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  • 2017/08/18 掲載

パワーレンジャーは「最強のチームワーク」へのヒントだ

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特撮テレビドラマシリーズ「スーパー戦隊シリーズ」の米国版ローカライズ作品としてスタートした「パワーレンジャー」。映画版リブート作品が今夏、公開された。主人公たち5人組に関し、人種、性別構成のバランスに配慮したということで話題となった本作だが、企業社会における、リーダーシップ、ダイバーシティにも通じる組織論的テーマを内包した作品だ。

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

予定通りに進まないプロジェクトを“前に”進めるための理論「プロジェクト工学」提唱者。HRビジネス向けSaaSのカスタマーサクセスに取り組むかたわら、オピニオン発信、ワークショップ、セミナー等の活動を精力的に行っている。大小あわせて100を超えるプロジェクトの経験を踏まえつつ、設計学、軍事学、認知科学、マネジメント理論などさまざまな学問領域を参照し、研鑽を積んでいる。自らに課しているミッションは「世界で一番わかりやすくて、実際に使えるプロジェクト推進フレームワーク」を構築すること。 1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。最新著書「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」が好評発売中。 プロフィール:https://peraichi.com/landing_pages/view/yoheigoto

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日本発の戦隊ものが凱旋、そこから「最強のチームワーク」を学ぶことができる
(c)2017 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.


懐かしの「ジュウレンジャー」はいつの間にか海を渡っていた

 子ども向けのヒーロー番組が、まさか海を渡って米国で人気を獲得していたことは日本ではあまり知られていないことであるが、今夏公開された映画「パワーレンジャー」の元作品、「マイティ・モーフィン・パワーレンジャー」は日本の作品「ジュウレンジャー」の北米版作品で、1993年に初公開して以降、ものすごい人気を獲得してきたコンテンツであった。

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ローカライズされたとはいえ、「戦隊もの」の骨格は変わらない
(c)2017 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.


 本作は、主人公の5人組の男女比を3:2に調整し、白人、黒人、アジア系、ヒスパニック系と多様な人間を取り揃えているということで、「ポリティカル・コレクトネスに配慮した今どきらしい作品」だ、ということでも話題となった。

 実はこれは、過去のテレビシリーズから踏襲してきた伝統的手法だそうだ。その理由は、本作の配信エリアが全世界を対象としており、すべてのエリアでグッズ販売を成功させたいというマーケティング上の要請だった。この20年で、人種的な問題に対して、製作者の感覚が大いに更新されたのは確かなようである。

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主人公5人の男女比は3:2、白人、黒人、アジア系、ヒスパニック系と多様な人間が揃っている
(c)2017 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.


 近年、アニメや特撮、SF作品を中心に、特撮技術を新たにリメイクする「リブートもの」が日米問わず大流行しているが、本作も、その流れの一環で実現した企画なのだろう。元々、戦隊モノは幼児から小学校低学年をターゲットとしたものだったが、リブートものの企画上、むしろ主たるターゲットに大人が含まれる点を考慮して、「パワーレンジャー」では物語の骨格を「いまどきのハイティーンがかかえる葛藤をできるだけリアルに描く」という方向に定めている。

 まず、怪我をしてスター選手の座から転げ落ち、父親からの期待を裏切ることになってしまったお先真っ暗な白人アメフト選手が主人公である。続いて、恋愛問題をきっかけに、友達とのSNSトラブルをかかえる白人女子。コミュニケーション障害を抱えるアフリカ系男子。

 トレーラーハウスに住み、母子家庭で孤独に母の病とつきあい続けるアジア系男子。複雑な精神的葛藤を抱え、凡庸な教育方針を押し付ける両親とまったく折り合うことができないヒスパニック系女子。

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パワーレンジャーの一人ひとりに葛藤がある
(c)2017 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.


 本家「ニチアサ」もびっくりのディープな設定である。ここだけ取り出してみると、「金八先生」とか「中学生日記」とか、そういうジャンルのお話じゃないかという感じである。

個々の力を発揮させるために必要なリーダーシップとは

 日本では「スクールカースト」が問題視されているが、米国にも似たような問題がある。米国では、「長身」、「筋肉質」、「スポーツ万能」、「容姿端麗」、「セックスアピール」を備える男子・女子を「ジョック」と呼び、頂点とする学校社会の序列化傾向がある。

 日米問わず、学園もの作品では、これが物語のモチーフとなったり、キャラクターの属性として反映されたりするのが最近のお決まりである。

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主人公のレッドはアメフト選手であり、花形のクォーター・バックだ
(c)2017 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.


 本作品の主人公はアメフト選手であり、かつクォーター・バック。となれば、米国における社会の王道的存在であり、花形的存在である。多くの親が自らの子に望む道であり、これぞ正しい道なのだという価値観である。これの対極にあるのが「ナード」、いわゆるオタクだ。

 「ネタバレ防止」の観点で、あまり具体的に映画の内容に言及してしまうことは遠慮せねばならないが、本作における眼目とは、「ナード」の寄せ集め集団がいかにチームワークを発揮できるか、ということである。

 昨今、マウンティングという言葉が非常に流行しているが、「ナード」は互いに「ナード」であるからといって、無条件に仲良くするというわけではなく、集団が小集団に分割されたら、今度はそこで序列化闘争が発生する。

 この「パワーレンジャー」という映画作品は、そのあたりの機微の描き方が非常に秀逸であった。

 会社の若手メンバーを束ねる立場のリーダー職にある人々が、この作品をその観点で観ると面白いのではないかと思う。きっと、「個々人でさまざまな問題をかかえる人々が集まって、そこで組織の力を発揮させるためには、どのようなリーダーシップが必要か」というテーマが見いだせるはずだ。

【次ページ】チームワークに必要なのは「序列化」ではなく「心理的安全性」

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