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  • 2007/02/20

【経営革新1回】ノウハウを企業の第5のリソースとしてマネジメントする方法

ノウハウ・マネジメントによる経営革新 <第1回>

ヒト・カネ・モノ・情報に次ぐ5つ目の経営資源として“ノウハウ”に注目が集まっている。企業が培ってきた無形の知識やノウハウを強みにできれば、模倣困難な競争優位を構築することができる。では、このノウハウをいかにマネジメントしていけばよいか。本連載で、その手法を紹介していく。

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ノウハウは、人・モノ・金・情報に次ぐ
企業の第5のリソースとして
マネジメントすることができる


【経営革新】アクト・コンサルティング 野間彰氏
アクト・コンサルティング
取締役 経営コンサルタント
野間 彰氏
 あるコンサル会社では、秀でた成果を上げる人材育成のために、ノウハウの組織的な共有・拡充が行われている。
 まず入社後の早い段階で、「難題を与え、失敗させた後で、ノウハウを教える」という方法で、社員にノウハウの存在とパワーを認識させる。たとえばコンサル・プロジェクトのマネージャーが、若手コンサルタントに対し、「来週の顧客との会議で、顧客の中期経営目標を決めろ」と指示を出す。コンサルタントは、勇んで準備を行い、会議で顧客の社長に向かって「貴社は今後3年間で20%の利益増大を目指すべきです」と言う。すると社長、「それでは低すぎる」と怒りはじめ、担当役員たちは「20%は不可能だ」と言いはじめる。若手コンサルタントの表情は、みるみるこわばっていく。

 しかしこれは、マネージャーの想定どおりである。マネージャーは「いろいろご意見が出ましたので、 来週まとめましょう」といって会議を終えてしまう。このコンサル会社では、部下に仕事を任せて問題が起きても、自分が解決できる範囲であれば、むしろ積極的に、部下を問題の渦中に入れてしまうことが(顧客満足度を低下させない範囲で)奨励されているのである。

 会議の後でマネージャーは、この若手に対し、箸の上げ下ろしではなく、ノウハウを指導する。「目標決定は意思行為だ」というノウハウを与えるのである。
「中期目標を決めるにあたり、未来は完全に予測することはできない。そこで、経営者にとって、どのような高度な分析の結果であっても、他人が出した数字は参考情報である。経営者は、それらを参考に、最後は『意思』で決める。お前は事前に社長に、どの水準の目標を掲げたいか意思を聞いたのか。その水準は、プロとして見て正しいのか。正しい場合、担当役員はこの目標に対してどのような反応を示すのか。もし消極的な反応の場合、どのようにして彼らを鼓舞するのか。これらを行うのが君の役目だ。君が数字を決めてどうする…」などと指導するのではない。まず一言「目標決定は意思行為だ」と教える。細かい指導はその後である。


短い言葉の威力


 このような指導が続くと、若手コンサルタントは、毎回泣かされた後で指導される「短い言葉」が自分を救ってくれることに気が付きはじめる。そこで、短い言葉を修得する努力を始める。ここでいう短い言葉は、コンサル会社で先輩達が見出したノウハウのこと。このノウハウは、秀でた思考と行動を達成するための「本質的な考え方」と言ってもいいだろう。若手コンサルタントは、このような指導によって、大量のノウハウを修得していくのである。

 コンサル・プロジェクトのマネージャーになると、時間があれば、同格や先輩コンサルタントと、ノウハウを共有・拡充する会議を始めるようになる。会議といっても、ちょっとした立ち話や、食事時の議論が主である。ノウハウ拡充会議の様子をみてみよう。


A:顧客が『若造に何ができる』、『私が一番知っている』といった感覚を持って接してきた場合、このようなモードをどうやって打ち崩している?
B:僕は、まず顧客の実態を聞き、その中で問題と感じるところを、それを示す顕著な事実と共に承り、幾つかの問題が確認できたところで、それらをまとめた構造的な問題を指摘し、その後はステアリングを握るね
C:僕の場合は、…
A:なるほど。では、今後このような方法に、「コミュニケーション・モード・チェンジ」という名前をつけよう。新しい方法が見つかったら、また議論しよう…


 彼らは、ほんの数分の会話で、「コミュニケーション・モード・チェンジ」という新しいノウハウを創造したのである。このような会話は、先輩から受け継いだ伝統として継続されている。また、このようなノウハウの共有・拡充が、自分のコンサルタントとしての能力を高める重要な方法であることを、認識している。コンサル会社の解決する問題は難しく、しかもこれを解決することを、高い単価でコミットしている。ノウハウを徹底的に充実しておかないと、仕事を進めることが出来ない。結果、次から次へと新しいノウハウが生み出されていくのである。

 何人かのコンサルタントを束ねる「パートナー」になると、担当するチームの業績を常に高めなければならない。そこで、先に示した「難題を与え、失敗させた後で、ノウハウを教える」という方法で、徹底的に部下を鍛えるのである。


ノウハウは体系化できる


 一般の企業では、人材育成のために、業務遂行の手順や技術、知識を学ばせることが多い。これらの手 順や技術の中にも、先人が生み出したノウハウは含まれている。しかし、その量は少なく、またノウハウ として整理されていない。もちろん一般企業の中にも、多くのノウハウを持った秀でた人材はいる。しかし彼らは、自分がどのようなノウハウを持っているか、自覚していないことが多い。ましてや部下に、箸の上げ下ろしではなくノウハウを直接指導したり、仲間と日々、ノウハウを共有・拡充することは行っていない。つまり、ノウハウはマネジメントされていないのである。

 ノウハウのマネジメントは、流通業でチェーンオペレーションを行っている業態でも見られる。ある流通業では、社内コンサルタントが、店舗で生み出された、秀でた運営方法の中から、他店に展開できる普遍性のあるノウハウを抽出し、これを実験店舗で実験し、成果が実証されれば、標準化して全店舗に徹底するというサイクルを回している。この企業の社内コンサルタントは、以下に示す、ノウハウ・マネジメントのためのプロフェッショナルスキルを持っている。

(1)事例や有能な店員の実績から、普遍性のあるノウハウを抽出する
(2)ノウハウを、プロセス、必要技術、必要知識、フォーマットなどに展開する
(3)日々の気付きから、新しいノウハウを創造する
(4)仲間同士で、互いの持っているノウハウを共有・拡充する
(5)部下に対し、箸の上げ下ろしではなく、ノウハウを直接指導する

一般企業では、ノウハウはパワーがあるが、抽出・体系化することは難しい。せいぜい組織的に出来る ことは、「ノウフー情報(誰がどのような分野のノウハウを持っているか)」を共有するしかないと考えられている。しかし上記の通り、ノウハウはマネジメントできる。そしてその効果は、大変大きなものである。ノウハウ・マネジメントは、企業に残された、経営革新のニューフロンティアなのである。


<著者プロフィール>
野間彰氏(Noma Akira)
1958 年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、「システム提案で勝つための19のポイント」(翔泳社)、「調達革新」(日刊工業新聞社)、「落とし所に落とすプロの力」(リックテレコム)、「団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ」(日刊工業新聞社)などがある。

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