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  • 2016/11/09 掲載

主なIoTプラットフォーム提供ベンダーはどこか?企業が進める2つの課題

野村総合研究所 亀津 敦氏が解説

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センサー小型化やクラウドをはじめとするネットワーク技術の進展により、さまざまな「モノ」がインターネットに接続するIoT(モノのインターネット)の時代が到来した。しかし、IoTは適用範囲が広く、プレイヤーが複雑に入り乱れているため、その全体像をつかみにくくさせている。そこで野村総合研究所 デジタルビジネス開発部 上級研究員の亀津 敦氏がIoTの基礎と現状、IoTをめぐる2つの側面、IoTプラットフォーム提供ベンダーなどについてまとめて解説した。
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今やあらゆる企業がIoTに取り組んでいる

IoTをめぐる競争の現状

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 技術進化により、実世界を計測するセンサーはより小型化、低価格化している。また、インターネット接続環境も整備され、データ処理能力は向上の一途をたどり、モノがインターネットにつながることは当たり前のことになっている。

 一方、データを処理するコンピューターはどんどん極小化し、Wi-Fi接続やクラウド接続機能を備え、データを処理している。これにより、センサーはさまざまなデータを取得できるようになった。温度や傾きといった定量的なデータが代表的なものだが、たとえば、インテルはメガネサイズのデバイスで、フルHDの動画をクラウドにアップロードし、画像認識に使えるような仕組みを実現している。

 また、クラウド環境に目を移せば、Amazon、マイクロソフト、IBMなどベンダー各社が「IoTクラウド」基盤をリリースしている。

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モノがインターネットにつながりはじめた3つの要因

 こうしたIoT化により、コンシューマー向けに、さまざまな「スマートプロダクト」が登場している。代表的なのが「Amazonダッシュボタン」だ。これは米国でリリースされたサービスで、Amazon利用者にボタン大の使い捨てデバイスを配布し、壁に貼り付けたデバイスのボタンを押すだけでAmazonへの注文が可能になるものだ。

 ボタンは、インターネット接続機能を有し、個々の日用品のブランドごとにプログラムされている。利用者が、洗剤などの日用品の買い替えタイミングで、壁に貼られたダッシュボタンを押すと、その品物の注文が完了する仕組みだ。」

「商品発注に関するモノとプログラムをつなげる仕組みの一例だ。Amazonダッシュは、今後はたとえば、浄水器などのデバイス本体にWi-Fi接続機能を備え、フィルターの交換時期がきたら自動的にAmazonに発注をかけるようなサービスに進化していく」(亀津氏)

「IoTで何が起きているのか」を知るには活用分野別に整理する

 インダストリー分野では、センサーデータを活用した「モノづくりのスマート化」が進んでいる。代表的なのが、ドイツが政府主導で推進する「インダストリー4.0」だ。インダストリー4.0では、工場内のセンサーの配置、作業手順などを定めた「リファレンスアーキテクチャモデル」というプロトコルの標準化が進んでいる。

 IoTで何が起きているか、何が起きつつあるかを捉えるためには、IoTの活用分野別に整理することが有効だ。まずは、インダストリー分野では、「作り手のためのIoT」の価値は、インダストリー4.0をはじめとするセンサーデータを活用していかにモノづくりを最適化し、コストを削減するかにある。

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IoTで何が起こっているのか

 そして、コンシューマー分野では「お客さま向けのサービスとしてのIoT」の価値は、センサーデータを活用して、いかにサービスの付加価値を高めるかにある。

IoTの2つの側面、コネクティビティの拡大とモノのデジタル化

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野村総合研究所 デジタルビジネス開発部 上級研究員 亀津 敦 氏
 IoTには、センサーがインターネットにつながることによる「コネクティビティの拡大」と「モノのデジタル化の進展」の2つの側面ある。

 「コネクティビティの拡大」とは、接続されるモノの数、種類が急激に増えることだ。たとえば、上述したような浄水器がWi-Fiにつながるといったことで、もちろんこれは1社だけにとどまらない、組織を超えてつながっていくことを意味する。

 たとえば、日本でも起きている事例が「バーチャル・パワープラント(仮想発電所)」だ。発電所といえば、今までは巨大な発電施設で集中的に発電を担っていたが、これを、小規模事業者のデータを組み合わせて、巨大で最適化された「仮想の発電所」が構築できないかというプロジェクトだ。

「従来の発電所やメガソーラーなどの再生可能エネルギーを扱う発電所、家庭における太陽電池発電やEVで発電した電気を家庭に戻す仕組みなど、IoTを中核として、電力供給に関わるさまざまなプレイヤーがつながり、組織を超えた巨大なネットワークについての実証実験が始まっている」(亀津氏)

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日本でも始まった「バーチャル・パワープラント(仮想発電所)」

デジタル・ツインは仮想空間上に現実の世界をシミュレーションすること

 「デジタル化の進展」とは、モノから上がってくるデータの質が変わってきていることを意味する。データ量も増え、データが表現できる領域がよりリアルに可視化されやすくなってきている。

 たとえば、「デジタル・ツイン」の実現があげられる。これはセンサーから上がってくるさまざまなな機器のデータから、仮想空間上に現実の世界をシミュレーションすることだ。

「シーメンスでは、工場内のロボットの配置とラインの稼働状況をデータとして可視化し、工場の稼働状況をリアルタイムにコンピューター上にシミュレーションモデルとして構築している。これにより、機器の制御やメンテナンスなどの予兆を分析し、最適な稼働、生産性の向上を実現しようとしている」(亀津氏)

 モノがネットワークにつながって機械が管理されるだけでなく、ゆくゆくは工場がまるまるデジタル上に再現される時代が到来する。

 また、ヨーロッパ有数の電力会社「e-on」では、再生可能エネルギー中心の発電所が、GEのIoTプラットフォーム「Predix」を活用し、センサーを内蔵した風力発電機の内部の状況をデジタル上でシミュレーションしている。

「発電機1台1台のセンサーからデータが上げられ、どの部品が、いつ交換時期となるかが可視化される。風力発電の場合、複数の風力発電機が発電所全体で影響を及ぼし合っている。風の方向、風車の羽のピッチを変えることで気流の流れが変わり、他の風車に影響をおよぼす場合があるからだ」(亀津氏)

 羽の角度をどれだけ変えれば、発電量はどう変わるか、力学的なシミュレーションが可能になった結果、全体として4%の発電量向上と20%の利益率向上を実現した。

工場をつなげるスマートファクトリー構想

 IoTにより、システムだけではなく、ビジネスもつながっていく。工場やサプライチェーン全体の作業人員の計画なども含めてシミュレーションが可能になり、生産をスマート化する「スマートファクトリー」の実現だ。

「従来のM2Mは、工場内でモノがつながる、自動管理ができるというレイヤーの話だった。工場を出て、遠隔地や他のサプライチェーンとつながることで、ビジネスの幅が広がっていくのがIoTだ」(亀津氏)

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IoTの進展により、ビジネスが連携し新たなエコシステムが生まれる

 たとえば、家電見本市CESで発表された「IoT冷蔵庫」では、サムスン製の冷蔵庫はセンサーを内蔵し、冷蔵庫の中身に何があって、足りない食材が何かを可視化、冷蔵庫のタッチパネル、もしくはスマホから注文できるようになっている。決済はマスターカードで、発送はECサイトから行われる仕組みだ。

 また、グーグル傘下のNestはネットワーク火災報知器で保険会社と提携して稼働状況のデータを保険会社に提供。Nestを利用する家庭には保険料を5%割引するサービスを提供している。

「今後は、家庭用だけでなく、建機や工場の機械など、ネットワークでモニタされているモノは、保険量を割引するB2B向けサービスが検討されている。このように、センサーデータを活用することで異なる事業者がつながり、エコシステムができ、新しいサービスが生まれるようになる」(亀津氏)

主なIoTプラットフォーム提供ベンダーとは

 企業がIoTを推進していくための基盤については、センサーデータを蓄積、活用する基盤「IoTプラットフォーム」がAmazon、マイクロソフト、IBMなどのITベンダーや、GE、ボッシュなどの製造業から出てきており、自社でインフラを個別開発する必要がなくなり、推進をより容易にしている。

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IoTプラットフォームの登場

 また、製造業のソフトウェア・サービス化も大きなトレンドといえる。たとえば、日立製作所は「Train as a Service」を掲げ、モノとしての車両だけでなく、正確な車両運行を独自価値として「車両運行システム」を売っている。

 そして、IoT時代には、組織もデータによる付加価値を重視する方向に転換していく必要がある。代表的なのがGEだ。GEはハードウェアを作る会社から、ソフトウェアカンパニーへの転換を掲げ、「GEデジタル」を設立、2020年までにソフトウェアカンパニーのトップ10に入ることを目標に、組織や人のマインドを大幅に転換しようとチャレンジしている。

企業がIoTを進める上での2つの課題

 では、企業がIoTを進める上での課題は何か。1つ目の課題は、無数のセンサーからリアルタイムに集まる膨大なデータを、誰が、どのように分析するかという課題だ。

 データサイエンティストのようにデータに強いだけでなく、ハードウェアの挙動を熟知した人材でないと、適切な判断ができない。大量データから洞察を得る課題については、AIの適用も検討されており、今後も大きなテーマとなる。

 2つ目の課題はセキュリティだ。無数のデバイスがインターネットに接続することは、不正アクセスやサイバー攻撃のリスクが高まることを意味する。

「IoTによって、サイバー空間と物理世界はより強固に融合する。つまり、サイバー空間上の攻撃の結果、現実世界の物理的な機器にまで影響が及ぶ点が、従来のサイバーセキュリティと異なる点だ」(亀津氏)

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