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  • 2020/07/17 掲載

「オフィスはもう必要ないのか?」──。テレワーク浸透が不動産市場に与える影響とは

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テレワークの進展によって、都市部のオフィス市場に逆風が吹き始めている。テレワークへの移行は、コロナ危機による一時的な措置との見方もあったが、恒常的な制度と位置付ける企業が現われるなど状況は変わりつつある。オフィス需要の今後について探った。

執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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オフィス需要の今後について探った
(Photo/Getty Images)
 

企業社会の雰囲気が一変した

 新型コロナウイルスの感染が拡大したことから、多くの企業がテレワークに移行している。テレワークについては、以前から働き方改革の一環として必要性が叫ばれていたが、日本企業の反応は鈍く、テレワークは導入したくないというのが企業側のホンネだったと言ってよい。

 ところがコロナによる感染が本格化したことで、企業社会の雰囲気は一変した。感染が拡大する初期段階から全社的にテレワークに移行したGMOインターネットの取り組みがメディアで紹介されたことや、政府が緊急事態宣言を発令したこともあり、テレワークを実践する企業が一気に増えた。

 GMOインターネットは、感染拡大がそれほど深刻に受け止められていなかった1月末の段階で、国内従業員の約9割にあたる4000人を在宅勤務にシフトしている。一部の社員は出社が必要となることから、オフィスについても感染防止を徹底しており、エレベーターのボタンにビニールシートを貼る、消毒液を各所に配置する、感染防止マニュアルを整備するなどの対策を実施。多くの企業が同社の事例を参考にした。

 パーソル総合研究所の調査によると6月初旬の時点でテレワークを行っているビジネスパーソン(正社員)は25.7%となっている。グーグルが行っている人出の調査によると、出社する人の減少率は欧米よりも低く推移しているが、これまで頑なにテレワークを拒否してきた日本の社会風潮を考えれば大きな変化といってよい。

 重要なのはこの流れが今後も継続する可能性が見え始めたことである。

 カルビーはコロナ危機をきっかけにテレワークに移行したが、今後はテレワークを標準形態にすることを会社として正式決定し、7月1日から実施している。テレワークは暫定措置ではなくなり、必要な時以外には社員は出勤せず、全体的に30%程度の出社率に抑えるという。

 同社の取り組みは本格的なもので、通勤定期代の支給も廃止し、出社する場合には都度、交通費の清算を行うほか、所属部門が認めた場合には単身赴任も廃止するという。

 ほぼ同じタイミングで富士通もテレワークへの本格的な移行を表明している。同社では今後、製造拠点や客先に常駐している社員を除き、テレワーク勤務を基本形態とする。全社員に対して在宅勤務手当を支給する一方で、通勤定期代の支払いは中止し、単身赴任も解消するなどカルビーと同様の制度に移行する見通しである。

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全社的にテレワークに移行したGMOインターネットの取り組みがメディアで紹介されたことや、政府が緊急事態宣言を発令したこともあり、テレワークを実践する企業が一気に増えた
(Photo/Getty Images)
 

オフィス削減は不可逆的な動きに

 カルビーは社員数4000人弱の企業だが、富士通は8万人が国内勤務する巨大企業である。同社は従来の主力事業だった通信機器の製造から情報システム事業への切り換えを進めており、SE(システムエンジニア)が客先に常駐するケースも多く、すべての社員が自社オフィスで仕事をしているわけではない。

 だが8万人を擁する大企業が、在宅を基本方針に据えたことの意味は大きい。同社ではオフィスのフリーアドレス化も進めており、テレワークとフリーアドレスの組み合わせによって、2023年をメドにオフィス面積を現状の半分程度に縮小する方針だ。

 カルビーや富士通はかなり積極的な部類に入るだろうが、程度の違いこそあれ、各社がテレワークの制度を拡充、あるいは強化していくのはほぼ既定路線となりつつある。当初はコロナ危機が終息すれば、元の状態に戻るとの見方も多かったが、事態は不可逆的である可能性が高まっている。


 当たり前のことだが、テレワークを行う社員が増えるほど、必要なオフィスの面積は少なくて済む。中小企業の中からも、IT系企業を中心にシェアオフィスの活用を進めるところが増えており、やはりオフィスの総面積は減る傾向にある。新しい生活様式の定着によって、都市部のオフィス需要が減少するのは間違いないだろう。

【次ページ】オフィス需要は減少?不動産ビジネスへの影響とは

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