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  • 2013/12/24

米倉誠一郎教授が語るオープン・イノベーション、インソーシングかアウトソーシングか

アベノミクスで流れが変わった日本経済。しかし、政府頼みの“成長戦略”では真の経済成長は見込めないと、一橋大学の米倉誠一郎教授は警鐘を鳴らす。では何をすればよいのか。そのヒントが「オープン・イノベーション」だ。ソーシャルなどの進展に伴い、いま情報コストを含めて外部取引コストが激減している。こうした中で、企業は組織外の力をどの程度取り込むべきなのか、また逆に組織内にどの程度抱えておくべきなのか。11月13日に開催されたセミナー「ソーシャル、クラウド、マルチデバイス活用で変わるワークスタイル」で、米倉氏が語った。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

日本人のイノベーションに対する意識と実態の乖離

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一橋大学
イノベーション研究センター 教授
米倉 誠一郎 氏
 失われた20年間の日本経済を検証すると、1,000兆円もの財政出動によって、景気はそれなりに良くなった。銀行も立ち直り、金利も低く、政府の金融対策もそれほど間違っていなかった。しかし日本の成長率はどうかというと、1980年に17位だった一人当たりのGDPは、1995年から2000年まで世界第3位に踊りでたものの、それから下がり続けて17位まで落ち込んだ。

 一人当たりのGDPが30年前まで戻ってしまった原因は何だろうか? 米倉氏は「その1つは、日本企業が生産性を向上せず、イノベーション投資を怠ってきたからだ」と指摘する。

 統計でみると世界で最も働いているのは韓国だ。2010年における年間の労働時間は2193時間でダントツ。しかし一人当たりGDPは34位と、あまり効率的な働き方ではなさそうだ。労働時間が第2位の米国は1787時間で14位。3位の日本は1728時間で17位。いずれも効率的な働き方とはいえないようだ。

 ところがオランダを見ると、日本より400時間(50日間)も労働時間が少ないのに、一人当たりGDPは世界10位となっている。オランダは小さな国だが、農業の生産では大国の米国に次ぐ第2位だ。これを見ると日本も生産性を上げて、労働時間を短縮するワークスタイルにシフトしていく必要性がある。その際にキーポイントになるが「イノベーション」だ。

 もう1つ興味深い調査結果がある。GEが世界25市場3100人のイノベーション戦略担当者(シニアエクゼクテイブ)に訊いたものだ。「日本では、会社経営にとってイノベーションが重要と肯定的に考える人が80%いる一方、まったく重要でないというのが20%もいる」(米倉氏)という。他国が軒並み90%以上も肯定的なのに対し、日本は異質な結果だ。問題なのは、調査対象がイノベーション担当役員であること。米倉氏は「イノベーション担当がイノベーションを否定することはまったく矛盾したこと。社会全体でみても日本の若い世代は、イノベーションに対する熱意がほとんどない」と嘆く。

 実際にイノベーションを牽引している国を見ると、米国(35%)、ドイツ(15%)、中国(12%)、日本(11%)という順位だ。さらにイノベーション環境の整備では、日本は第3位という結果。「面白い点は、日本では担当者がイノベーションに否定的なのに、他国からは評価されていること」(米倉氏)。このギャップは一体どこから来るのだろう? 米倉氏は「まず日本と世界との間にイノベーションに関する認識の違いがある可能性。もう1つは日本が自信を喪失しており、実態を見誤っていること。さらに言えば、そもそもこのイノベーション担当者が不適格であることが考えられる」と説明する。


イノベーションは単なる「技術革新」ではなく、ニュー・コンビネーション

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 とはいえ、イノベーション担当者が何も考えていないというわけではなさそうだ。たとえば、彼らは新しい技術やビジネスモデルには過剰に反応する。その一方で、イノベーションをもたらす環境・文化づくりや、イノベーション活動への予算配分、資金を集めには、あまり興味を示さない。

「つまり日本の担当者は、スティーブ・ジョブズのような突出した天才でも生まれない限り、イノベーションは起きていないと考えている。しかし、体系的に投資をしていけば、いずれイノベーションは生まれるという新しいロジックが必要だ」(米倉氏)

 ではイノベーションとは一体何なのか。イノベーションを語るうえで欠かせないのがシュンペーターだ。彼は「馬車は何台つないでも機関車にはならない」と述べ、<現状の経済均衡を創造的に破壊し、新たな経済発展を導くものがイノベーションである>とした。ところが日本のイノベーションは、いまだに「技術革新」としてしか考えられていないのが実情だ。米倉氏は「イノベーションは、技術革新に留まらず、もっと広いもの」と述べ、有名な話を紹介した。

 今から40年以上も前に、イエール大学の経済学部で、「全米150都市のすべてに翌日までに宅配するには何台の飛行機が必要か?」という意欲的なレポートを書いた学生がいた。普通に掛け合わせて計算すると2万3000台にもなってしまう。

「しかし、その学生は149台の飛行機があれば実現できると主張した。1つの都市に夜中12時までに荷物を集め、そこから自分の都市の荷物をピックアップして、翌朝までに戻ればよいと。この発想はネットワークのハブ&スポークスの考え方だ。当時、大学の担当教授は、彼のレポートを酷評し、Cの評点を付けた。しかし、この発想をもとに7年後に起業したのが、あの『FedEx』の生みの親である、フレデリック・スミス君だったのである」(米倉氏)

 これは技術革新かと問われれば、やはり違う。だが間違いなくイノベーションと呼べる。飛行機や飛行場、そして「ハブ&スポークス」という概念を組み合わせ、まったく新しいビジネスモデルをつくり上げたからだ。イノベーションは単なる技術革新だけではない。新しい製品・生産方式・市場・原料・組織といった要素を組み合わせて実現できるニュー・コンビネーションということなのだ。

【次ページ】厳しいグローバル競争を乗り越えるオープン・イノベーション戦略

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