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- 2021/03/15 掲載
デジタル市場とは?経産省資料からひも解く、CPS社会への道筋
連載:第4次産業革命のビジネス実務論
新たな産業構造とデジタル化
日本政府はサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたCPS(サイバー・フィジカルシステム)により、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会を「Society5.0」と定義しています。「人と人」「人とサービス」「サービスとサービス」などすべてがつながる社会を超え、利用者の意思とリアルタイムの状況に合わせて最適なUX(ユーザー体験)を提供できる社会への転換が、期待されています。
インターネットの普及が進む中、産業分類という「タテ」から、機能分類という「ヨコ」への産業構造の変化が進んできています。今後の産業構造はタテ(各産業)とヨコ(機能)が密に連携するメッシュ構造になっていくと考えられます。
そして、「目的に合わせて、ヨコの階層ごとに最適なものを組み合わせる」というアプローチが大事になっていくのです。
このような産業構造になっていく背景には、デジタル化による2つの変化があります。
- ・「人の活動」の「機能」と「情報」への分離(デカップリング)が大きく進む
- ・目的のために最適なものを組み合わせる(リバンドリング)ようになる
人類は、人の活動を、「機能」と「情報」に分離(デカップリング)させながら生活を豊かにしてきました。これに加えて、デジタル化によってサービスの変化と創出を促し、新たな雇用を生み出すことが期待されます。
また、デジタル化は人の活動要素の分化(アンバンドリング)をもたらしました。これによって、分化されたそれぞれの要素の効率化、組み合わせの複雑化が進みました。今後は、目的に応じて最適な要素を組み合わせること(リバンドリング)が、今まで以上に効果的になります。
デジタル市場とサービスの進化
デジタル化による産業構造の変化は、市場の進化をもたらします。産業横断で求められる機能が組み込まれ、取引にまつわる機能が高度にデジタル化された、新たな市場になると考えられます。この市場がデジタル市場です。デジタル市場は、取引を媒介する役割も担います。これまで述べた変化にカネの流れが加わるのです。ヒト・モノ・情報・カネの流れが動的に組み合わさることで、さまざまなサービス・活動が実現されるデジタル市場が形成されます。これにより、業界横断・即時・小口・多頻度で取引が行えるようになり、情報の変化に応じた動的な価格決定などが可能になります。
デジタル市場が実現することで、その市場の上で実現されるサービスは、ヒト・モノ・情報・カネの流れを横断して社会価値・経済性を実現していくようになります。情報の流れによってヒト・モノの流れは劇的に効率化すると考えられます。
市場機能が高度にデジタル化していく一方で課題となるのは、利用者がその取引内容を信頼できるかという観点です。これはトラスト(信頼)と呼ばれ、取引に対してトラストがないと判断された場合、市場全体が沈滞化する可能性があります。デジタル市場における取引のトラストを確立する方法を検討する必要が出てきます。
【次ページ】デジタル市場の実現に重要な要素とインフラ
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