- 会員限定
- 2023/04/26 掲載
サプライチェーン激変「8つの最新テック」、アディダスを圧倒できた“ナイキの秘密”
サプライチェーン大混乱、半導体は「納品まで半年間」
現在、企業は半導体を注文し納品を受けるまで、平均で26週間、つまり半年間も待たなければなりません。これより長く待たされる場合もあります。半導体供給不足が発生する前の平均リードタイムが約14週間でしたので、大幅に遅れていることがわかります。それにもかかわらず、世界的なサプライチェーンの混乱は緩和されつつあるとの見方が一般的です。世界のサプライチェーンの混乱度合いを測定する指数「グローバルサプライチェーン圧力指数(GSCPI)」を見ると、2021年12月にピークを付けた後に低下し始めています(図)。
2022年10月には1.0となり、大幅な改善を示していますが、それでも長期平均の0をまだ上回っています。
ナイキ:アディダスに大差を付けた在庫最適化
港湾の混雑や、サプライヤーの生産停止、またはコンテナ不足などサプライチェーンで混乱が起きた場合、企業がサプライチェーン業務を円滑化させるためにできることは限られています。過去2年間の経験から、企業自らが対処可能で、かつ最も効果的な対策の1つは、コネクティッド・デジタルサプライチェーンへの投資であることが示されました。これにより、サプライチェーンの可視性が高められ、計画を立てやすくなり、ビジネス遂行にも寄与します。これらを通じて、顧客が適切な製品を予定どおり、確実に受け取れるようにすることを目指すのです。
では、米国のファッションメーカーで小売業者のナイキの例で考えてみます。同社は、パンデミックによる供給混乱が始まる直前に、最先端のサプライチェーン技術に投資しました。その結果、サプライチェーンのデジタル化が遅れていた一部の競合他社よりも、パンデミックにうまく対処できました。
ナイキが行った投資の1つに、2019年8月、S&OP(Sales & Operations Planning)ソフトウェアベンダーであるCelectを買収したことが挙げられます。ナイキは高度な需要予測と在庫の再配分計画を可能とするCelectのソフトウェアツールを活用することで、2020年のパンデミック期に実店舗の売上減少を予測し、在庫をオンライン店舗専用の倉庫へ再配置・最適化させました。
その結果、ナイキは世界的なパンデミックに起因する消費者行動の変化にサプライチェーンを適応させることができました。
Celectの買収により、十分に信頼に足る需要予測が可能となり、その需要がある場所に在庫を前倒しで投入できるようになりました。その結果、全米の多くの消費者へ商品を届けるのに1~2日で行うことができています。ナイキのデジタルサプライチェーンは、ここ数年間で最大の成功を収めることに貢献しました。2020年と2021年の2年間で、ナイキは最大のライバルであるアディダスに大きな差を付けることができました。売上で見ると、2020年には8%の差、2021年には10%の差をつけています。
ナイキ ジョン・J・ドナホーCEO(2021年第1四半期決算発表)
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR