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  • 2015/12/25 掲載

予算執行の承認スピードを8倍に!ヨーグルトのダノンが取り組んだBPMとは

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ヨーグルト製品のビオやデンシアなどを製造/販売する仏ダノンは、1919年に設立された多国籍の食品製造企業で、現在世界120か国に進出している。日本国内でも30年以上前から日本法人であるダノンジャパンがビジネスを展開してきているが、これまで“時間のかかる煩雑な紙のワークフロー”に頭を悩ませていたという。そうした中、CEOからの指令でIT部門のトップが取り組んだのが、BPM(ビジネスプロセス・マネジメント)による改革プロジェクトだ。

紙のワークフローは非効率なだけでなく、事業リスクも生んでいた

photo
ダノンジャパン
Head of IS/IT CBS Japan/Korea
マシュー・パージュ氏
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 これまでダノンジャパンでは、紙を回覧することで各種の稟議処理を行っていた。しかし、その完了までには長い時間がかかっており、たとえば顧客の声を受けた商品改善策の決裁は、処理の完了までに56日間、また予算執行の承認決裁も50日間という期間を要していた。

 「第10回 BPMフォーラム 2015」で登壇したダノンジャパン Head of IS/IT CBS Japan/Koreaのマシュー・パージュ氏は、「こうした問題が数々あったのだが、CEOから要するに“紙が多すぎる”というフィードバックがあり、我々はBPMプロジェクトへの取り組みを開始した」とその背景を説明する。

 まず従来の決裁フローの過程では、書類の空いたスペースにコメントが書き込まれ、空きスペースが無くなるとポストイットが何枚も貼られていくという状況が発生していた。こうした書類が机の上に溜まっていくことで、CEOは読むだけでも多大な労力が必要となり、大きなストレスになっていたという。

 また決裁文書が今どこにあり、どんな進捗なのか、あるいは、稟議の途中でコピーが取られて、誰が持っている文書が正式なのかも、分からなくなってしまっていた。

「これは、単に効率が悪いというだけでなく、従来のワークフローは事業へのリスクにもなっているということ。文書は手作業で書かれていたので誤りも起き、貼られたポストイットが途中で剥がれてしまうこともあった。そうなると誤った情報や欠落した情報がある中で、起案後、相当の日数を経て意思決定が行われることになる。正しい決断が下されない恐れがあった」

改善対象を2つの承認プロセスに絞り、約6か月間でプロジェクトを完了

 そこでパージュ氏がCEOから直接指令を受け、“ダノンジャパン内の意思決定プロセスを改善し、かつ電子ワークフローツールに新たなプロセスを実装する”というBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)プロジェクトに乗り出した。そのプロジェクトの名称が“KUROHUNE(=黒船)”だ。

 プロジェクトの目的は、第一に効率性を上げること。そのために決裁プロセスを標準化し、不要なステップを廃止する。

「ここではまず“プロセスを改善する”という考え方が重要だった。それによって稟議にかかる時間の短縮を目指した」

 またオンラインで申請案件にアクセスできるようにして決裁状況の見える化を図ることや、正式なドキュメントは電子ファイルの1つだけにすることも、プロセスの要件として掲げた。

「申請の決裁状況を見えるようにすることは、大きな目的だった。今では各ステップで、具体的な担当者の名前が記載され、どの部署で、どんなアクションが行われているのかが確認できるようになっている。またワークフローはYes、Noを伝えるだけでなく、各担当者が詳細についてコメントできるようになっており、他の関係者のコメントも閲覧できるので、コメントが重複することもない」

 このKUROHUNEプロジェクトは、その対象を先の商品改善策と予算執行のための2つのワークフローに絞り、約6か月で完了した。その結果、商品改善策の承認プロセスは56日から7日へ、予算執行の承認プロセスも50日から9日へと劇的に短縮した。

ビジネスプロセスの改革は“プロセスの再設計”から着手する

 パージュ氏は「新たなビジネスプロセスを導入するには、2つの方法があるだろう」と説明する。その1つめがツールの導入から始めるやり方だ。

画像
標準化への道筋
(出典:ダノンジャパン)


「もちろん、ツールの活用で紙は無くせる。しかし現行のプロセスを見直す前にこれをやってしまうと、“ツールは便利だが、プロセスが煩雑で使えない”となってしまう。ここからプロセスの改善をしようと思っても、多くの作業が発生するし、現場の協力も得られにくい。開発を一からやり直すことになり、ユーザーへのトレーニングもやり直し、ということになりかねず、決して良い方法ではない」

 そしてもう1つのやり方が、プロセスの再設計から始める方法だ。

「我々が採ったのがこの方法で、プロジェクトチームが集まって、現状のプロセスをすべて見直すところから始めた。どのステップが必要で、どのステップが不要なのか。それを踏まえて新しいプロセスを作り、紙を電子化するためにはどうすればいいのかを考えていく。これによって、先のような大きな成功を収めることができた」

 現在パージュ氏は、日本と韓国のITを担当しているが、「今回の成果をテンプレートにして、これらの国で新たなプロジェクトを始める時には、これを適用することで、コストを押さえ、データを標準化することができる。グローバルな観点から考えることが重要と考えている」という。

【次ページ】プロジェクトを成功に導いた3つの重要要因
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