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  • 2017/08/28 掲載

交渉で負ける日本人、スタンフォード流交渉術なら勝てるのか

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日本人は「交渉」が苦手だ。相手の気持ちを“忖度”することが美徳とされるオトナの社会においては、自分の要求を明確にする交渉は「がめつい」と思われがちだ。『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎刊)の著者の佐藤智恵氏は「世の中には交渉しないことによって損をしている人が多い」と指摘する。交渉をするべきか否か。交渉を上手く進める手立てはあるのだろうか。今回は、交渉のメッカである米国で話題の「スタンフォード流交渉術」を参考に、交渉慣れしていない日本人に知ってほしい交渉戦略を考察する。

中森 勇人

中森 勇人


中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。

公式サイト  http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/

photo
交渉下手な日本人も米国に学べば交渉に強くなれるのか?
(© scb13 – Fotolia)



友好モードで交渉を進める4つのステップ

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 テレビのワイドショーでよく見かける質屋での買取りシーン。「このエルメスのバーキンをいくらで買い取っていただけますか?」の問いに対し、「120万円でいかがでしょう」と答える店員。客は「もっと高くなりませんか、ほとんど新品ですけど」と返すか、「では120万円でお願いします」となる。前者は、交渉をして高い金額を勝ち取りたい人。後者はいくらでもいいから買い取ってほしい人だ。

 佐藤さんの著書『スタンフォードでいちばん人気の授業』によると、元々人間は利益から得られる満足より、同額の損失から得られる苦痛の方が大きくなる習性がり、交渉しない選択の方が得だと思いがちなのだという。さらにアジア人には金銭至上主義は品格がないと考える文化がある。なので、要求の厳しい人だとみられたくないという思考の強いため、交渉を避けたがる傾向が強い。

 では、話を優位に進める交渉術とは、どのようなものなのか。
スタンフォード大学経営大学院のマーガレット・ニール教授はその戦術を4段階の順序に分けて解説する。

①交渉すべきかどうかを算定する
②情報を集めて準備する
③相手の意見を聞く
④パッケージで提案する


 ニール教授が実践した学部長とのやり取りを例にとる。ニール教授は学部長から「今年から6科目を教えてください」打診された。6科目は多すぎると思ったニール教授は、何とかして5科目を維持する交渉を検討した。

 まずは①の「算定」。ここでは、交渉をした場合としなかった場合とのプラスマイナスを算定するのだが、この場合「想定以上の結果が得られるのか」「交渉をしなかったときに払う犠牲を享受できるのか」がポイントになる。もし、交渉に失敗しても「6科目教えてください」と言われるだけなので、何のマイナス材料も無いことを確認した。

 次に②の「準備」である。交渉前に「この交渉で何を得たいのか」「どうしても得たいものは何か」「第一希望が通らなかった場合の代替案は何か」「どういった案件を並べて交渉するのか」「お互いがWin-Win(双方が利益を得ること)になる着地点はどこか」などを明確にしたうえで相手側の情報を収集し、その内容を精査していく。

 ニール教授は「どんな情報を共有すればよいか」「学部長がいちばん気にしているのは何か」の2点に着目。一つ目については、学部長が学生に教えるトータル時間を守れば、科目数にこだわらないこと、二つ目については彼女が毎回1コマ3時間の授業に対して3時間半かけて教えている事実を、学部長が知らないことを突き止めた。そのうえで、毎回授業時間を延長させていることにフォーカスした。 そこで、定時には終わらずに時間がのびている点について伝え、3×6科目ではなく、3.5時間×5科目で打診する作戦を組み立てた。

 続いて、③の「相手の話を聞く」こと。相手が知るべき情報を自分から共有するのと同時に、相手に質問をして意見を傾聴する。会社や組織では、自分だけが知っている情報が多く存在するので、これを共有するだけで、問題が解決する場合も多い。 ニール教授は交渉のセオリーである「ちょっと助けていただきたいのですが…」と切り出し、戦闘モードを回避。相手の意見を尊重する姿勢を示し、有効的なムードを生み出した。

 最後は④の「パッケージでの提案」。複数の案件を俎上に乗せることでトレードしやすくなり、1つの案件だけでは思いもよらなかったような解決策を導くことも可能になる。会話のコツとしては「もし~したら」や「こうしましょう」を多用していく。

 ニール教授は「1コマ3時間のコースを6科目教えるのではなく、今教えているコースを3時間から3時間半に延長し、3時間半のコースを5科目教えるのはいかがでしょうか。そのかわりに、今教えているコースを3時間から3時間半に延長します」 と提案した。

 この交渉4つの順序を実行した結果、他の教員が6科目を教える中、ニール教授だけが5科目を教えるという結果を得たのだという。

【次ページ】3つの交渉パターンを知り3点を明確化すれば交渉は有利に進む

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