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  • 2023/03/29 掲載

なぜスタバは世界企業になれたのか? 創業者が譲らない“はずだった”2つのこと

連載:企業立志伝

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今や世界最大のコーヒーチェーンとなったスターバックスは、元々は1971年にシアトルで創業された小さなコーヒー焙煎の会社でした。1982年に同社に入社したハワード・シュルツ氏は、一度は退社したものの、自身が設立したコーヒーショップの成功を経て、1987年にスターバックスの店舗と商標を購入、そこからスターバックスの物語が本格的にスタートします。やがて同社は世界的企業へと成長しますが、その成功を可能にしたのはシュルツ氏の「2つのこだわり」でした。同氏の半生からスターバックスの原点を探ると、現在米国で労働組合との対立が報じられる同社が再び取り戻すべきものが見えてきました。
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スタバが世界一のカフェチェーンになれた理由
(写真:ロイター/アフロ)

のちの経営理念に大きな影響を与えた父親

 シュルツ氏は1953年、ニューヨークのブルックリンで生まれています。

 祖父を早くに亡くした父親は高校に行けず、第二次世界大戦中は陸軍の衛生兵として活動します。その時に黄熱病とマラリアにかかったことで肺が弱く、風邪もひきやすかったといいます。学歴もなく、体も丈夫とは言えない父親はトラックの運転手や職工、タクシーの運転手などの職を転々とします。

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あの企業はなぜ成功したのか? GAFAMや世界中の大企業の創業秘話が詰まった本連載はこちらから
 シュルツ氏はのちに父親について「真面目に働く根っからの正直者」と振り返っていますが、年収が2万ドルを超えたことはなく、一家はブルックリンのカナーシーにあるプロジェクト(国民低所得者共同住宅)で暮らしていました。

 貧しい一家をさらに苦境に陥れたのが父親のけがでした。トラックで布おむつを届け、回収する仕事をしていた際に氷で足を滑らせて骨折します。当時、父親のような労働者には労災保険も健康保険もないばかりか、けがと同時に解雇され、家に帰らされます。父親は何の補償もない中で、ギプスで腰から足首までを固定され、ベッドに横たわっているほかありませんでした。シュルツ氏が7歳の時のことです。

苦難続きだった幼少期、フットボール特待生として大学に

 当時のシュルツ氏は将来、起業しようと考えていたわけではなかったようですが、この時の経験を忘れることはなく、父親が貯金も保険も年金もなく、仕事に意義さえも見いだせなかっただけに、次のように話しています。

「何かできる立場になった時には決して人々を見捨てるようなことはしないと心に誓った」(『スターバックス成功物語』p4)

 貧しさゆえに周囲のさげすみも経験したシュルツ氏は、3人兄弟の長男だったこともあり、12歳の頃から新聞配達を始め、食堂や毛皮工場での肉体労働も経験しています。

 「とにかく両親のような苦しい生活から抜け出さなければならない」(『スターバックス成功物語』p19)と考えていたシュルツ氏には、幸いスポーツの才能がありました。カナーシー高校のフットボールチームでクオーターバックを務めるシュルツ氏の活躍に目を留めたノーザンミシガン大学のフットボール奨学金受給者に選ばれたことで、シュルツ氏は大学へ行くという自分と母親の夢をかなえることができたのです。

 シュルツ氏は残念ながらフットボールでは十分な活躍はできませんでしたが、アルバイトなどで学費や生活費を稼ぎながら無事大学を卒業します。両親にとって卒業証書は「とてつもなく大きな賞」であり、シュルツ氏にとっては「ブルックリンを飛び出して大学卒業資格を得ることによって、夢を見続ける勇気を与えられた」(『スターバックス成功物語』p22)と話しています。 【次ページ】ゼロックス入社、手にした「期待以上」。運命変えたスタバとの出会い

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