- 2026/08/15 07:10 掲載
顧客の「欲しい」をうのみにしない…キーエンスで磨いた“言葉の裏”を探る営業術(2/3)
顧客の「本当の目的」を引き出す5つの深掘り
では、どうすればその「未来」に辿り着けるのか。答えはシンプルです。顧客の言葉を鵜呑みにせず、徹底的にヒアリングすること。顧客の「欲しい」という言葉の裏に隠された真の目的を探る旅に出るのです。最低でも以下の5つの視点でコミュニケーションを取り、顧客の課題を解き明かしてください。
- なぜ、それが必要なのか?(目的の確認)
- →「なぜ、電動ドリルが必要なのですか?」(「穴を開けたいからだ」という、第一階層の目的が明らかになる)
- なぜ、その手段(例:電動)であることが必須なのか?(手段の確認)
- →「なぜ手動ではなく、電動である必要があるのですか?」(「手軽にやりたい」「今のキリでは歯が立たない」といった、顧客が抱える不満や前提条件が見えてくる)
- 現状はどういう対策をしているのか?(現状の把握)
- →「ちなみに現在はどのような工具で、どのように対処されているのですか?」(「今は友人に借りている」「昔買ったものが壊れた」など購買に至るまでの背景=ストーリーが明らかになる)
- いつから、その課題に困っているのか?(緊急度の確認)
- →「その作業が必要になったのはいつ頃からですか?」(「昨日からだ」「いや、半年前からずっと悩んでいて……」から、課題の緊急度や重要度を測ることができる)
- それは本当に解決しなくてはいけない最優先課題なのか?(重要度の確認)
- →「その穴が開かないことで、具体的にどのようなお困りごとが……?」(ここで、核心に迫る「真の目的」が語られることが多い
注意していただきたいのは「なぜなぜ営業パーソン」にならないことです。若手の営業パーソンは、上司から「もっと深堀れ!」という指示を真に受け、短絡的に「なぜ」を顧客に連発してしまう傾向があります。しかし、忘れないでいただきたいのは相手が「人」であることです。AIであれば「なぜ」を連発しても取り乱すことなく何度でも回答してくれますが、人はそうはいきません。
何度も「なぜ」を問われ続けるのは不快なものです。詰められているような感覚にすら陥ります。ましてや、大半のケースでは、あなたと顧客は初対面。関係も構築できていない相手に「なぜ」を問われ続けられては心を閉ざしてしまいます。
あくまで対話の中でナチュラルな言い回しを意識しながら、ヒアリングを重ねていきましょう。
「電動ドリル」ではなく「子どもに勉強机を贈る未来」を売る
このヒアリングのプロセスを丁寧に行うと、顧客の本当の課題が見えてくることがあります。顧客:「電動ドリルが欲しい」これこそが、顧客が本当に求めていた「未来」です。この瞬間、あなたが提案すべきことは「電動ドリルのスペック比較」ではなくなります。この顧客の「真の目的」を達成するための最適なソリューションを考えるのです。
営業:「なぜ、ドリルが?」
顧客:「穴を開けたいんだ」
営業:「なぜ、電動で?」
顧客:「手軽に開けたいから、なんとなく電動だと思ったんだ」
営業:「その穴は、何のための穴でしょうか?」
顧客:「いや、実は……『今年受験の子供のために、手作りの勉強机をプレゼントしたかった』んだ」
もし、この父親が「立派な木材をすでに購入済みで、DIY経験も豊富だ」という方なら、軽量でリーズナブル、かつ静音性の高い電動ドリルが最適解かもしれません。
「受験生の集中を妨げないように」という新たな付加価値も提案できるでしょう。
しかし、もし「DIYはまったくの未経験で、木材もまだ家にない」という方であれば、どうでしょうか。その場合、ドリルを買うこと自体が目的(子供に机をプレゼントする)から遠ざかってしまいます。その場合の最適解は、もしかしたら「組み立て式の既製品の勉強机」かもしれません。 【次ページ】営業は「話す仕事」ではなく「聴く仕事」
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