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  • 2017/04/24 掲載

なぜインテルはドローンビジネスに注目するのか? 本社副社長のアニール・ナンデュリ氏が解説

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いまやIoTによって、あらゆるデバイスが接続され、膨大なデータが創出されている。インターネットに接続されるものは、PCやモバイル端末だけではない。「ロボットやドローン、UAV(無人航空機)もデバイスと見ることができ、インターネットにつながる時代だ。これらはインテリジェントな機能を獲得し、リアルタイムの判断や安全性を実現する“空飛ぶコンピューター”になるだろう」と語るのは、インテル 副社長/統括責任者 アニール・ナンデュリ氏だ。同氏は、インテルが開発したドローンを公開し、なぜ同社がドローンに注目しているのか、その戦略について解説した。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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インテル 副社長/統括責任者 アニール・ナンデュリ氏

インテルのドローン4戦略とは何か?

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 ドローンで地上を調査したり、マッピングするとき、1回のフライトでも100GBのデータを収集することになる。複数のセンサーがフュージョンされ、リアルタイムなプロセスでのデータ処理が求められる。

 ナンデュリ氏は「将来は、ドローンにも5Gネットワークがバックボーンとして使われるだろう。収集されたデータはクラウド上に伝送され、詳しい分析が行われる。その処理には演算力の高いCPUが要求される。高容量なストレージも重要だ。このように考えると、ドローンはインテルの戦略のスコープに入ってくるものだ」と強調する。

 データの世界だけを見ても、2020年までに爆発的な増加が予想されている。その頃には平均的なネットユーザーでも1日に1.5GBのトラフィックを使い、自動運転車のデータは4TB、スマートファクトリーは1PB、ストリーミングサービスは750PBものデータを流すことになるという。こういった爆発的なデータに対する管理もインテルの戦略のひとつだ。

 いまドローン自体も大変伸びているマーケットだ。グローバルでは、将来的に何十億ドルものチャンスが期待される。ドローン市場を発展させるには、技術的な革新だけでなく、コラボレーションによるエコシステムや、航空ルールと法整備も必要だ。

 ナンデュリ氏は「このような状況で、インテルは、“INGREDIENTS”“LIGHT SHOWS”“COMMERCIAL SYSTEMS”“PARTNER WITH ECOSYSTEM”という4つを基軸に、ドローンに対するリーダーシップを発揮しようとしている」と語る。

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インテルの戦略。「INGREDIENTS」「LIGHT SHOWS」「COMMERCIAL SYSTEMS」「PARTNER WITH ECOSYSTEM」という4つを基軸に展開。

 まずは「INGREDIENTS」だ。これはドローン向けのパーツや開発キットなどの提供だ。2つ目の「LIGHT SHOWS」は、何百ものドローンの動きによりアニメーションをつくる芸術で、新しいエンターテインメントを支援する。3つ目の「COMMERCIAL SYSTEMS」は、実用ベースのアプリケーション展開だ。インフラを調査するドローンなどが考えられる。4つ目の「PARTNER WITH ECOSYSTEM」は、ドローンのエコシステムに対し、同社のノウハウを提供する協力体制を整えるという。

レディー・ガガとも共演したインテルのドローン

 1つ目のINGREDIENTSにおいて、インテルはドローンに関わるパーツや開発キットを提供している。いまでも研究・開発の現場では、ドローンのリファレンスシステムを自身の手でつくることが多く、フライトコントローラー(FC)などの多くのパーツを組み合わせ、ドローンにアプリケーションを搭載している。

「そこで、ユーザーが新しいアプリケーションを開発して、すぐにドローンを飛ばせるようにするために、インテルでは新しいプラットフォーム“AERO PLATFORM FOR UAV”を提供している」(ナンデュリ氏)

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インテルのUAV開発用の新しいプラットフォーム
“AERO PLATFORM FOR UAV”。

 AERO PLATFORM FOR UAVは、クアッドコアのAtomプロセッサーやFPGA(フレキシブルI/O)、Linux OSを採用したUAV専用の開発キットだ。

 この機体はクアッドコプターで、オープンソースのDronecode(PX4)対応のFCや、リアルセンスカメラなどを搭載している。

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講演で紹介されたAERO PLATFORM FOR UAVのクアッドコプター。Dronecode(PX4)対応のFCや、リアルセンスカメラなどを搭載。

 このキットを利用し、同社のRealSenseテクノロジーで画像や奥行きを認識したり、飛行時の衝突回避なども行える。また、もし航空管理を行いたければ、安全な空域地図を提供する「AirMap」も利用できるという。

 次にインテルは2つ目の柱として、LIGHT SHOWSを支援している。ヨーロッパや、北米・南米などの上空で、100機以上のドローンを同時に飛ばして、光のショーを開催。空をスクリーンにドローンで光のアニメーションを描くためには、すべての機体をプラグミングし、複数のオペレーターがコントロールしなければならない。

 ナンデュリ氏は「しかし、それではシステムの準備に時間がかかりすぎるし、操作も大変だ。そこでプロセスを自動化し、簡単にアニメーションを実現できるライトショー専用ドローンシステム“Shooting Star”を開発した。このシステムにより、ドイツのショーでは500機のドローンを制御し、ギネス記録にも登録された」と自信を見せる。



 本システムのクアッドコプターは、サイズ384×384×93㎜、重量が280gと小型軽量で、バレーボールよりも軽く、チャージも簡単に行えることが特徴だ。本体の底部には、夜空で輝くLEDが搭載されている。

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ライトショー専用ドローンシステム「Shooting Star」のクアッドコプター。重量は280gと軽量で、本体底部にLEDを搭載。

 すでにフロリダのディズニーランドや、スーパーボールのハーフタイムショーのレディー・ガガのステージなどでも、シンクロする光のライブパフォーマンスを行い、多くの聴衆を魅了している。



「ライトショーは単なる花火ではなく、空に光の絵を描く芸術だ。マーケティングのためのロゴにもなる。何かストーリー性を持たせた演出も行える。Shooting Starの能力を広げることで、クリエーションからショーまでのプロセスを完全にアニメーション化できるようになるだろう」(ナンデュリ氏)

【次ページ】ドローン戦略のカギを握るのはエコシステム

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