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- 2020/07/07 掲載
壊滅的な急減速、新型コロナによる自動車業界の「暗すぎる」先行き
新型コロナ危機により、日本、欧米の自動車販売はどう変わった?
ブルームバーグの調査によると、ライトビークル(乗用車と車両総重量6t未満の商用車を含む)の世界販売数は新型コロナの影響で大幅減となった。1月は年率換算で8780万台の見通しだったが、4月には4900万台に修正が必要な状況だ。実際に4月だけを見ると、販売台数は前年同月比で45%ほど落ちた。各地域によって異なるが、米国、カナダ、欧州でおおむね数値が落ちている。ただし例外は中国だ。4月の段階で、ほぼフラットに戻してきた。日本市場については、2019年の年間販売台数は約500万台で、うち軽自動車が4割を占めた。足元の状況は、新型コロナ発生前は消費税増税の影響が大きかったという。
ブルームバーグ・インテリジェンス シニアアナリストの吉田達生氏(自動車業界担当)は「過去の増税後も販売数が落ちたが、昨年10月の消費増税では、駆け込み需要があまりなく、山低ければ谷も低くし、ということで、落ち込みも小さいと見ていました。しかし、過去2回の増税と比べて落ち幅が大きくなった」と語る。
そして、直後に新型コロナの騒動により、もはや増税の影響どころの話ではなくなり、販売台数もつるべ落としで急転直下してしまった。前年同月比でみると5月でも-40%以上の急速な落ち込みだ。
では米国市場はどうか。米国は2019年の市場規模が年間1700万台、日本車シェアは4割という重要な市場だ。
「4月の年率換算台数は860万台まで急激に落ち、ようやく5月に1220万台にリバウンドしました。リーマンショック時は、市場回復まで4年を要しましたが、今回はそれ以上の落ち込みで、前途多難な状況と言えるでしょう」(吉田氏)
欧州については、2019年は年間1400万台規模で、欧州車のシェアは75%を占めた。
「日本車のシェアは12%ほどで、それほど存在感はありません。欧州の状況も米国と同様に、ロックダウンによって1-3月期の売上は激減し、4月の前年同月比で78.3%も落ち込んでしまいました。この5月に反転しましたが、それでも58.5%減で、まだ低水準で推移中というところです」(吉田氏)
アジア市場の新型コロナの影響、中国は巻き返し、タイは軽微、インドネシアは悪化
次にアジア市場はどうか。先に触れたように、ここに来て中国市場は好転した。「2019年の中国の販売規模は年間2100万台で、日本メーカーのシェアは24%に上昇しました。相対的に堅調に推移していたのですが、今年の1-3月期は例外なく日本車の販売も落ちました。しかし4月にはリバウンドし、日本車は対前年比(4月・5月)で10%ほど伸びています」(吉田氏)
またインドでは、乗用車・ユーティリティビークル・多目的を合わせると2019年の規模は約300万台で、うち日本車が60%、特にスズキ(合弁)は全体シェアの5割も占めている。直近では4月は完全ロックダウンによって、販売データがゼロという状態だ。この5月にはリバウンドしたが、85%減で非常に緩慢な回復状況だ。
タイの2019年の販売台数は年間100台ほどだが、その半数弱はピックアップトラックが占めた。日本車のシェアは85%と非常に多く、トヨタ、いすゞ、ホンダ、三菱などが上位を独占した。
「タイも新型コロナの影響を受けましたが、日本と同様に穏やかなロックダウンであったため、4月の販売の前年同月比は-30%と軽微になりました」(吉田氏)
インドネシアの2019年の規模は100万台で、前年比11%減になっている。しかし日本車のシェアは96%で寡占状態。日本国内よりも日本車のシェアが高いという状況だ。トップ2のトヨタとダイハツだけで半数を占める。他国と同様、3月から4月は91%も販売が落ちたが、5月も96%に続落しており、深刻な状況といえる。
「新型コロナの影響は、すべての国を直撃し、工場の停止や販売店の閉鎖、消費活動の停滞で下押しされました。多くの市場は3月~5月がボトムで、6月以降は底打ちを期待できますが、感染の第二波による販売リスクもあります。また売れ筋車両の需要集中により、在庫のミスマッチが起きるかもしれません。経済規模の弱い新興国は、回復が遅れる可能性もあるでしょう」と予測した。
【次ページ】新型コロナによるEVの影響と、2020年代の短期見通し
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