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  • 2015/06/03 掲載

佐渡島 庸平氏が講談社を辞めて感じたこと 「新たなルールを生み出した人が勝つ時代」

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2002年に講談社に入社し、バガボンドやドラゴン桜、働きマンなど数々の人気漫画を手掛けてきた敏腕編集者 佐渡島 庸平氏。講談社を退社し、エージェント会社「コルク」を設立していく過程で気付いた、ある時代の変化とは何だったのか。ライフイズテックが主催するイベント「Edu×Tech Fes 2015」に登壇した佐渡島氏が語った。
(執筆:編集部 時田 信太朗)

講談社を退社後した佐渡島氏は、なぜワクワクしているのか

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コルク 代表取締役社長 佐渡島 庸平氏

 大学卒業後、講談社で10年にわたって漫画の編集に関わってきた佐渡島氏は、会社を辞める前にある問題意識を抱えていた。それは、日本の作品は面白いが、実は世界でほとんど読まれていない、ということだ。

「今ヒットしている作品が話題になることはあるけれども、50年後100年後に作品が残っていることはなかなか無い。(日本の作品を)世界に持っていきたいという気持ち、長く残していきたいと思って作った会社がコルクです。

 もしもワインを後世に残し、世界中に運ぼうと思うと、良質なコルクで栓をする必要があります。それと同じように、もしも作家の人が作品を生み出し、それを世界中に運び、後世に残そう。そんな風に思ったら、コルクという会社が関わった方がいい。そんな風に思ってもらえるように付けた社名です」

 そんな佐渡島氏は今、自身が置かれている状況に「ワクワクしている」という。

「今は100年に1度どころじゃない大きな変化のタイミングで、この5、10年は最高に楽しい時代。戦後の焼け野原から日本を作ったみたいな、もう1回何かを作り上げれる、そんな時代じゃないかと感じています」

あらゆる産業で起こるルールチェンジに気付けるか?

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 佐渡島氏が感じている時代の変化とはなにか。それは、インターネットとスマホの登場によって、あらゆる産業でルールのチェンジが起きている点だ。佐渡島氏は、自らが関わっている出版業界を挙げて次のように説明した。

「講談社、小学館、集英社、KADOKAWAなどさまざまな出版社がありますが、それぞれの会社が勝つかどうかは、面白い作品を作るか、マーケティングを上手くやるか、あるいはより安く作るかという形で効率化していくか(で決まる)。たとえば、後から参入して、より勉強して資金力がある方が勝てたりするっていう産業です」

 いまや、この流れが変わりつつある。佐渡島氏はその例として「全巻読破アプリ」を挙げた。このアプリは、毎日30分、無料で漫画を読めるサービスだ。

「ハマっちゃって続きを読みたい人っていうのは、時間を買ってもらう。時間を買うと続きが読める。今までは本を読もうと思ったら、本を購入するしかなかったんです。それが時間を買うっていう仕組みに変わっている。これまで産業の中で最も効率的な人が勝っていたのが、今は新しいルールを生み出した人っていうのが勝つようになっている」

 本を読むためには、本を買わなくてもよい。時間を買う場合もあれば、広告から課金する場合もある。

 いまやビジネスモデルを作ることがすべての産業で求められている。佐渡島氏は、「全く同じ産業にいながら、まったく違う利益のあげ方をするのがこれからの時代だ」と主張した。

 もし講談社を辞めていなかったら、佐渡島氏はこの時代の変化に気付けなかったという。「国や時代が変わろうとしたとき、吹いている風はかすかな風。そのかすかな風を、講談社にいた最後の1年間は、この会社の中で守られて仕事をしてたら感じられないのではないか」と、同氏は当時を振り返った。

「自分で会社をやるようになり、山のように人に会いました。2年間で5、6000人の人に会って、いろんな話を聞いたんです。さらに、自分がやっている漫画に関して取材をするなかで『あ、これはとてつもなくワクワクする、変わろうとしてる時代だ』と思ったんです」

 本を出したら、単体で黒字しないといけないのが出版社のビジネスだが、コルクのビジネスはそれとは少し異なる。作家に才能を感じて2、30年付き合うと決めれば、本を名刺代わりに無料で配布することもあるという。

「コルクでは、作家の人と一緒に新しい漫画を生み出して、漫画家や小説家の人達が作品作りに集中できるような仕組みを作りたいと思っています。今は、作家を育てるっていうのが仕事なんです。羽賀翔一(コルクが契約している作家)という人のファンを増やそうっていうのが、僕らの一番の目的で、羽賀翔一の本を売るっていうのは、実は二の次なんです。

 作家の育成の仕方が変わりつつあります。ファンクラブのようなものを作家に作れば、その作家が作品を発表するのを、ネット上で常に待っている(人がいる)。定期購読する人達が数千人いるっていう状況を作って、定期的に作家が発表していくことができるのではないか。ファン同士がコミュニティを作るようなことを、プログラムの力によってやりたいなと思ってるんです」

【次ページ】自らのプロダクトで世の中を変えられる時代

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