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  • 2020/01/31 掲載

山本 宏 CTOが発表、“CPS企業”へ挑戦する東芝の現在地

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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東芝グループは、2018年11月に公表した全社変革計画「東芝Nextプラン」の中で、東芝の技術戦略の核をCPS(Cyber-Physical Systems)と位置付けることを発表しました。そして、このCPSを実現するための共通フレームワークとして、「東芝IoTリファレンスアーキテクチャー(Toshiba IoT Reference Architecture)」を策定しました。2019年11月28日の技術戦略説明会において、東芝 コーポレートデジタイゼーション CTO 山本 宏が発表した取り組みの進捗(しんちょく)を、本稿では記します。

執筆:東芝 福本 勲

執筆:東芝 福本 勲

東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト
アルファコンパス 代表
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRM、インダストリアルIoTなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』(近代科学社Digital)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。また、企業のデジタル化(DX)の支援/推進を行うコアコンセプト・テクノロジーなどのアドバイザーをつとめている。

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東芝
コーポレートデジタイゼーションCTO
山本 宏氏


東芝IoTリファレンスアーキテクチャーとは何か

 東芝は、幅広い事業領域で培ってきた現実世界での経験や実績に、IoTやAIをベースとしたデジタル技術を組み合わせることで、新たな価値を創出するDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいます。B2B領域での迅速なサービス開発・提供の技術的な土台として2018年に発表した東芝IoTリファレンスアーキテクチャーに基づき、インダストリアルIoT(IIoT)事業の推進を加速しています。

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 東芝IoTリファレンスアーキテクチャーは、東芝の多くの事業領域で実用されている制御技術・IoTソリューションのノウハウや、ものづくり企業として長年にわたり蓄積してきたさまざまなコンポーネント技術を加味して定義されたものです。米国NIST(National Institute of Standards and Technology:アメリカ国立標準技術研究所)のCPSと、米国IIC(インダストリアル・インターネット・コンソーシアム)のリファレンスアーキテクチャーであるIIRA(Industrial Internet Reference Architecture)に準拠しています。

 IIRAと同様に各デバイスやセンサーなどの「Edge層」とエッジから取得したデータを蓄積して分析する「Platform層」、そしてデータを活用して外部にサービスを提供する「Enterprise Service層」の3つの層で構成されています。

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東芝IoTリファレンスアーキテクチャー
(提供:東芝)

東芝IoTリファレンスアーキテクチャーの取り組みの進捗状況

 東芝では現在、「エネルギー」「社会インフラ」「製造」「物流」の4つのインダストリー領域でIIoTサービスの開発を進めており、2019年度中に12のサービスを提供する計画です。

 エネルギー分野では「運転データを用いた故障予兆検知」「最適発電計画サービス」などがあり、社会インフラ分野では「鉄道車両の遠隔監視サービス」「熱源空調遠隔管理・保守サービス」など、製造分野では「製造業向けIoTサービス Meister Cloudシリーズ」「車載制御モデル 分散・連成シミュレーションプラットフォーム」「AI画像検査サービス」、そして物流分野では「物流IoTクラウドサービス」などのリリースを予定しています。

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東芝が今年度提供予定のサービス
(提供:東芝)


 IIoTサービスの設計において重要となる方法論が東芝IoTリファレンスインプリメンテーションとして発表されました。その設計の基本方針は以下の3点です。

  1. (1)「オープンアーキテクチャー」であること
    オープンなIIoT API(Application Programming Interface:ソフトウェアコンポーネントが互いにやり取りするのに使用するインターフェースの仕様)を活用することで、標準的なインターフェースを提供する。

  2. (2)「ポータブルなサービス/モジュール」であること
    ソフトウェアコンポーネントしてのコンテナとは、実行環境をほかのプロセスから隔離しその中でアプリケーションを動作させる技術のことであるが、このコンテナ技術をベースとしたIoT基盤を実現することで、オンプレミスとクラウドでモジュールを分けずに動作可能なサービスを実現する。

  3. (3)「セキュアなサービス」であること
    つながる世界では、どこかにセキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性があると皆が迷惑を被るため、厳しい判断基準が必要となる。これに対応するため、業界標準のセキュリティを採用する。

  4.  (1)と(3)は、東芝IoTリファレンスアーキテクチャー準拠のクライテリア(判断基準)であり、これらによって再利用が可能な形でコンポーネントが構成でき、早く、安く、そして品質の高いサービスが提供できるようになります。

    画像
    設計基本方針
    (提供:東芝)

     2019年度にリリースする12のサービスは、東芝のハードウェアから取得できるデータをベースにしたサービスが中心となりますが、今後は、他社のハードウェアも含めたデータソースを活用できるようにする取り組みや、他社を巻き込んだエコシステムづくりを進めていく予定です。



    オープン&クローズ戦略のためのマネージドサービス

     つながる世界では、クローズにするところとオープンにするところをきちんと分けることが大事です。多くの日本企業は従来、外部仕様も内部仕様もクローズ&クローズでしたが、CPSの実現においては、外部仕様はオープンにして内部仕様はクローズにする、オープン&クローズ戦略が欠かせません。

     東芝IoTリファレンスアーキテクチャーでは、「Edge層」と「Platform層」とをつなぐIoT Bus(モジュール間で相互にデータをやり取りするための通信経路)におけるインターフェースによって、東芝製以外のモノからも情報を収集できるようにし、「Platform層」と「Enterprise Service層」とをつなぐService BusにおいてAPIを活用することで東芝以外のプレーヤーにもサービスが開発できるようになります。

     前述のようなサービスを実現する時につくられた共通コンポーネント群を、クラウド上でWeb APIの形式で提供するマネージドサービス「Habanero」の開発も進めています。Habaneroはリファレンスアーキテクチャーの一実装形態として位置付けられます。2020年4月にサービス提供を開始する予定で、その時点ではData、IoT Bus、Service Busが主な提供範囲となります。

     東芝グループは幅広い事業ドメインを手掛けているため、各事業のCPSに適用できるフレームワークの汎用(はんよう)性をいかに確保するかが課題となっています。事業ごとに個別にサービス開発が進められ、似て非なるサービスが複数開発されるケースもありましたが、今後はおのおのの事業が強い部分に注力し効率よく開発することが可能になります。

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    東芝共通データプラットフォーム
    (提供:東芝)

    【次ページ】独自の開発方法論も策定

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