〈限界費用〉がゼロに近づいていく
インターネットが普及した今、私たちが世界中で連帯して未来を創っていくために追い風となったのが〈限界費用(Marginal Cost、モノやサービスの生産量を1単位増やした時のコストの増加分)〉の減少です。
たとえば今、何かの概念を人にシェアしたいと思った時、その言葉や画像をシェアするのにコストはほぼかかりませんよね。あなたが私にリンクを送ろうとした時、あなたが接続しているインターネット回線と、私が接続しているインターネット回線に負担がかかり、どちらかがオプション費用を支払わなければならないといったこともありません。この状態のことを「〈限界費用〉がゼロである」といいます。1回作ったら、それをどれだけの人にシェアしたとしても、誰も損失しないという状態です。
現代では
さまざまな物事の〈限界費用〉が次第にゼロになりつつあります。インターネットが誕生したばかりの頃は、本当に短いテキストメッセージやメールだけだったのが、現在は画像や動画までもが〈限界費用〉ゼロの状態でシェアし合えるようになりました。お金の心配をしなくてよいということは極端な話、たとえまったくお金を持っていない人であっても、インターネット回線とツールさえあれば、何かを作ることも、社会生活を送ることもできるということです。
けれどまだ別のこと、たとえば私がここにあるオレンジジュースを飲んだら、他の人が飲む分がなくなってしまうということも起こります。オレンジジュースは、1杯作るごとにオレンジの果汁などのコストがかかります。つまり〈限界費用〉が発生しますし、それがインターネットの普及によって次第にゼロに近づいていくことはないですから、飲みたい人はお金を出して買わなければなりません。そうでなければ、〈限界費用〉がゼロの水を飲もうということになります。台湾では至るところに無料で利用できる給水機がありますからね。
つまりは
テクノロジーの発展に伴って社会も発展し、もともとは存在していた〈限界費用〉がゼロに近づいていくということです。そして〈限界費用〉がゼロのものが増えれば増えるほど、私たちはお金の心配をしなくてもよいようになります。
【次ページ】限界費用がゼロなら、ごく自然にシェアし合う