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  • 2014/07/28 掲載

医療IT関係者の関心が高まる薬事法改正 医療機器のガラパゴス化懸念は払拭できるか

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今秋から施行される薬事法改正が、医療ITの関係者の間で、俄然関心が高まっている。同法が医療機器関連の「単体プログラム」も新たな規制対象とするからだ。オムロンヘルスケア学術技術部担当部長の鹿妻洋之氏は、「医療用データを加工して、新たな意味づけをするソフトは規制対象となりうる」と述べ、「ソフトの機能追加やバージョンアップの柔軟性が損なわれる懸念があるので、実情に応じた法規制が行われるようにIT業界は働きかけを続けるべきだ」と主張した。

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

野澤 正毅:1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在、ビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。

医療機器の機能が、通信機能を介して外部へ

 薬事法改正が2013年11月に公布され、新法はその名も「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」と改められることになった。

 医療ITの関係者の間では俄然、この新法に関心が高まっている。なぜなら、これまでの旧薬事法では規制対象ではなかった医療機器関連の単体プログラムが、新法では規制対象になるからだ。

 厚生労働科学研究費補助金事業「医療機器に関する単体プログラムの薬事規制のあり方に関する研究」のメンバーでもある鹿妻洋之・オムロンヘルスケア学術技術部担当部長は、「第5回医療機器開発・製造展」で6月25日に講演し、「単体プログラムが規制対象となった背景には、ITの発展に伴う医療機器の変化もある。かつては医療機器の中で完結していた機能が、今では通信機能を介して外部展開されるようになった」と説明した。

 たとえば、医療機器のコンピューターは今、パソコンやスマートフォンとつなげて、端末で医療機器の保管データを解析・表示したり、医療機器を操作したりしているのが現状だ。さらに、クラウドサービスを使って外部データベースで情報を共有化したり、アウトソーシングでデータ解析を依頼したりすることも可能になっている。

 鹿妻氏は、「機能分離が進んでいくと、将来的には、医療機器は簡単なメモリーと制御機能を搭載しただけの、統一インターフェースを持つインテリジェントセンサーになる可能性もある」と指摘する。

 もはや、医療機器は、本体とモバイルなどの関連機器を統合したシステムとしてとらえるほうが妥当となっているという。多くの場合、医療機器では、通信機能は付帯機能と位置づけられていた。しかし、医療機器と通信機能が一体化しているのであれば、通信機能も医療機器であると考えられ、効果・効能を明確にする必要が生じてくるというわけだ。

欧米では単体プログラムも規制対象

 単体プログラムが規制対象となった背景としては、外部環境の変化も見逃せない。鹿妻氏は、次の三つを主な理由として挙げた。

 一つめは、医療機器が“有体物(形のある物)”という既成概念からの脱却。旧薬事法では、有体物でなければ、医療機器として承認を得ることはできなかった。そのため、機器本体(ハード)とプログラム(ソフト)は必ずセットになっている。

 ところが、これには難点もあった。「ユーザー側としては、ソフトを更新しようとすると、ハードもセットで購入せざるを得ない。ベンダー側としても、ソフトの改良だけであってもハードも一緒に再承認を受けなければならないので、手間がかかる。単体プログラムが規制対象になれば、ソフトを切り離して取り扱えるようになる」(鹿妻氏)ので、融通が利くわけだ。

 二つめは、海外の規制基準との不整合が拡大していること。日本の場合、旧薬事法では機器本体の構成品であるソフト(標準搭載、あるいはオプション)は機器本体として規定されていたが、単独製品として流通し、パソコンなどの汎用ハードへのインストールを意図した「医療用アプリケーションソフト」は、有体物ではないことから規制対象と規定していなかった。

 一方、欧米では、医療用アプリケーションソフトをすでに規制対象としている。日本と欧米で医療機器の規制基準が異なると、医療政策上でも不都合が生じやすい。このことは、単体プログラムを規制対象とする動機づけとしては大きかっただろう。

 三つめは、モバイルメディカル機器の国際競争が激化していること。海外では、ネットを活用した新しい医療機器・サービスが続々と登場している。

 たとえば、スマホに電極をつけ、そこを両手で持つと心電図が取れるサービスが実現している。検眼鏡とスマホ用アダプターを組み合わせ、撮影した眼底画像をアプリで管理できるサービスもあるという。「こうした医療機器・サービスを日本で事業展開しようとしても、日本の規制基準が参入障壁となってしまうケースが考えられる。一方、日本の医療機器業界が、医療機器・サービスのグローバル化に乗り遅れてしまう懸念もある」(鹿妻氏)というわけだ。

【次ページ】適切な法規制に向け、IT業界は何をすべきか?

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