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2017年10月06日

自動車メーカーの世界ランキング:トヨタ脅かす欧州勢の躍進、自動運転とEVが主戦場

世界の自動車産業は、日米欧の三大勢力が割拠するという構図が続いているが、これまでにない変化も起こっている。欧州勢の躍進だ。背景には、自由競争の促進、環境・安全技術の革新、水平分業・協業による低コスト化といったEUの自動車産業の復活戦略があった。欧州勢の代表格がM&Aで躍進、販売台数でトヨタ自動車を抜いて世界首位を達成したドイツのフォルクスワーゲン(VW)である。一方、トヨタが部品の国際水平分業、自動運転技術への投資、電気自動車(EV)分野でのアライアンスを進めるなど、巻き返しに乗り出している。

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

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自動車業界に大波が押し寄せている

(© roibu – Fotolia)


EUの自動車産業の振興策でVWが躍進

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 2016年の自動車の世界販売台数は、12〜15年に連続首位だったトヨタ自動車グループを抜いて、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループがトップに立った。欧州の自動車メーカーが世界一になったのは、史上初の快挙であった。

 VWは15年、ディーゼルエンジンの排ガスデータの不正が発覚、対象車種は世界各国で販売停止に追い込まれ、米国市場での大規模なリコールが発生するなど経営に大打撃を受けた。環境適応を重視してきたブランドのイメージダウンも避けられないため、販売の低迷は必至と見られていた。

 にもかかわらず、世界販売台数第1位になれたのは、中国市場での販売が予想以上に好調だったためだ。もっとも、ライバルであるトヨタが販売台数を重視しなかったという背景もある。

 VWは、M&A(企業合併・買収)を積極化、ドイツのポルシェやイタリアのランボルギーニなどの高級車メーカー、チェコのシュコダやスペインのセアトなどの低価格車メーカーを次々と傘下に収め、2000年代に入って著しく躍進した。

 経営規模の追求という“量的拡大”の側面が注目されがちだが、見逃してはならないのが、生産効率化という“質的改善”の側面だ。それが同社の強さにつながったとの見方が広まっている。

 VWの躍進の影には、欧州挙げての自動車産業の振興策があったと考えられる。言うまでもなく、欧州は自動車発祥の地である。

 しかし、米国の量産システム、日本のモノづくりの技術力に押され、欧州の自動車産業は日米の後塵を拝してきた。欧州各国の保護主義、強力な労働組合などが仇となって高コスト体質が定着、国際競争力が低下したことも大きい。しかるにEU発足が契機となって、欧州の自動車産業は攻勢に転じたと言えよう。

 まず欧州各国の保護主義が影を潜め、EU域内では自動車産業の自由競争が加速した。同時に、EUは自動車の先進的な燃費規制や安全規制を打ち出していく。「環境」「安心・安全」という価値領域において、世界の自動車産業のイニシアチブを執るためだ。

 それに伴って、EU域内の自動車メーカーは、基本構造や設計プロセスの標準化にも乗り出した。差別化が難しい領域では、部品や装置の水平分業・協業化を推進し、ドラスチックなコストダウンを実現したのだ。そうした取り組みがVWをはじめとする欧州の自動車メーカーの合従連衡を促し、欧州の自動車産業は息を吹き返したのである。

巨大化する欧州のメーカー、苦戦が続く米国勢

 2016年の自動車販売台数によるグローバルランキングは以下のとおり。

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自動車メーカーの世界ランキング(2016年)


 VW、トヨタがトップ争いをしているのは前述のとおりだが、全体的には、欧州勢の台頭と米国勢の苦戦が目立っている。

 なお、自動車メーカーは、カウントがしやすい販売台数が経営規模の指標としてよく用いられるが、もちろんイコール売上高ではない。たとえば、売上高ランキングでは、低価格車が主力の現代自動車やスズキの順位は大幅に下がり、代わって、高級車がメーンのドイツのダイムラーなどが上位に食い込んでくる。

 世界第1位となったVWは前述したとおり。1937年にナチス政権下のドイツで国策会社として設立された。同じドイツのポルシェやアウディもグループに入り、まさに社名のとおり「国民の自動車」メーカーになりつつある。ただし、創業家であるポルシェ・ピエヒ両家が経営を支配している。英国の高級車メーカーであるベントレー、イタリアの人気オートバイメーカーであるドゥカティなどもVWグループだ。

 第3位はルノー・日産アライアンス(現在はルノー・日産・三菱アライアンス)。日産自動車は言うまでもなく日本の自動車メーカーだが、実質的にはルノーの支配下にあるため、欧州グループとして取扱うべきだろう。

 ルノーは1898年創業の老舗で、フランス最大の自動車メーカー。1945年にド・ゴール大統領によって国有化された。民営化後もフランス政府が株の15%を保有、強い影響力を持っている。1999年に経営不振に陥った日産自動車(1933年創業)と事実上、経営統合した。カルロス・ゴーン氏が日産に乗り込んでリストラを断行、再建したことはご存知のとおり。ロシアのアフトワズ、韓国のルノーサムスンといったグループメーカーもある。

 第4位は韓国の現代自動車グループ。1967年に設立された新興勢力だが、起亜自動車を傘下に収め、今や韓国最大の自動車メーカーとなった。旧現代財閥の中核でもあった。

 EUの自動車戦略に倣って経営合理化を進め、低価格の大衆車を新興国に売り込んだのが急成長の原動力となった。しかし、中国市場の冷え込みなどで拡張路線が裏目に出たほか、人件費抑制に反発する労働争議などの影響で失速傾向にある。

 第5位は米国のゼネラルモーターズ(GM)。1908年の設立で、かつては米国のみならず、世界を代表する自動車メーカーで、トヨタと世界首位を争ったが、リーマンショックのあおりで2009年、創業100年目にして経営破たんし、国有化される憂き目を見た(2013年に米国政府はGM株をすべて売却、再建は終了)。

 スバル、いすゞ自動車、スズキ、スウェーデンのサーブの保有株の売却、フィアットとの提携解消など経営破たんの爪あとは大きく、GMは世界の覇権争いから大きく後退した。

 第6位は米国のフォード・モーター(1903年創業)。ベルトコンベア方式による自動車の大量生産システムを生み出したことは、あまりにも有名。M&Aで拡張路線をひた走っていたが、それが経営の重荷となって2006年以降、リストラに着手。マツダ、英国のジャガーやランドローバー、スウェーデンのボルボなどの株を次々と手放した。生産効率化のため、「ワン・フォード」(販売モデルの世界統一)を掲げ、不振が続いた日本市場からは、ついに2016年に撤退した。

 第8位はフィアット・クライスラー・オートモービルズ。フィアット(1899年創業)は、ランチア、アルファロメオ、フェラーリ、マセラッティといったイタリアの有力な自動車メーカーを手中に収め、イタリアの自動車産業をほぼ掌握した。さらに、経営破たんした米国のクライスラーと経営統合(2014年にフィアットが全株取得)、世界のトップ集団入りをうかがう。

 第9位のフランスのPSA・プジョー・シトロエン(現在はグループPSA)は、世界最古の自動車メーカーであるプジョーが1974年、同じフランスのシトロエンと経営統合して誕生した。プジョー一族が長年、経営を支配していたが、経営不振のため、2014年にフランス政府、中国の東風汽車が資本参加、仏中共同国策会社化の様相を呈してきた。

【次ページ】自動運転技術では欧州勢が先行

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