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  • 2016/08/26 掲載

バイオ研究と「メーカーズ」のつながりは、人類に何をもたらすか

#MakerFaireTokyo2016 レポート

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近年、飛躍的に進展しているバイオテクノロジーの世界。3Dプリンタやカッティングマシンなど多様な工作機械を備えた施設「ファブラボ」にも、個人が手元で実験しながら可能性を探れる「バイオスペース」が生まれはじめている。バイオファブリケーション(バイオファブ)を実践するファブラボ浜松と山口情報芸術センターが、自らモノづくりを学べるMITの遠隔講義プログラム「How To Grow Almost Anything」、バイオハックを紹介する「BioHack Academy」など、バイオ研究とメーカーズの関わりについて紹介した。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。


バイオ研究が可能な「バイオスペース」が世界で立ち上がる

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ファブラボ浜松
代表
竹村真人 氏
 いま、世界中でバイオテクノロジーの研究を進めるメーカーズが増えている。「Maker Faire Tokyo 2016」に登壇したファブラボ浜松の竹村真人 氏は、国内で先駆けてファブラボ内にバイオスペースをつくった人物のひとりだ。

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山口情報芸術センター(YCAM)
R&Dディレクター
伊藤隆之 氏
 竹村氏の「現在なぜ、そういったファブラボの動きが活発化しているのか?」という問いに答えたのが、山口情報芸術センター(以下、YCAM)の伊藤隆之 氏だ。同氏はまず、世界で広がるバイオファブリケーション(バイオファブ)の潮流について解説した。YCAMでは、メディア・テクノロジーを用いた新しい表現の探求を軸に活動しているが、センター内にバイオスペースを設けて、バイオ研究の環境を整備しているところだ。

 こういったバイオスペースを世界で初めて立ち上げたのが、ニューヨークの「Genspace」だ。Genspaceは、大学や企業の研究機関ではなく、民間としてバイオスペースを2010年末にオープンしたことで有名になった。

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バイオファブを民間として世界で初めて2010年末に立ち上げた「Genspace」

「Genspaceは当初、フランケンシュタインのような怪物をつくるのではないか? と懸念する声もあったが、ユニークなプロジェクトが立ち上がり、徐々に成果が出て、いまでは一般に認知されている。この動きは欧州やアジアにも波及した。我々を含めて、国内でも市民が使えるバイオスペース付きのラボが登場している」(伊藤氏)

バイオテクノロジーとメーカーズをつなぐネットワーク

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 もともとファブラボは世界中の施設とネットワークを組んで交流しているが、バイオテクノロジーの世界も同様に、海外とのネットワークが重要になっているそうだ。

 さまざまな遺伝子パーツを組み合わせ、大腸菌などの生物に新たな機能を持たせる合成生物学(synthetic biology)の国際大会「iGEM」や、オープンで安全なバイオ科学・生物学・生物工学を探求するアマチュア研究者のサイト「DIYBIO」、あるいはバイオ実験機材をDIYで製作し、それらの情報を共有する「HACKTERIA.ORG」といったサイトを通じて、国際交流が広がっている。

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山口情報芸術センター(YCAM)
研究員
津田和俊 氏
 YCAMの津田和俊 氏は「最近では、特にこのようなパーソナルなバイオテクノロジーの動きと、ファブラボのパーソナルなモノづくり精神が結びつき始めている」と語る。

 ファブラボは、MITのニール・ガーシェンフェルド教授による「How Yo Make (Almost) Anything」という有名な遠隔講義が契機になってスタートしたものだ。ここでは、ほとんどのモノを自分でつくる方法を教えているが、電子工作や機械工作だけでなく、昨年から講義がバイオまで広がり、「How to Grow Almost Anything」が開校された。

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ファブラボの産みの親であるMITのニール・ガーシェンフェルド教授による遠隔講義は、いまやバイオまで広がり「How to Grow Almost Anything」に発展している

「このカリキュラムでは、17週間にわたり、さまざまなトピックスのバイオテクノロジーを学べる。昨年20か所のファブラボが本講義に連動し、国内でもファブラボ鎌倉と浜松、山口情報芸術センターが参加した。もともとバイオの専門家は少ないので、どのように技術を学んでいくべきか、既存の大学とも協力しながら課題を解決している」(津田氏)

【次ページ】バイオ研究の倫理的問題への向き合い方

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