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  • 2020/03/24

選挙で多選はタブーか? 熊本県知事選で見えた「変革より安定」

多選の是非が争点に浮上した22日投開票の熊本県知事選挙で、無所属で現職の蒲島郁夫知事が無所属新人の幸山政史元熊本市長を振り切り、4選を果たした。熊本県ではこれまで知事の4選がタブー視されてきたが、民意が多選を信任した格好。全国では2000年代に多選の弊害が盛んに問題視され、各地で首長の多選自粛条例が制定された。しかし、現在は逆に多選首長が増えている。近畿大法学部の辻陽教授(地方自治論)は「多選の弊害は人事の偏向や行政のマンネリ化を招くとされるが、多選だからといって必ず弊害が出るわけではない。有権者は当選回数でなく、政策を見て投票すればいい」と指摘する。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。


過去の熊本県知事はそろって2、3期で退陣

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熊本県知事選で4選を果たした蒲島郁夫知事
(写真:毎日新聞社/アフロ)

 「熊本の発展にすべてをささげたい」。熊本県知事選で当選が決まった蒲島知事は22日夜、熊本市中央区の選挙事務所で4期目の抱負を語った。蒲島知事は自民党県連、公明党県本部、連合熊本などの推薦団体が組織戦を展開して44万票近くを獲得、社民党県連合の支持を受け22万票近くを得た幸山元市長に大差をつけた。

 「清正公(せいしょこ)さんも12年」。熊本県の政界では長くこの言葉が語り継がれてきた。初代熊本藩主の加藤清正が肥後国(現在の熊本県)の大半を領有してから12年しか在任しなかったのだから、知事の任期も12年以内が適当という意味だ。1958年の知事選で現職の4選阻止を掲げた新人陣営がキャッチフレーズに使い、定着した。

 その結果、知事の公選制度ができたあと、蒲島知事の前任の潮谷義子前知事まで6人の知事は、全員が2期か3期で退陣した。後に首相を務めた細川護熙元知事は同じ者が権力の座に10年以上いるべきでないことを意味する「権不(けんぷ)十年」を唱え、1991年に2期で退いている。

 今回の選挙戦では、熊本地震からの復興や人口減少対策とともに、多選の是非が争点になった。幸山元市長は多選の弊害を理由に熊本市長への4選出馬を取りやめた経験がある。2月に熊本市で開かれたウェブ討論会では、多選批判を前面に掲げ、蒲島知事の姿勢を批判した。これに対し、蒲島知事は「4選出馬を求める声が圧倒的だった」と反論している。

 選挙戦は新型コロナウイルスの感染拡大で支持者の集会や有権者との握手がない珍しい形になったが、双方の支持者の間では多選の是非をめぐる舌戦が繰り広げられた。

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富山県でも多選の弊害が争点に

 2020年に任期満了を迎える知事は蒲島氏以外に、鹿児島県の三反園訓知事、東京都の小池百合子知事、富山県の石井隆一知事、岡山県の伊原木隆太知事、栃木県の福田富一知事がいる。

全国知事の当選回数        
都道府県 氏名 当選回数   都道府県 氏名 当選回数
北海道 鈴木直道 1   滋賀 三日月大造 2
青森 三村申吾 5   京都 西脇隆俊 1
岩手 達増拓也 4   大阪 吉村洋文 1
宮城 村井嘉浩 4   兵庫 井戸敏三 5
秋田 佐竹敬久 3   奈良 荒井正吾 4
山形 吉村美栄子 3   和歌山 仁坂吉伸 4
福島 内堀雅雄 2   鳥取 平井伸治 4
茨城 大井川和彦 1   島根 丸山達也 1
栃木 福田富一 4   岡山 伊原木隆太 2
群馬 山本一太 1   広島 湯崎英彦 3
埼玉 大野元裕 1   山口 村岡嗣政 2
千葉 森田健作 3   徳島 飯泉嘉門 5
東京 小池百合子 1   香川 浜田恵造 3
神奈川 黒岩祐治 3   高知 濱田省司 1
新潟 花角英世 1   愛媛 中村時広 3
富山 石井隆一 4   福岡 小川洋 3
石川 谷本正憲 7   佐賀 山口祥義 2
福井 杉本達治 1   長崎 中村法道 3
山梨 長崎幸太郎 1   熊本 蒲島郁夫 4
長野 阿部守一 3   大分 広瀬勝貞 5
岐阜 古田肇 4   宮崎 河野俊嗣 3
静岡 川勝平太 3   鹿児島 三反園訓 1
愛知 大村秀章 3   沖縄 玉城デニー 1
三重 鈴木英敬 3   (敬称略)
出典:全国知事会資料などから筆者作成

 一般に4選以上が多選と考えられているが、2020年に任期満了を迎える知事で該当するのは、ともに4期目の石井知事と福田知事だ。このうち、石井知事は11月投開票の富山県知事選に5選出馬の意向を表明、対抗馬の新田八朗前日本海ガス社長と前哨戦を繰り広げている。争点の1つに浮上しているのはやはり多選の是非だ。

 1月に富山市で開かれた富山経済同友会の会合では、代表幹事の1人である新田前社長と石井知事が並んで座って昼食を取った。単なる新年の顔合わせの会合だが、ともに立候補を表明しているだけに、両者が目を合わせる場面もほとんどなかったという。

 福田知事は12月に予定されている栃木県知事選に立候補するかどうか明らかにしていない。新人の田野辺隆男元NHK宇都宮放送局長が立候補を表明する中、栃木県市長会が1月、5選出馬を要請している。

 福田知事は2月の定例記者会見で5選出馬について問われたが、「今は県予算の成立を優先し、そのあとで自分の考えを伝えたい」と述べるにとどめた。

【次ページ】時代が変わり、多選に対する抵抗感に変化

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