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  • 2014/07/17 掲載

医療機器の貿易赤字は7,000億円、IT活用や改正薬事法は是正の突破口となるか?

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安倍政権が掲げる日本の成長戦略では、医療機器が成長産業の一つと位置づけられている。とりわけ、経済産業省は、ITなどを活用した医療機器・システムの研究開発事業に力を入れ、2014年度予算で35億円を新たに投じる。一方、医療機器産業の海外進出に向けた環境整備の一環として、今秋に改正薬事法(医薬品医療機器等法)が施行される。医療用ソフトの規制対象化への対応、規制外医療用ソフトの業界自主ルール作りも進められている。

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

野澤 正毅:1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在、ビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。

日本の医療機器の貿易収支は7,000億円の赤字

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経済産業省
商務情報政策局 ヘルスケア産業課
医療・福祉機器産業室
室長
土屋 博史 氏
 医療機器の世界市場は、人口の高齢化や新興国での医療需要拡大を受け、年約8%の伸び率を維持しているという。2018年には市場規模が4,500億米ドルを超えるとの予測もあり、そのうち、日本市場は336億米ドルを占めると見られている。

 日本の医療機器産業は、2012年には約2・6兆円の市場規模となり、年平均2・8%の伸び率となっている。景気の影響を受けにくいため、安定した市場であり、また、今後も医療費の増加が見込まれるため、成長が期待されている。金額ベースの内訳は、治療機器(カテーテル、ペースメーカーなど)が53%、診断機器(CT、MRI、内視鏡など)が26%、その他(衛生材料、歯科材料など)が20%となっており、治療機器は、年平均伸び率も4・0%と高い。

 ところが、日本の医療機器産業には、大きな問題がある。「第5回医療機器開発・製造展」で、6月25日の特別講演に登壇した土屋博史・経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課医療・福祉機器産業室長は、「医療機器市場は現在、約7,000億円の輸入超過になっている。血液検査機器やCTといった体外で用いる比較的低リスクの医療機器は国際競争力が高く、貿易黒字になっているが、コンタクトレンズや人工関節、ステントといった体内に入れるようなハイリスクの医療機器は輸入に大きく依存している」と指摘。

 しかし、「医療機器はニッチな領域も多いので、さまざまなアプローチで世界市場の攻略は可能」とも述べ、期待感を示した。

2020年ころまでに医療機器の輸出額を倍増させる

 安倍政権の成長戦略では、「戦略市場創造プラン」のテーマとして「国民の『健康寿命』の延伸」が挙げられている。

 その中で、医療分野の研究開発の中核を担う「日本医療研究開発機構」の創設、革新的な研究開発の推進、医療の国際展開などに経産省がタッチしているという。

 また、オールジャパンでの医療機器開発という方針が打ち出され、2020年ごろまでに「医療機器の輸出額を2011年の2倍(約1兆円)にする」「革新的医療機器を5種類以上実用化する」「国内医療機器市場を3・2兆円まで拡大する」という具体的目標が掲げられた。それに伴い、文部科学省、厚生労働省、経産省が連携した医療機器の開発・支援体制の整備が急がれている。

 経産省の医療機器産業振興政策の方向性として、土屋氏は以下の5つを挙げた。

  1. 医工連携による医療機器開発
  2. 世界最先端の医療機器開発
  3. 医療機器の開発や審査の円滑化に資する評価指標、および開発ガイドラインの策定
  4. 法規制対象外となる「医療用ソフト」にかかわる業界自主ルール検討への協力
  5. 医療機器とサービスの一体的な海外展開

 このうち、1.は産業界と医療機関の連携によって、安全性や操作性の向上といった医療現場のニーズに応える医療機器を開発・実用化するもの。高度な“ものづくり”技術を持つ中小企業やベンチャー企業の新規参入も促す。

 「医工連携事業化推進事業」の2014年度予算として、30億5,000万円を新規獲得している。医工連携による医療機器の事業化ポ-タルサイト「MEDIC」では、事業紹介コンテンツや新規参入業者向けコンテンツに加え、2014年度は支援機関向けコンテンツの拡充を図るという。

 2.は、日本が強みを持つ診断技術やロボット技術、再生医療技術、ITなどを活用、産官学が連携して、最先端の診断・治療システムなどの開発を国家プロジェクトとして推進するというもの。「これによって、日本の医療機器産業の競争力強化を図ると同時に、国民の健康寿命の延伸を実現する」(土屋氏)。「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」の2014年度予算として、35億円を新規獲得している。

 3.は、経産省が開発ガイドラインの策定、厚労省が評価指標の策定を分担する。4.は、法規制対象となる医療用ソフトを管掌する厚労省と連携して検討する。5.は、アジア、ロシア、中東など新興国の医療インフラ需要の高まりに応じて、日本の医療サービスと医療機器を一体化させたシステムを官民で海外展開し、医療機器の輸出増大につなげるもの。「医療機器・サービス国際化推進事業」の2014年度予算として、10億円を確保している。

【次ページ】未来医療を実現する4つの医療機器事業とは?改正薬事法とは?

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