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- 2024/05/13 掲載
アップル出身者が作った、ウェアラブル端末「Ai Pin」のスゴい機能とは?
連載:デバイス新潮流
MWCでも注目されたウェアラブル端末とは
もともとのイベント名が「Mobile World Congress(モバイル世界会議)」だったので、その名のとおり通信事業社向けのイベントに戻ったとも言える。
2024年は昨年同様、「オープンRAN」(オープン仕様に基づき、複数ベンダーの通信機器やシステムを組み合わせて無線アクセスネットワークを構築すること)が大きなテーマだった。
それに加え、やはり注目は「AI」だった。ネットワーク機器にAIを導入し、自動化や故障の予測に活用しようとする流れがある。また、大規模言語モデルを使って、ネットワーク障害が起こった場合に、作業者が故障箇所や対処方法を素早く確認できるようにするといった技術の展示を行うメーカーもあった。
スマートフォンの新作発表は数が減ったとはいえ、MWCの直前に発表された「Galaxy S24」シリーズをはじめ、最新のハイエンドモデルはAI活用を押し出していた。
ただ、筆者が会場で最も面白いと感じた端末はスマートフォンではなく、米国のスタートアップのヒューメインが開発した「Ai Pin」だった。
Ai Pinは何がどうスゴいのか?
Ai Pinは、胸元に着けて音声やジェスチャーで操作するウェアラブル端末だ。縦横5センチ四方程度で、最も厚みがある部分は15ミリ程度。34.2グラムと軽量で、磁石になっている外付けのバッテリーパックと本体とで衣服をはさんで止めることができる。ディスプレーはなく、タッチパッドを指でタップしたり、声で話しかけたりして操作する。最初は極小の持ち運べるスマートスピーカーのようだと感じた。
また、デモンストレーションで披露していた翻訳機能が秀逸だ。40カ国以上の言語を認識し、相手が話す言葉を通訳する。多数の電波が飛び交っていたMWCの展示会場でも数秒で翻訳され、外国の人とも不自由ない会話ができる。
さらに、面白いと感じたのが、ディスプレーがない代わりに、小さなプロジェクターで手のひらに文字や映像を投影できること。ヒューメインはこれを「Laser Ink」と名付けている。親指と人さし指を付けたり離したりすると画面がスクロールされていくことに驚いた。
このほか、Ai Pinには1300万画素、毎秒30フレームの動画も撮れるカメラを備え、周囲を把握して音声で説明することも可能だという。カメラが起動しているときはライトが光り、周囲の人にそのことを伝える。Ai Pinには携帯電話番号が割り当てられ、音声通話、LTEによるモバイルデータ通信、Wi-Fi、Bluetoothに対応する。
価格は本体が699ドル(約11万円)から。また、月額24ドル(約3,700円)の利用料がかかるが、これには通信料金(米国ではT-Mobileのネットワークを利用)が含まれる。ガジェット好きでもない一般の人が気軽に買えるデバイスとは言えないだろう。
なお、Ai Pinは日本では発売されていないが、ソフトバンクがAi Pinの日本における独占的な通信事業者となることが発表されている。また、ソフトバンクの顧客接点を活用し、Ai Pinを新たな市場に投入する予定。日本ではソフトバンクが扱うことになりそうだ。
米国ではすでに販売されて、レビュー記事の日本語訳がさまざまな媒体で紹介されているが、現時点では厳しい評価が多い。それはなぜか。 【次ページ】レビューの評価はいまひとつのワケ
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