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  • 2018/01/11

鉄道車両メーカーの世界ランキング:欧州2大企業が統合の衝撃、中国CRRCが台風の目

2017年9月、世界の鉄道関係者に衝撃が走った。独シーメンスと仏アルストムという、欧州の鉄道車両業界の両雄が経営統合を決めたからだ。その背景としては2015年、中国中車(CRRC)という鉄道車両業界の“マンモス”が現れたことが大きい。経営規模で中国中車に大きく水を空けられた欧州両雄は、対抗するために手を結ぶことにしたわけだ。急成長する新興国市場を主戦場に、技術力を武器にする日米欧メーカーと、低価格をセールスポイントにする新興国メーカーが激突する構図は今後、ますます鮮明になるだろう。日立製作所を筆頭とする日本勢も、かつては世界を席巻した技術力を引っさげて参戦する。

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

野澤 正毅:1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在、ビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。

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鉄道車両メーカーとしても台頭する中国企業
(©hit1912 - Fotolia)

大陸では鉄道が貨物輸送の主役

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 鉄道の歴史は、産業革命と軌を一にしており、世界初の本格的な鉄道は、1830年に開業した英国のリバプール・アンド・マンチェスター鉄道だと言われている。日本でも明治5年(1872年)、新橋・横浜間に鉄道が開通して以来、近代化の原動力となったことは周知のとおりだ。

 鉄道車両は、自動車と並んで最も重要な陸上の輸送機である。20世紀以降のグローバルなモータリゼーションの波にさらされ、交通手段としての地位は自動車に比べて大きく後退した。とはいえ、陸運における役割は依然として大きく、近年では環境負荷の低さ、省エネといった観点からも再評価されている。

 国土が狭く、細長い島国である日本では、鉄道は旅客輸送がメインだが、欧米やアジア・アフリカといった大陸では、鉄道は貨物輸送の主役である。

 貨物列車は、トラックに比べてスピードが遅く、小回りが利かないといった短所があるが、長距離でも低コストで大量の積荷を運べるといった長所もある。

 そこで、高級な生鮮食品(イセエビや夕張メロン)など一部の貨物はトラックで運び、日持ちのする加工食品や穀類などボリュームのあるその他の貨物は列車で運ぶといった具合に、使い分けをしているのだ。

都市の旅客輸送を支えるのは鉄道

 また、旅客輸送についても、人口が密集する大都市圏の近距離交通では、鉄道が活躍している。多数の乗客を効率的に運ぶことができ、自動車による交通渋滞の緩和にも役立つからだ。

 東京や大阪をはじめ、ニューヨーク、ロンドンといった世界の代表的な大都市では、地下鉄が発達していることはご存じだろう。近年では、世界各国の大都市で、新型路面電車「LRT」の導入も進んでいる。

 ひと口に鉄道と言っても、昔なつかしのSL(蒸気機関車)から電車、路面電車、地下鉄、日本の「新幹線」のような高速鉄道まで、さまざまな種類がある。

 鉄道は、一般に文字通り“鉄の軌道”の上を走るが、今話題のリニアモーターカー(磁気浮上式鉄道)、懸垂式のモノレールやロープウェイ、トロリーバスなども鉄道に含まれる。

 機能的には、熱機関を動力とする「気動車」、モーターを動力とする「電車」に大別される。気動車はSL、ディーゼル機関車などがあり、動力を発して客車や貨車を牽引する(これを「動力集中方式」と呼ぶ)。

 それに対して、電車は架線などから電力を車両に取り入れ、各車両を走らせる「動力分散方式」が基本だ(動力集中方式の電気機関車もある)。私たちは電車を見慣れているが、長距離の貨物輸送が主流の海外では、気動車も普及している。

 このように現在、運行されている鉄道は、ローテクからハイテクまで幅広く、動力源も内燃機関、モーターなどバラエティに富んでいる。そのため、鉄道工業も、重工業、電機といった多様な業種から参入しているのが特徴となっている。

鉄道車両メーカーの世界ランキング

 鉄道車両は、一部は高い技術力がなくても作れるので、先進国から新興国まで世界各国で生産されている。以下のランキングを見てみると、鉄道の歴史が古い日米欧のメーカーが強みを発揮しているものの、中国メーカーの台頭が著しいことがわかる。

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鉄道車両メーカーの世界ランキング

 ただし、事業のポートフォリオは、先進国のメーカーと新興国のメーカーではだいぶ違う。誤解を恐れずに言えば、先進国は“質”で、新興国は“量”で勝負ということになろう。

 日米欧の鉄道車両は、技術の高さには定評があり、鉄道車両だけでなく、ITを活用した鉄道運行システム、安全管理システム、予約・発券システムなどをトータルパッケージで提供するメーカーが増えている。

 一方、中国の鉄道車両は、コスト面では優位に立っているものの、技術面では日米欧に大きく引き離されている。国内向けの生産が大半を占め、輸出実績はまだ少ない。高速鉄道の開発は道半ばで、日米欧からの技術支援がなければ、立ち行かないのが実態のようだ。2011年に“中国版新幹線”が走行中に転覆、穴埋めにされてしまった事件は記憶に新しい。

 鉄道車両売上高の世界第1位は中国の中国中車(CRRC)だ。2015年に中国国営の二大鉄道車両メーカー、中国南車と中国北車が経営統合して誕生した。

 新興メーカーだが、中国の鉄道市場の拡大を追い風に急成長、経営基盤の集約によって生産性もアップしたと言われる。現在は売上の90%以上が中国国内向けだが、国内需要が頭打ちになると見られることから、今後は低価格を武器に国外に積極的に打って出るものと見られる。

 第2位のシーメンス(ドイツ語の発音ではジーメンスのほうが近い)はドイツを代表する総合電機メーカーで、創業は1847年。日本とも馴染みが深く、たとえば、富士電機や富士通は、もともと古河財閥とシーメンスとの“ハーフ”なのだ(古河の“ふ”とジーメンスの“じ”、それに富士山から“ふじ”と命名)。

 世界初の電車を製造した鉄道事業は主力部門の一つで、後述するアルストムとの経営統合によって、鉄道分野では名実ともに欧州の覇者となる見通しだ。

 第3位はカナダのボンバルディア(1942年設立)。鉄道車両事業は中核だが、欧州の鉄道車両メーカーを次々とM&A(企業合併・買収)で傘下に収めたため、その事業拠点はドイツにあり(グループ会社のボンバルディア・トランスポーテーションが担当)、シーメンスとの経営統合も取り沙汰された。航空機メーカーとしても知られる。

 第4位のフランスのアルストム(1928年設立)は世界的な鉄道車両メーカーで、超高速鉄道「TGV」を手がけたことでも有名。シーメンスの鉄道事業部門との経営統合は、2018年をメドとしており、実現すれば、世界第2位に浮上することになろう。

【次ページ】M&Aをテコに鉄道車両業界の再編は加速か

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