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  • 2020/12/23 掲載

情熱を集めて燃えろ。元ロボットベンチャー人事が起業、人材紹介TORCHの技術者支援

森山和道の「ロボット」基礎講座

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技術系スタートアップの人たちは口を揃えて「採用に苦労している」という。もともと技術者の需要は他の職種よりも高い。そしてスタートアップが求める人材はステージによって変化し、その折々に必要な人を集めるのは難しい。また技術者側も新しいステップへと進みたいと考えたときの選択肢は意外と限られている。そんなときに頼りになりそうな会社が1つ現れた。技術者特化型の人材紹介会社TORCHである。社会は会社で構成されている。会社が人を採用するということ、また転職先を探すということについて、改めて考えてみたい。

執筆:サイエンスライター 森山 和道

執筆:サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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TORCH 代表取締役CEO 山内 龍王氏


MUJINを辞めて起業、社名はTORCH

 取材する側の立場からの意見だが、スタートアップの広報は、できれば人事と兼務しておいてほしいと考えている。なぜなら、こちらが投げかけた質問に対して当人がわからなくても「ああ、それなら○○が詳しいですし彼から答えさせます。なぜなら彼の前職は○△でしたから。彼は××をしたいと考えて我々の仲間に加わったのです」といったことを、サラッと答えてもらえるからである。

 スタートアップの広報は、会社のビジョンの伝道師そのものだ。であるならば、誰が何をしているのかくらいは把握しておいてほしい。大企業ならそこまで社内人材のことを把握できていなくても仕方ないが、せめて社員100人程度のスタートアップならば、そのくらい社内の風通しを良くしておいてくれないと、CEOの言っていることと他の社員が言っていることが乖離(かいり)してしまい、取材するこちらとしても困ってしまうのだ。

 技術者特化型人材紹介会社のTORCH(トーチ)が対象としている業界はロボティクス、AI、製造業、物流オートメーション、ソフトウェア、ITなど。エンジニアだけでなく、技術営業なども対象だという。代表取締役は山内龍王氏。山内氏の前職は、急成長中の知能ロボットコントローラのスタートアップであるMUJINの人事・広報。筆者も当時から付き合いがあり、彼はまさに前述のような広報の人だった。クールであり、かつ情熱的な人物だ。


 その山内氏から「退職した」と聞いて「このタイミングで?」と驚き、続けて「起業した」と聞いて、また驚いた。だが同時に「技術者特化型の人材紹介会社で、将来は技術者のコミュニティを作りたいと考えている」と聞いて、なるほどと感じ、ストンとふに落ちる感覚があった。

 以前から技術者採用の悩みは各社から頻繁に聞いていたし、技術者が社会のなかで適材適所で能力を発揮することは、大げさではなく社会全体に貢献すると筆者自身も考えていたからである。

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TORCHの掲げるミッション


エンジニアには自身の価値はわかりにくい

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TORCHの対象業界はロボティクス・AI、製造業、物流など

 当たり前だが、スタートアップに限らず、会社は人で構成されている。急激な成長を目指すスタートアップの場合、人材はまさに会社そのものだ。複数スキルの組み合わせが必要とされることも多く、人材要件を落とし時間を消費してしまうことは死に直結する。しかし要件レベルを上げれば上げるほど、人材数は減り、採用難易度は高くなる。

 そもそもスタートアップの多くは知名度が低い。「知る人ぞ知る」と言われる会社の多くは、裏を返せば「知らない人は知らない」わけで、アンテナ感度が低い人たちはスタートアップの社名はまず知らないと思ったほうがいい。かなり有名なところであってもだ。

 その状態で採用を行わなければならない。優れた、しかも自分たちが求めるスキルセットを持ったエンジニアたちが集まっているコミュニティに狙いを定めなければ、まず、的確な人を採用することはできない。

 TORCHとは、すなわち「松明(たいまつ)」を意味しており、人の情熱とビジョンをつなぎ、技術の革新を目指す技術特化型の人材紹介会社を目指している。最近のスタートアップ、特にいわゆる「ディープテック」と言われる業界のスタートアップは技術に対する情熱と大きなビジョンを持っていて、自分たちの技術で社会を良い方向に変えていきたいと強く考えている。

 そこに自らも情熱と技術を持っている人たちをつなげたいと山内氏は語る。

「技術者の情熱に胸を打たれたことが原点で、社名を考え始めた時からぼんやりと火のイメージがありました。火は文明の象徴であり、集まって大きくなるものです。照らすものでもあります。トーチリレーのように、受け継がれていくイメージもあります。それらすべてがしっくりと来て、TORCHという社名を選びました」

 山内氏はもともと外資系人材紹介会社ロバート・ウォルターズ・ジャパンのエージェンシーとしてMUJINに関わりはじめ、2017年にMUJINに転職。インハウスの採用として経験を積んだ。ロバート・ウォルターズ・ジャパン時代から技術企業の採用業務に関わってきたことから、国内外問わない技術人材のネットワークを持っている。

 山内氏がMUJINに関わりはじめた2015年当時、同社のメンバーは十数名程度だったという。そこから多くの人材を採用に関わった。MUJIN時代も「非常に楽しかった」そうだが、まず退職理由はなんだったのか伺った。

「前職で働いているうちに、ロボット周辺の色々な方面に興味が出てきました。また他社の方々、たとえばスタートアップや外資系の日本法人の人など各社の人たちと話をするなかで、意外と採用活動はどこも手探りで困っているんだなと感じるようになりました。

 いっぽう、技術者の数は限られているので取り合いになっていますが、前職は採用基準が高く、ご縁がなくて選考には落選したけれども、素晴らしいスキルセットやビジョンをお持ちの方も大勢いらっしゃいました。

 結果として選考はノーだったけれども『この人は素晴らしい』と感じる人もたくさんいた。そういう方を『当社ではなく、他のよりマッチングするところへ行ければきっと活躍するだろう』と考えても、前職で働いている限り、ご縁がなければ『それまで』になってしまいます」

 多くの人を採用していくなかで、徐々にそれを口惜しいと感じるようにもなっていったという。山内氏に言わせれば「自分の価値がわかってない人は、かなりいる」。

「あなたの経歴ならば、他の人も欲しがりますよという人は結構いるんです。ですがエンジニア自身には自身の価値はわかりにくい。比較する対象が周囲の人たちしかいないからです」

 同じ会社にいると、その評価軸でしか評価されない。外に出るとどんな技術に需要があるのかは、出てみないとわからない。また、どんな技術スタックを掛け合わせてもっている人が求められているかはケース・バイ・ケースで、マッチングする場合としない場合がある。そのような課題をなんとかしたいという。

 まだ立ち上がったばかりの会社だが、すでに技術者紹介の話は来ていて、成約実績もあり、選考プロセス進行中の案件も多数あるとのことだった。優秀な技術者は本当に引っ張りだこなのだ。実際、ロボット系スタートアップで人が足りているといった話は聞いたことがない。

【次ページ】将来は技術者コミュニティビルダーへ

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