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  • 2019/07/02 掲載

種苗業界の世界ランキング:世界1位モンサントが買収、バイオメジャーの時代が到来へ

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平昌五輪に出場した日本カーリング女子が「もぐもぐタイム」に韓国産イチゴを食べたことで注目を浴びた種苗業界に異変が起きている。遺伝子組み換えやゲノム編集など、技術の変化が起こったことで開発費が高騰。かつて世界1位だったモンサントがバイエルに買収されるなど、業界再編も進んでいるのだ。そこで今回は種苗とビジネスの関係、日本の立ち位置、業界ランキングトップ10を紹介する。
執筆:小野 尚志 構成:アカデメイア 羽住 一圭

執筆:小野 尚志 構成:アカデメイア 羽住 一圭

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種苗業界はどうなっているのか?
(Photo/Getty Images)

種苗がビジネスになった理由

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 より良い特性を持った作物を作り出すため、品種同士を掛け合わせることは今でこそ当たり前となっている。しかし実のところ、この手法にはわずか100年ほどの歴史しかない。

 20世紀初頭、植物の遺伝法則が理論として確立された。これにより科学的な農業研究が可能となると、世界中に官製の農業試験場が作られるようになった。農業生産は都市化・工業化によって増え続ける人口を支えねばならず、また各種工業の原材料としても農作物が求められていたため、より収穫量が多く、病害虫耐性や気候耐性などに優れた品種の開発は急務であった。

 また、新たな品種開発は莫大な投資を要求する一方で、作成された品種は簡単に増やすことができ、商品としての価値がほとんどなかった。このような背景が存在したため、当初の種子の研究・開発は公共主体で行われることになった。

 では、種苗の商品価値はどのようにして生まれたのだろうか。品種の作成が一巡すると、品種同士を掛け合わせることで、雑種第一代(F1)と呼ばれるより優れた雑種を生むことができるようになった。F1は両親の有用な特性を持ち、生育が早くより強い個体に育つ。だが、F1は一代限りでその優れた特性を失ってしまうので、農家は種まきの度にF1種子を買う必要が出てきた。これはビジネスになり得る大きな価値を持っていた。品種開発の営利性が高まったことで、20世紀中頃から後半にかけて、国は種苗開発を民間にバトンタッチして行くことになるのである。

時代は「種苗メーカー」から「バイオメジャー」へ

  その後、種苗業界は掛け合わせの技術を有する大小の「種苗メーカー」により、数十年間に渡ってけん引されてきた。しかし、21世紀を前に、遺伝子組み換え、ゲノム編集といったバイオ技術が現れると状況は一変する。これらの技術は、膨大な研究開発費を必要とする上、分子生物学や応用化学の高度な知見を必要としたため、それまでの種苗メーカーの守備範囲を大きく逸脱していた。

 これらの技術をもって種苗業界に参画してきたのが、「バイオメジャー」と呼ばれる、巨大資本を有する多国籍化学・医薬品企業群である。

 90年代以降本格的に種苗業界に参入したバイオメジャーは、潤沢な研究資金に加えてバイオテクノロジー研究部門を有しており、遺伝子組み換え作物の爆発的普及を契機に、瞬く間に業界を席巻した。

意外と強い日本の種苗

 世界の種子市場の規模は推定で約3兆2,400億円である。そのうちの80%以上に当たる2兆7,000億円をトウモロコシや大豆などの穀物種子が占め、残りの約5,000億円を野菜種子、400億円を草花種子が占める。

 種苗業界はいま、バイオメジャー主導による大再編の真っただ中である。ダウ・デュポンの合併と再編に加え、バイエルによるモンサントの買収により業界の寡占化はさらに進み、上位4社の市場占有率は農薬で8割、種子で6割を超えることとなった。

 ここ数年の大規模な業界再編の動きの背景には、研究開発費の膨張による負担増がある。農薬に耐性のある雑草・害虫の出現による新成分の開発や、それに対応する遺伝子組み換え作物の研究開発の必要に迫られているほか、昨今の環境問題意識の高まりによる各国の安全規制強化も相まって、開発コストは膨張し続けている。その一方で穀物に代表される種子の市場価格は農作物の生産過剰と不況、そして競争の激化に伴い下落傾向にある。

 このような状況の中で市場の拡大・コスト削減・研究開発費の捻出などが必要となった。大規模統合は、「経営資源の選択と集中」「技術・販売網の統合」「スケールメリットの拡大」を実現し、より自らのシェアを広げるための方策であった。

  厳しい競争環境の中、日本の種苗業は独自の地位を保っている。日本の種苗会社は特に野菜種子に強く、世界の野菜種子市場の17%を占有している。この背景には、四季の気候変化に対応し、狭い耕地面積の中で効率良く生産するために多彩な品種が栽培されるようになったことなどがある。世界で栽培される野菜品種約800種のうち、150種が日本で常食され、海外料理専門店向けの食材を含めると300種が栽培されている。日本の国土面積の約25倍のアメリカで95種、欧州最多のフランスで100種であることを考えれば、日本の品種多様性は群を抜いていると言えるだろう。

 ではこの辺で、ランキングを紹介しよう。

ランキングトップ10

画像
種苗業界世界売上ランキング(単位:百万ドル)

■第1位:モンサント(バイエル)
 第1位は米国のモンサントであったが、2018年6月に独バイエル(ランキング第5位)に買収されたため、企業名としては現存しない。1901年に米ミズーリ州セントルイスでサッカリン工場として創業した、117年の歴史を持つ老舗企業であった。1960年代に除草剤の「ラウンドアップ(Roundup)」を開発し、農業部門を設立したことでアグリビジネスに参入した。1990年代には、ラウンドアップに耐性のある遺伝子組み替え品種を開発し、農薬であるラウンドアップとセットで販売することで農業従事者の作業効率を向上する提案を行い、莫大な利益を得た。

【次ページ】ランキングの2位以降はこちら
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