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  • 2013/03/06 掲載

限界に近づくCIOの一人二役、カギはITマネジメントとITアーキテクチャの改革

全社最適のための役割は?

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ビジネスとITとの関係がより緊密になってきている。一方で個々の事業部門が強くなれば、企業自身も強くなるという時代は既に終焉を迎えた。今後は企業全体、グループ全体でグローバルに連携し、全社最適を見据えてITを活用していくことが、将来のイノベーション創出に繋がっていくとされる。その時に求められるCIOの役割とは一体どのようなものなのか、また実際の取り組みとしてどんな活動が求められるのか。鍵を握るのは、ITマネジメントとITアーキテクチャの改革だ。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

全体最適の実現を阻害する3つの要因

 2004年から野村総合研究所(以下、NRI)が1年ごとにユーザー企業に対して実施しているIT活用実態調査によれば、“ITに係わる全社最適の実現”という項目が毎年回答者のほぼ65%以上を占め、常に最上位に位置しているという。

photo
(出典:野村総合研究所)


 この背景にあるのは、冒頭でも少し触れたように、事業部門個々の強化が全社強化に繋がる時代は終わり、グループ全体でグローバルに連携していく必要性が出てきたことだ。そのためIT部門に寄せられる案件も、各事業部門やグループ企業を連携していくための基盤やシェアード会社を立ち上げて、間接部門を集約するためのIT基盤を構築するといったことなどで、いわば経営レベルの課題に対するITの活用だ。

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(出典:野村総合研究所)


 実際のIT環境も、すべて手作りではなく、パッケージやSaaSなど外部のサービスもうまく組み合わせて利用しながら、システム全体として価値を生み出していくことが求められている。

 こうした理想を語るのはたやすいが、ITマネジメントコンサルティング部 グループマネジャーの大川内幸雄氏は、「全社最適を目指そうとする時には、まだまだ大きな課題が山積している」と指摘する。

 そもそも全社的なIT戦略が抜け落ちており、ヒト/モノ/カネといったリソースの活用においても、経営層はITのコスト削減には興味を示すものの、それ以上には踏み込もうとしない。また個々のシステムが連携せず、孤立化している状況があるにも関わらず、実効性のある手立てもない。

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(出典:野村総合研究所)


「こうした現状から抜け出せない原因は3つある。第一にCIOの一人二役に限界が近づいてきていること、第二にCIOをサポートし、全社最適を牽引する人材が不足していること、第三にITアーキテクチャモデルが存在していないことだ。」(大川内氏)

 1点目の「一人二役の限界」とは、今のCIOには“経営とITの橋渡し”と“IT部門と情報システムの管理/掌握”という2つの役割を1人が兼任することに限界を迎えているということだ。前者にはリーダーシップや折衝力といったビジネスリーダーの資質が求められ、後者には実務能力や緻密さといった管理者の資質が求められる。しかし両者は異なるものであり、本来なら別々の人間に割り当てられるべきものだ。

「対極にあるような2つの資質をこれまで一人のCIOに求め続けていた。10年前ならまだしも、昨今はこの2つの役割が非常に高度化してきている。両者を抱え込んだまま、CIOが全社最適に取り組むことにはもう限界が来ている。」(大川内氏)

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(出典:野村総合研究所)


 2点目の「不足しているIT人材」とは、NRIの調査によると、全社のIT戦略立案者、ITを活用した業務改革を企画/立案するITアナリスト、そして実際の業務改革を牽引するITビジネスリーダーがトップ3だ。

画像
(出典:野村総合研究所)


 3点目の「ITアーキテクチャモデルの不在」については、建築でいえば建物自体ではなく都市の設計に相当する部分が無い中で企業はシステムを作り続けており、なかなか経営課題を解決するためのシステムには結び付いていかないという現状のことである。

「昔はビジネスモデルも大きく変わらなかったが、今では常に変化していく。このような環境下ではIT全体の設計図ともいうべきITアーキテクチャモデルがなければ、全社最適を目指すためのシステムを構築していくことは難しいだろう。」(大川内氏)

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(出典:野村総合研究所)


【次ページ】全体最適を目指すための2つの改革

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