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  • 2020/09/01

安倍政権の幕引きに「地方」は“冷めた目”のワケ

安倍晋三首相の突然の辞任表明で第2次安倍政権が幕を閉じることになった。7年8カ月の長期にわたって政権を維持できたのは、野党の不人気もあるにせよ、アベノミクスをはじめとする政策がそれなりの評価を受けてきた結果だという見方がある。しかし、地方では必ずしも積極的な評価が多くなく、看板政策の1つだった地方創生に対しても冷めた反応が見られる。九州大大学院法学研究院の嶋田暁文教授(行政学)は「地方創生が東京一極集中に歯止めをかけられない中、ふるさと納税などで地方自治体同士が分断されるなど、地方にとってマイナスの方が大きかった」と厳しい評価を下している。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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8月28日に首相官邸で開かれた記者会見で辞任の意向を明らかにした安倍晋三首相
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

辞任会見で地方に触れた言葉はなし

 「持病の潰瘍性大腸炎が再発した。新型コロナウイルス対策などの指揮を執る中、健康状態に不安を抱えた状態で政権運営を担うべきでないと判断した」。安倍首相は首相官邸で記者会見し、辞任の意向を明らかにした。

 会見では北朝鮮による拉致問題や北方領土問題の解決、憲法改正が実現できなかったことについて「痛恨の極み」と表現する一方、第2次安倍政権の成果として東日本大震災からの復興やアベノミクスによる景気浮揚、働き方改革への道筋をつけられたことなどをアピールした。

第2次安倍政権の7年8カ月
2012年 12月 衆院選で自民党が大勝。第2次安倍政権発足
2013年 4月 アベノミクスで日銀が異次元金融緩和を決定
7月 参院選で与党勝利。衆参ねじれが解消
2014年 4月 消費税率を5%から8%に引き上げ
9月 内閣改造で地方創生担当相を創設
12月 消費増税争点の衆院選で与党が大勝
2015年 8月 戦後70年談話で「痛切な反省」に言及
9月 集団的自衛権一部容認の安全保障関連法成立
2016年 7月 参院選で大勝し、衆参で与党が3分の2以上に
2017年 2月 国有地売却めぐる森友問題が発覚
5月 獣医学部新設の加計問題で首相のご意向文書発覚
10月 衆院選で与党が3分の2の議席維持
2018年 3月 森友問題で財務省の公文書改ざん発覚
2019年 7月 参院選で与党が過半数維持
10月 消費税率を10%に引き上げ


 2012年末に発足した第2次安倍政権は、2013年2月の共同通信社世論調査で70%を超す内閣支持率を得るなど、国民の高い期待を集めた。その原動力となったのがアベノミクスとともに、地方創生だった。

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安倍政権の主な地方創生策

 しかし、地方創生の行方や東京一極集中の是正、地方経済の再生など、地方に対する声は会見でまったく上がらなかった。

地方に波及しなかったアベノミクス

 第2次安倍政権の発足当時、日本経済はバブル崩壊後の長期不況から立ち直れず、国際的な地位を急激に落とす中、2011年に記録した1ドル=75円台という歴史的な円高と、企業や国民に染み付いたデフレ心理に苦しめられていた。


 そこへ就任早々に打ち出されたのが「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「成長戦略」の3本の矢で構成されるアベノミクスだ。アベノミクスは第1の矢に当たる日銀の異次元金融緩和策が功を奏し、円安に誘導することに成功する。2015年の円相場は1ドル=125円台。海外に販路を求める東京の大企業の採算は大きく改善した。

 株式相場も急速に回復した。日経平均株価は2012年12月に1万80円余だったが、2015年に15年ぶりとなる2万円台を回復する。企業の利益が拡大することで雇用状況も改善し、2018年8月の有効求人倍率は1.63倍と45年ぶりの高水準を記録した。

 しかし、地方からは景気回復の実感が乏しいとする声が度々上がった。人口減少と高齢化の進行が直撃する中、地方経済が疲弊を続けていたからだ。香川県三木町のタクシー運転手は「東京の景気が良いと聞いても、地元でこの7年間に景気回復を実感したことは一度もない」と語った。

 嶋田教授は「アベノミクスがなければ地方経済はもっと悪化していたかもしれないが、より大きな問題は東京一極集中を加速させ、地方に大きなマイナス効果をもたらしたことではないか。財政健全化と真逆の政策でもあり、国の将来に大きな禍根を残した。その反動で将来、厳しい緊縮財政が求められ、地方へのしわ寄せが来る可能性が高い」とみている。

【次ページ】地方創生は思うような結果残せず

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