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  • 2019/02/07 掲載

CPSをコアに、「東芝IoTリファレンスアーキテクチャー」はどのようなものか

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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筆者が勤務する東芝グループは、2018年11月に公表した会社変革計画「東芝Nextプラン」の中で、技術戦略の核をCPS(Cyber-Physical Systems)と位置付けることを発表しました。140年超にわたり製造分野で培ってきたフィジカル技術と、産業分野のデジタル化で培ったIoTやAIなどのサイバー技術とを融合させることで、各事業領域の高付加価値化や新たな価値創出を実現し、お客さまや社会のデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)を推進しようというものです。この技術戦略を支える標準化されたIoTアーキテクチャーとして「東芝IoTリファレンスアーキテクチャー(Toshiba IoT Reference Architecture)」を策定しました。

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ 福本 勲

東芝デジタルソリューションズ ICTソリューション事業部 担当部長
東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター 参事
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)正会員となり、教育普及委員会副委員長、エバンジェリストなどをつとめる。その他、複数の団体で委員などをつとめている。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』『デジタルファースト・ソサエティ』(いずれも共著)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。

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東芝は技術戦略の核をCPS(Cyber-Physical Systems)に据えた
(©zapp2photo - Fotolia)

世界有数のCPSテクノロジー企業を目指すと宣言

 東芝は2018年11月に会社変革計画として「東芝Nextプラン」と技術戦略を発表しました。その中で、世界有数のCPSテクノロジー企業を目指すことを宣言しました。

 CPSとは、実世界(フィジカル空間)のデータを収集し、サイバー空間でデジタル技術などを用いて分析することで活用しやすい情報や知識とし、それをフィジカル空間や人間にフィードバックすることで、付加価値を創造する仕組みのことです。

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 フィジカル空間とサイバー空間のループにおいて、東芝の豊富な事業領域での製品(コンポーネント)技術と、IoTやAIをベースとしたデジタル技術を組み合わせることで、社会や産業のデジタルトランスフォーメーションの実現に貢献することを目指し、CPSを東芝のシステム技術戦略の核に据えています。その基本方針は、以下の3つです。

1.「東芝IoTリファレンスアーキテクチャー」をCPS実現のための共通フレームワークとし、B2B領域での迅速なサービス開発・提供の技術的な土台とする。

2.東芝のIoT/CPS企業としての認知度を向上させるため、「東芝IoTリファレンスアーキテクチャー」をグローバルスタンダードである、IIC(Industrial Internet Consortium)のIIRA(Industrial Internet Reference Architecture)に反映させる。

3.「東芝IoTリファレンスアーキテクチャー」をベースとしたB2B領域向けの製品・サービスを、将来的にエンタープライズIoTスィート製品・サービス(顧客企業の一連の業務をIoT/AIでサポートするための製品・サービス群)として東芝グループ企業が提供していく。

CPS(Cyber-Physical Systems)とは何か?

連載一覧
 CPSの概念は、もともとドイツや米国の研究所で定義されてきました。これが、デジタル技術の進化を背景に第4次産業革命の実現のための重要な仕組みとして注目され、世界の国や企業の取り組みの中での適用が広がりつつあります。

 ドイツのAcatech(ドイツ工学アカデミー)によるCPSの定義では、モノからデータを取得するIoT(Internet of Things)、ヒトからデータを取得するIoP(Internet of People)、システムやマスターデータを取得するIoS(Internet of Services)の3つのデータソースから成り立つものとされています。

 米国のNIST(National Institute of Standards and Technology:アメリカ国立標準技術研究所)が定義するCPSには、3つのポイントが示されています。

 1つ目は、サイバーとフィジカルはループバックするということであり、これがSystemとして記載されています。2つ目にSystemは複数あるので複数のSystemを束ねるものが必要であり、System-of-Systems (SoS)として記載されています。3つ目は、この中でヒト(Human)がCPSのループに関与し、相互に関わる(インタラクションする)ことが記載されています。CPSのループにおいて、ヒトの意思が反映されることが重要であることを示しているといえます。

画像
ドイツAcatechと米国NISTのCPS

制御とサービス

 伝統的なCPSの対象はSystemで、その目的はコントロール(制御)でした。閉じられた領域でタイミングも含めて厳密なコントロールを行うSystemとして、ソフトウェアには時間的な制約に対処するためのコントロールが求められました。たとえば、サーボモーターの制御における割り込み処理などが、これにあたります。伝統的なCPSは閉じられた領域での「クローズドイノベーション」を志向するものでした。

 一方、最近のCPSは「オープンイノベーション」を目指したSystem-of-Systems(SoS)と捉えられるようになっています。対象は社会を巻き込んだものへと広がり、オープンなSystemによるサービスへの活用を目指すものです。

 この背景には、クラウドコンピューティング、高速ネットワーク、GPS(Global Positioning System, Global Positioning Satellite:全地球測位システム)の3つの技術の発展があります。これらが安価に利用できるようになったことで、最近のオープンなCPSの実現が可能になったのです。

 そして、このCPSを中核技術ととらえ、日本発のリファレンスアーキテクチャーとしての実現を目指したものが、「東芝IoTリファレンスアーキテクチャー」なのです。

【次ページ】「東芝IoTリファレンスアーキテクチャー」とは?

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