- 2026/09/01 06:10 掲載
川村元気氏と東大・稲見教授が語る…決定的なクリエイティブ生む「カオス」なぜ重要?(2/2)
川村氏が意識する「プロの条件」とは
――参加した学生の皆さんは今後、自分の生み出したものの価値を世に問うていくことになると思いますが、その際、どう勝ち筋を見出していくべきだとお考えですか。川村氏:僕がカオスキャンプの間に一番言ったのが、「プロになりたいのならば」という言葉かもしれません。
つまり、自由に自分ひとりで好きなものを作るなら別に社会と接続しなくたっていい。小説でも絵でもロボットでも自由に創作するということは、とても豊かな行為だと思います。なにか好きなものがある、というのはものづくりの原点だとも思います。ただ、カオスキャンプに来ている学生は自分の表現や技術でプロになりたい人たちでした。プロになりたいとはどういうことか、というと自分が作っているものが世の中だったり社会だったりと接続して初めてプロになるよねという意味です。
プロになった場合、たとえば映画だったら観客がどう受け取るのかを考えなくてはならない。でも観客の予想通りにA→B→Cとストーリーが進んでも誰も驚かないから、やはりカオスは必要。ロジックとカオスをあわせもって表現するのがプロだよね、という話をずっとしていました。
稲見氏:私はこの点に関しては、カオスキャンプで学べたことが2つあると思っています。まず1つ目が「好き」を価値に変えていくという過程です。これは研究者でも大切で、自分が好きなものを作っているだけでも「研究家」にはなれますが、プロの「研究者」としてはやっていけません。研究しているものが、世の中にどういう価値を持つかを説明していく。それができて初めてプロになれる。そのトレーニング、スキルを積むことができたのではないかなと思っています。
そして2つ目。今回参加した学生は、みんな多かれ少なかれ、しかも複数回失敗しています。最近は大学の学生実験でも、できるだけ失敗しないように安全に実験をすることを優先するケースも多いのですが、カオスキャンプは、失敗前提で全員が複数回失敗している。研究者だって、100発100中で論文が世に出ることはまったくない。活躍している研究者は、大抵非常に多く失敗している人です。でも、その失敗でその都度へこみ続けるのではなく、切り替えながらどんどん続ける。それをカオスキャンプで体験できたと思います。
川村氏流の「世界で戦う」視点とは
川村氏:先ほど稲見先生もおっしゃっていましたが、まず「好きなこと」が大事です。好きな物語の展開、好きなキャラクターデザイン、好きなグラフィックなどが明確であることが非常に大切。そしてもう1つ大事なのが、自分の嫌なことです。嫌なこと、怖いこと、うんざりしていること。これを自分の中の実体験として捕まえること。その感覚は、実は世界中の人につながっているのです。
個人の好き嫌いは、世界中の集合的無意識に繋がっている可能性がある。それをきちんとした技術をもって、サービスやプロダクト、ストーリーやアートで表現できたら、世界に届くことになります。
――カオスキャンプはこの先、2期生を迎えることになると思います。今後のキャンプの在り方やこれからの創造教育についてお二人はどうお考えですか。
川村氏:学生たちは「ハック」が上手で、早くもカオスキャンプの1期生が「カオキャンハック講座」を開催しています。カオスキャンプの選抜に通るためにはこうしたらいいよ、のような(笑)。ただ、そうした「ハック」的なものが面白くないとおもって作ったのが「カオスキャンプ」なので、こちらも「望むところだ」という感覚があります。
僕たちが本当に欲しいのは、カオスの原初の部分、アイデアだったり「これが好きだ」という気持ちをどのように社会とつなげるかという部分なので、ハックされないように我々も変わっていかなければいけない。そして、その行為自体が、ヒットやクリエイティブを生む構造そのものなのではないかと信じて僕は今まで仕事に取り組んできました。そうした視点を学生たちにも提供し続けるのが、今回のカオスキャンプにおける僕の仕事だと思っていますし、そこから面白い才能やチームが出てくると信じています。
稲見氏:カオスであり続けるためには、やはりメンバーもどんどんカオティックにしていく必要があるのではと考えています。カオスキャンプは最初、東京大学を中心に近隣の大学の学生も対象に始めましたが、今後その対象を日本全国に広げたり、もしくは東アジアの人たちに広げるといったことです。
実際に、カオスキャンプの話を香港や台湾、シンガポールなどで話すと、非常に反応が良いです。そうしたより広い範囲の人々もうまく巻き込んでいくと、今度はアジアとして新しいムーブメントも出せるのではないかなという気がしています。
人材管理・育成・HRMのおすすめコンテンツ
PR
PR
PR