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  • 2022/04/11 掲載

日本で電動キックボードは根付くか? 中国で電動自転車が「3億台」走る理由に見るヒント

新たなモビリティと都市計画の面白い関係

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3月に閣議決定した改正道路交通法により、日本で電動キックボードがほぼ自転車扱いで利用できるようになる。新たな交通インフラとして注目されている一方で、事故や違反が相次ぐなど一部混乱があるのも事実だ。果たして、電動キックボードは日本で定着するのだろうか。その答えをひも解く事例が、実は中国にある。中国では「電動自転車」が広く普及しており、国内の保有台数は3億台を突破している。この電動自転車が普及した背景にあるのが、中国特有の都市計画である。

執筆:ITジャーナリスト 牧野武文

執筆:ITジャーナリスト 牧野武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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中国の海安市を走る電動自転車(2021年1月撮影)。一見するとバイクだが……詳細は以降で説明しよう
(Photo/VCG/Getty Images)


国内の保有台数は3億台突破、中国の「電動自転車」

 中国に仕事や観光で行かれた経験がある方は、街中に不思議な二輪車が走っていることに気がついたかもしれない。見た目は電動スクーターだが、速度は遅い。そして、足元をよく見ると、なぜかペダルがついているが、ペダルをこいでいる人はめったに見かけない。

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中国で人気電動バイク、電動自転車メーカー「新日」(SUNRA)のXC3。電力で自走するが、ペダルをこいで人力で進むこともできる。ファーウェイが独自開発した「ハーモニーOS」を搭載し、スマートフォンの連動を始めとするさまざまなスマート機能が搭載されている
(出典:新日公式サイト)

 これは電動自転車だが、日本でよく見るアシスト式ではなく、電力で自走する。法令で最高時速は25kmに制限されていて、多くの場合、時速15km程度で走行している。あくまでも「自転車」という分類なので、16歳以上であれば免許は不要だ。

 都市によって異なるが、子どもを後ろに乗せる2人乗りも可能なため、買い物や通勤、子どもの送り迎えに使われている。ナンバー取得とヘルメット着用は義務付けられているが、ナンバーの取得申請は販売店が代行してくれるため、自転車並みに手軽な乗り物であることから広く普及している。

 この電動自転車は中国国内での保有台数が3億台を突破している。一方、自家用車の保有台数は2021年末で約2.6億台だ。人力で走る普通の自転車も保有台数が4億台を突破しているが、その多くがシェアリング自転車であることを考えると、中国で消費者が最も保有している移動手段は電動自転車ということになる。


なぜここまで普及したのか? カギは中国特有の都市計画

 電動自転車が普及したきっかけになったのは、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群、サーズ)の感染拡大だった。政府は感染拡大を食い止めるため、公共交通機関の利用を控え、自家用車などでの移動を推奨した。しかし、当時はまだ自動車は簡単に買える乗り物ではなく、自転車に注目が集まり、こがなくてもいい電動自転車がにわかに人気になった。

 法律に規定されない乗り物であり、自転車なのか電動バイクなのか曖昧だった電動自転車は、2004年に道路交通法に自転車の一種と規定され、利用のガイドラインを定められたことから普及がさらに加速した。10年後の2014年には販売数が前年割れを起こし、市場が飽和したかに見えたが、リチウムイオンバッテリー搭載の電動自転車の航続距離が伸びたことにより、再び市場が成長し、現在まで続いている。


 航続距離はバッテリー容量により異なるが、満充電で20kmから40kmが一般的だ。時速15kmが標準速度なので、30分程度の距離を1往復したら充電をするという使い方が基本になる。高級車種では航続距離が100kmを超えるものもあるが、遠くまで行けるというよりも充電回数が少なくなることをアピールしており、10km以内の移動に利用するのが基本となる移動手段だ。

 このような移動手段を東京や大阪という日本の大都市で使った場合(利用することは可能だが原動機付自転車の扱いになる)、非常に使い勝手の悪い中途半端なツールになることが容易に想像できる。近所のスーパーに買い物に行くときは便利かもしれないが、通勤には使えないという人がほとんどではないだろうか。

 電動自転車が中国で普及しているのは、都市計画の考え方が日本とは大きく異なっていることと関係している。

【次ページ】日本と中国でここまで違う、都市圏の通勤事情

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