- 2026/08/18 06:10 掲載
AIで時短したのになぜ疲れる?脳科学者に聞く「脳疲労」、思考を手放さないAIの使い方(3/3)
便利だからこそ陥る「ゴンドラ猫」の罠…あなたは大丈夫?
これは、1963年に心理学者のヘルドとハインが幼若期の子猫を使って行った実験だ。子猫を、自分で歩く能動群と、その動きに連動するゴンドラ状のかごに乗せられ受動的に運ばれる群に分け、両者でほぼ対応した視覚入力を経験させた。
その結果、能動群では視覚に導かれた行動が発達したが、受動群では、段差を避ける、足を適切な位置に置く、といった一部の視覚誘導行動に障害が見られたという。
「この研究は、自分の運動と感覚入力の対応が、視覚と運動の発達に重要であることを示しています」(毛内氏)
AIもまた、答えを示し、失敗を避け、最短距離で目的地まで運んでくれる存在になり得る。この実験をそのままAI利用へ当てはめることはできないが、自分で問いを立て、試し、結果を確かめる経験を残すことの大切さを考える手がかりにはなる。
「AI時代だからこそ、私たちは自分がゴンドラ猫になっていないか、あるいは誰かをゴンドラ猫にしようとしていないか、自問自答しなければならないのではないでしょうか」(毛内氏)
ゴンドラ猫にならないために、毛内氏は「能動的に新しいことにチャレンジすることが大切だ」と述べる。
「脳には柔らかい性質(可塑性)があり、この可塑性は生涯にわたって残りますが、その現れ方や程度は、年齢や経験によって変わります。新しいことを学ぶ経験は、既存の考え方や行動を見直す機会になります。失敗を避けることだけを目指さず、小さく試してみることが大切です」(毛内氏)
AI時代に「脳を鍛える」最強の習慣
「AI時代に必要な『読解力』と『作文能力』を養ううえでも、『読書』は有効です。手軽に家で読めて、ある程度安いのもよいところです」(毛内氏)
読書は動画や音声メディアとは異なり、自分のペースで立ち止まり、戻り、考え直すことのできる能動的な行為でもある。ただし、「読書を単なる情報収集の手段にしてしまうのは、ちょっともったいない」と毛内氏はいう。
「恋愛や家族関係、冒険、歴史、ミステリーなど、本を読めば時間や空間を超えてさまざまな体験ができます。本を通じて異なる時代や立場を想像することは、自分の中にある世界モデルを更新する材料を増やし、他者の考えを想像する練習にもなります」(毛内氏)
そこで毛内氏が勧めるのが、1冊の本を時間をかけて読む「精読」だ。
いまは「ファスト読書」のように効率を求めたり、「多読」のように数を競ったりする人も少なくない。それも読書の1つの形だが、毛内氏は、AI時代だからこそ「精読する」「人といっしょに読む」「議論する」といった“贅沢な読書”を試してほしいと述べる。
「大切なことは、『精神的な自由』を確保し、行使することです。AIが提示するものを受け入れるのもいいですが、AIにもあらがえる自由さを持ちうるのが脳の特権です。そのためにも、読書を楽しんでほしいですね」(毛内氏)
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