月、少し設定を変えたARC-AGI-3では、人間には容易い課題にもかかわらず、主要AIの正答率はそろって1%未満でした(注5)。点数では伸び続けるのに、ルールを自分で見つけることを問われた瞬間、崩れる──「外から与える」発想の、構造的な帰結です。
AI・生成AIのおすすめコンテンツ
AI・生成AIの関連コンテンツ
PR
PR
PR